SSブログ

マネージャーさんって [弦楽四重奏]

夏なのに お仕事してる このあたし それにつけても…

もとい。世間が静かで良いではないか。あと10日と迫った日本列島脱出までの間に、かたづける、もしくはせめてこれくらいまではやってるとアピール出来るだけのことをせねばならぬお仕事が山積みになってしまったぁ。ふううう…

で、本日もニュースひとつ。恐らく、おもしろがって読めるのは日本語文化圏で数人のみの話。

些か旧聞ながら、こんな報告が入ってます。8月3日付けの記事をご覧あれ。
http://keikotokunaga.tumblr.com/
皆々様、とりわけ大阪の室内楽ファンの皆様お馴染みの、アタッカQの第2ヴァイオリンを勤める我等がTOKUNAGAちゃんのブログ記事です。なんと、コロンビア・アーティストとアタッカQが契約したそーな!

おおおお、凄いぞ、これで世界一の有名団体になる道が開けたぁ!…と小躍りすべきなのかもしれん。確かに20世紀末くらいまでだったら、もう小躍りどころか東京中の音楽雑誌編集部に電話かけまくって、今ならまだインタビュー簡単に取れまっせ、あと数ヶ月したらもーしらないよ、なんて脅したり、両K音楽事務所&Jアーツさんなんかに、手を付けるなら今でっせ、早い者勝ちだよほーれほーれ、とおもしろがってみることも出来たでありましょう。

ところがあああああっ、Tokunagaちゃんの喜びに水を差すつもりはまるでないのだけど、21世紀も10年とちょっとを過ぎた今、正直、「へええええ、そーなんだぁ」としか反応できん。ゴメン、残念ながら、それが現実なのじゃ。

日本で最も文才のある音楽評論家のひとりであった(過去形で良いのか、ちょっと不安)Iさんという方がいます。純粋に売文業者としての能力としては、先頃亡くなってもの凄く惜しまれたYさんなんかに比べても圧倒的で、恐らく書けといわれればなんでも書けた人でしょう。実際、作家としても知られていたり、音楽史の常識を偽悪的にひっくり返すような著作をいっぱい遺したり、別のペンネームを使って週刊文春やらにメイジャー系音楽家をぼろくそに貶す記事を書いたりもしていた、なかなか手広い方です。某大物指揮者さんの週刊誌系の悪口の出所の殆どはこの方だった、などというまことしやかな噂もあった。プロデューサーのHさんのお友達で、Hさんはなかなか上手にこの方のキャラを使ってたみたい。
で、その方などが、「小澤とかレヴァインとか、今の若手指揮者や音楽家なんぞは、みんなコロンビア・アーティストが作り上げたパッチもんで真の才能などない」ってな与太話ギリギリの論旨を盛んに展開なさっており、それなりに賛同なさる方もいらっしゃった。この方がどうしてこんな芸風になったのか、いろいろ身につまされる裏話などもあったりして、自分はああいう風にならないようにしなきゃ、と勉強させられたものでもありました。

もとい、懐かしい「2チャンネル」なんかの空気も漂ってきたぞ。いかな「書いてあることはみんな嘘」を標榜する当電子壁新聞としても限界を超えそうなんで、ここまで。んで、そんなこんなで、未だに一部では「コロンビア・アーティスト=ラスボス」って世界観が残ってるわけです。「精神性のないカラヤンVSドイツ精神を伝えるベーム」なんて話で盛り上がっていた頃の昔話ですわ。

コロンビア・アーティストという会社は、メトロポリタン歌劇場などに歌手を供給する歌い手のマネージャーさんから始まった。なんせ歌い手というのは旬が短いので、それなりに独特の売り方がある。実質的には会社というよりも、個々人のマネージャーさんの集まりみたいなとこだった。会社としての性格が今でもそのままなのか、あたしゃ、よーしらん。
なんにせよこの会社、室内楽なんて手間はかかるが商売にならない商品は、殆ど扱ってなかった。カサド・コンクール関連の調査でカサド&チエコ夫妻がマネージメントをして貰っていた頃の生資料を眺めたとき、コロンビア・アーティストのロースターに初期アスペン音楽祭で結成されたシモン・ゴールドベルクも加わったフェスティバル四重奏団などもあって、へえええと思ったことがあったにしても、それらの団体が当時の室内楽界を席巻していたわけではなかった。あくまでも、ソリストに頼まれたんで、って感じ。今のK音楽事務所の室内楽に対するスタンスに似てますね。

