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今の神奈川はベートーヴェンの聖地なのじゃ! [演奏家]

コロナ禍で吹っ飛んでしまったベートーヴェン記念年、周囲の状況はホントに良くなったとはあまり感じられないのだけど、とにもかくにもおそろるおそる再開され始めたコンサート・シーンの中で、着実に250年前にライン川の畔の街で生まれたオッサンの音楽が鳴り始めてはいるよーであーる。

客席を室内楽ホールくらいの規模にして、ホールまで来るのはコワい方は配信でどうぞ、というやり方で始まった六郷川の向こうミューザ川崎の夏フェスも、現時点まで聴衆や演奏家や裏方にクラスターが発生するなどのことも起きず恙なく進行中。結果として、合唱付き大規模作品を除く主要管弦楽作品が網羅されることになってます。

既に交響曲はかの話題のノット御大ヴィデオで指揮の《英雄》に始まり、2、4、5、6、8番が演奏済み。そこに昨日は久石譲指揮NJPがこういうプログラムをやり
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交響曲の7番と、最大の大物たるヴァイオリン協奏曲を演奏。協奏曲は、来年に延期された大阪国際室内楽コンクール出場権を有するチェルカトーレのヴァイオリンさんが登場し三重協奏曲を披露しており、ヒロシマの日にはピアノ協奏曲1、4、5を一回の演奏会でやるという無茶をする。交響曲の最後を締めくくるのはハ長調スケールが駆け上る1番でさりげなく、というのも、このコロナの年らしいなぁ。

何のことはない、要は9番以外の交響曲全部と、主要な協奏曲が聴ける充実した記念年フェスティバルになっている。そこにもってきて、すったもんだで平日昼夜二回開催で敢行、というよりも、強行されるYamatoの諸君のベートーヴェン《ラズモフスキー》以降の弦楽四重奏半チクルスが、場所を紅葉坂に移した県立音楽堂で無事に始まったとのこと。

なんとなんと、神奈川県って、今やヴィーンよりもボンよりも、はたまたしっかりオペラも始まったザルツブルクよりも遙かに充実した「ライヴ」でのベートーヴェンのラインナップを誇る、この惑星で最もしっかりベートーヴェン祭りをやってる場所になっちゃってるじゃないかぁ。いやはや…

そんな隠れ楽聖夏フェスの神奈川、昨日の久石&NJPでは、もうひとつさりげなく隠れフェス的な出し物が披露されました。上の当日プログラム写真をご覧あれ。ヴァイオリン協奏曲のカデンツァに妙なことが書いてある。この作曲者ご本人がカデンツァを書いていない協奏曲、結果として出版未出版含め様々なカデンツァが存在しているわけだが、そこにまた新たな新版が加わったのでありまする。

実際に現場で耳にした瞬間は、「ああ、ピアノ協奏曲編曲版にベートーヴェンが書いたティンパニー付きのカデンツァに、コンマスと首席チェロの掛け合いが突っ込まれたのかぁ」と思ったわけですが、その後にNJPから関係者にはリリースがあったらしく、あたしゃそれは眺めてないけど、どうもやっぱり聴いたとおりのものだったそうな。久石譲のカデンツァ、といっても、ジブリチックなものではなく、この作曲家さんの真の姿とういか、裏の顔というか、ミニマル音楽の作曲家としての側面をまんま出したもので、ぶっちゃけ、アダムス風ですな。《アブソリュート・ジェスト》みたいな、といえばお判りでしょうかね。思えば、今年はこういう「ベートーヴェンにインスパイアーされた短い作品」みたいなものがいっぱい出てきて、本家の演奏会を彩る予定だったんですよねぇ…

演奏会そのものとすれば、久石氏若い頃のピアノ五重奏を弦楽合奏に編曲したミニマル系、長い旋律的なテーマが延々繰り返されるヴァイオリン協奏曲、最後は第1や第4楽章のオスティナートがっつり強調したベト七ですから、もう夏のミニマル祭りでんがな。それはそれで割り切れば、指揮者さんが自分のやりたいことをベートーヴェンさん通してしっかり仰った、極めて説得力のある午後でありました。

てなわけで、神奈川のベートーヴェン祭り、案外と21世紀っぽく、開催されておりまする。お暇な方はオンラインもありますので、是非どうぞ。

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