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ともかく戻りました [たびの空]

欧州中部が空前の灼熱で、先月来療養中のお嫁ちゃんは以前から決まっていた渡欧で涼しいところで楽になるつもりが、それどころか暑さでヘトヘトになるわ、いけばいったでいろんな人に気を使わねばならぬ出会いはあるわ、ヘンシェル・ファミリーであれ澤先生ご夫妻であれ、過去30年来重ねて来たいろんな人間関係の厚みというか、有り難さというかをあらためて確認する短い旅を終えて、なんだか半端に湿っぽい極東の列島に戻って参りました。

ツアーの後半、あまりの暑さで300ミリレンズが壊れ、iPhoneが熱暴走でネットワーク機能が使用不能になり、当電子壁新聞を含め、諸連絡のチェックも全部放棄してしてしまいましたです。関係者の皆様にはご迷惑をかけているやもしれませぬ。スイマセン。

ま、それはそれとして、今、関空経由でミュンヘンから戻って来た道中は珍しくもルフトハンザ、それも最新機材のa350。遅すぎる転送器たるひこーきとゆー乗り物にも、昨今では貧乏人席にも山のように映画やら音楽やらゲームやらが提供されており、半日くらいなら楽しく過ごせるようになっておる。こういう機内エンタテインメントって、各航空会社でいろいろキャラが出るのだが、流石にルフトハンザさん、ANAさんには歌舞伎が入ってるように、オペラ全曲の映像なんぞもあるし、所謂「クラシック」系にしたところで、古楽から現代音楽までなかなか興味深いラインナップでありました。
以下、やくぺん先生がシベリア路のつれづれで眺めきたもの。なお、エコノミーのタッチパネルで特定の曲にピンポイントでアクセスするのはかなり面倒で、曲でちゃんと検索できなかったりしているのは困りもんなんだが、ま、NMLにしたところで完全な曲の検索システムは確立してない現状、こんなもんかと諦めるべきなんでしょうかねぇ。

ルフトハンザ航空長距離便、7月のエンターテインメントの最大の目玉は、昨年のザルツブルク音楽祭で上演された《魔笛》全曲でありましょう。こちら。まだディスクとしては市場には出ておらず、クラシカジャパンなどでは放映されたばかりのユニテルのヴィデオです。
https://www.kinginternational.co.jp/ganre/74-9708/
これねぇ、演出やら演奏について言い出せば楽しい酒の肴になるくらいネタは満載。演出については、一言で言えば(ネタバレ、とまた怒られそうだが)「3人の男の子がお爺ちゃんに《魔笛》のお話を寝る前に呼んでもらってるうちに…」というもの。ぶっちゃけ、子どもが3人の童子になってしまってシカネーダー&モーツァルトの世界に入り込んでしまい、最後はそれは悪夢だった、という夢オチでんがな。

なんせ夢オチですから、舞台全体は筋が通っているんだかいないんだか、微妙に判らない。放りっぱなしになってる箇所もいっぱいあるし、どうしてそうなのか納得いかすつもりなどない部分も多々。良く言えば、見る人の視点や関心によってどうとでも取れる舞台でありまする。序曲でこのお話全体の枠が語られるのだけど、一度観ただけのライブ聴衆に全て理解出来るかなんとも判らぬ情報量の多さ(ある意味、ヴィデオ向き、ということ)。そこをクリアー出来れば、ザラストロの世界がサーカス団になってる設定を支える細部の演技や舞台技術も、流石に天下のザルツブルク音楽祭の新演出だけあってちゃんとしてますので、まぁこういうもんか、と眺めてしまえる。火と水の試練がタミーノとパミーナの試練ではなく3人の童子の試練だったり、モノスタトスが射殺されたり最後には夜の女王も殺されたようにも見えたり、いろいろ言う人はいるだろうなぁ。ま、機内の時間を過ごすにはもってこいの娯楽でありました。

音楽的には、なによりも通奏低音が妙なことになっていて、チェンバロだけではなく時代ピアノやらオルガンも鳴り、撥弦楽器の新しい声部が加わってるのかぁ、とビックリするような処理に、最初はかなり戸惑います。こういうものは聴いているうちに馴れてくるんだけど、これもいろいろ言いたい方はいらっしゃるだろうなぁ。あ、字幕はドイツ語のみです。これは仕方ないでしょうね。

映像系のもうひとつは、こっちは凄く有名、数年前に出たベルリンフィル定期でのピーター・セラーズ演出の《ヨハネ受難曲》でありまする。
https://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%EF%BC%881685-1750%EF%BC%89_000000000002339/item_%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E5%8F%97%E9%9B%A3%E6%9B%B2-%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%AB%EF%BC%86%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%EF%BC%88%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%A4%EF%BC%8B%EF%BC%A4%EF%BC%B6%EF%BC%A4%EF%BC%89%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E5%AD%97%E5%B9%95%E4%BB%98%EF%BC%89_6035159
この映像に関しては、もう何を言うこともないでありましょう。個人的には、そもそも《受難曲》という代物は話自体は「神様が人間になってこの世にいらしてくださったのに、わしらはそのことの意味がよく判らず神様を殺してしまったのであーる」という極めて判りやすいもんですから、「ああ、ここまでやってあげないといけないのかなぁ」と思ってしまうわけなんだけど…21世紀初頭にはこれくらいが必要なのかしらねぇ。去る土曜日の《光の土曜日》第4場を思い出してしまう…とはいわないけどさ。

映像の大物はこのふたつ。サウンドだけに限れば、なぜかルツェルン音楽祭の歴史的録音がフルトヴェングラーの第九やらハスキルやらごっそり3時間以上あったり、マンハイム歌劇場で昨年に出たビヨーク作品をオペラにした新作の全曲があったり
https://tower.jp/article/feature_item/2019/03/20/1102
ロトのマーラー3番とか、今をときめくクルレンツィス&ムジカエテルナのプロムス・ライヴとか
https://www.bbc.co.uk/programmes/b0bck31y
なかなか趣味が良いもんが収まっておりまする。

お仕事的に最も興味深かったのは、シューマンQがフーガをメインに据えたアルバム
https://tower.jp/item/4906869/%E6%98%8E%E3%81%A8%E6%9A%97---%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E9%9B%86
と、ドラゴンQという中国人男子4名から成る団体のヴァインベルク第5番でありました。
https://www.channelclassics.com/catalogue/40919-String-Quartets-Borodin-Weinberg-Shostakovich/
ヴィオラはバイエルン放送響首席だそうで、どういう活動を出来ているのかよくわ刈らぬが、へえ、こんな団体があるんだなぁ。

なんだい、これじゃ「これからルフトハンザに乗ってどっか遠くに出かける方へのたびの空ご案内」じゃあないかぁ。ま、半日お世話になったんだから、これくらい宣伝して上げましょか。ちなみに、ANAさん長距離便では、何故か藤倉大新作が聴けました。ANAさん、昔はアルミンク&NJPの定期の演奏が聴けたんだけどねぇ。

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