弦楽四重奏団としては、かつて一度だけ、コロンビアと契約したところがあります。セント・ローレンスQだよ、というと、ちょっと意外かしらね。ま、事実だから仕方ない。
小生の知る限り、もしかしたら半世紀くらい前にはどこかあったかもしれないが、この四半世紀くらいに限れば、この団体の他にコロンビアが面倒見たクァルテットはないんですは。セント・ローレンスQにしても、この会社としてはちょっと毛色の変わった男が入って、やると言い張ったのでやってみた、って感じでした。

てなわけで、残念ながらクァルテットの世界ではコロンビア・アーティストはスーパーパワーではない、ヨーロッパのジメナウアーおばちゃんみたいなもんではない、ってこと。

メイジャーな弦楽四重奏団がマネージメント会社をどんどん抜けて自分でやるようになってる今日この頃、コロンビアに敢えて弦楽四重奏をやってやろーという奴が出てきたのは興味深いです。誰が担当なのか、何を考えてこの決断をしたのか、どんな勝算があるのか、非常に興味深い。

どういう事情であれ、アタッカQとすれば新たなフェイズに入ったわけで、これを期にますます頑張って欲しいなぁ。なにやらもの凄く良い楽器を借りられたそうだし。当面、極東方面への顔出しは予定されてないらしいのが残念ですけど。

さて、あたしも頑張らねば。以上、殆ど雑談、終わり。なお、当電子壁新聞のモットーは「書いてあることは嘘ばかり、信じるなぁ」です。悪しからず。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

上野のおぢさん

先生毎度です。面白い記事をいつも有難うございます。http://www.iamaworld.com/members のサイトからColumbiaやICA(以前のVan Walsum)のサイトなど見ておりますと、在京オケへの有名外来指揮者の供給先は限られてきますね。(間に梶本とが入ることもあるのでしょうか?私は良くわかりません。お教えください。)

さて、若くして米国で学び、ジュリアード、カーティス、ピーボディ、イェール、ノースウェスタン、はたまたイーストマン、CUNY(アーロン・コープランド・スクール)etc.,などで学び世界で活躍なさろうとしている音楽家にとってCAMに所属することは一つの憧れなのかもしれませんね。こうした大手は、指揮者、歌手、器楽奏者の名手まですべて抱え込んでいますからね。

一見華やかなクラシック業界の裏側のマネジメントはいろいろと大変みたいですし、各社にとってprofit contributorは限られてきますからね。

旬を過ぎて使い捨てにされないように、皆さん頑張ってほしいですね。一世を風靡したあと、日本の音大の先生になれば安泰な生活を送れる人も少なくないでしょうし・・・・

カルテットのコンクールに参加準備をなさっている演奏家が、「弘法は筆を選ぶ!!!」という事実が如実にわかって面白かったです。

またいろいろ教えてください。
by 上野のおぢさん (2012-08-15 08:37) 

Yakupen

上野のおぢさん様

毎度毎度ながら、当電子壁新聞はいろいろデータ調べて書くような時間を費やしてません。極めてデータ的にはいーかげんな「書いてあることはみんな嘘、信じるな」ですので、そのてーどだと思って下さいませ。

マネージメントは正直、冬の時代というよりも、仕事そのものが変化していく新石器時代になっています。広報が別の専門会社が行う別仕事になりつつある今、ブッキングだけでなにが出来るのか、ってこと。なんせ今はメト常連の大物歌手のマネージメントがあのデッカで、レコ芸なんかが批評する類の新譜CDは実質プロモーショングッヅという時代ですから。

by Yakupen (2012-08-15 09:13) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0