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ライプツィッヒの《ヨハネ受難曲》2020ヴァージョン [演奏家]

案外、カテゴリー分類が難しいなぁ。まさか「現代音楽」じゃないし。

昨晩日本時間の午後10時、現地時間の午後3時から、ライプツィヒの聖トーマス教会からの「無観衆ライヴ」で、バッハの《ヨハネ受難曲》が世界に無料で配信されました。プラットフォームは欧州大陸のオペラやらクラシック映像配信でお馴染みのarteです。まだ3ヶ月は視られます(それまでにこのパンデミック騒動が収まるや…)。こちら。
https://www.arte.tv/de/videos/097176-000-A/johannes-passion-aus-der-leipziger-thomaskirche/

これがどういうものなのか、聖金曜日の昼にバッハがこの作品を作った教会で演奏するのはどういう意味なのか、判ってる人には判ってることでしょうから、当電子壁新聞を立ち読みなさってる皆様にはくだくだしく記しません。いくらでも調べられるでしょうから、ご自由にどうぞ、なんせ非常事態宣言が出てるニッポン国民は、医療やインフラ維持のお仕事をなさってる方を除けば、みんな暇でしょうし。

で、この配信、昨晩、ライヴで見物させていただき、大いに吃驚しました。ひとことで言っちゃえば、「今年はこういう状況で人も教会に集まれないし、音楽家たちのことを考えれば唾液が飛ぶような合唱や管楽器を集めるわけにもいかない。とはいえ聖金曜日に受難曲をやらないわけにもいかない。カントール先生、どうしましょうか」って教会の偉い人が頭抱えてやってきたら、大バッハはガサゴソと前に書いた楽譜引っ張り出してきて、こういうことをやったんじゃないかしら。正にこれこそが、300年昔にバッハがこの教会でやってた本来のお仕事の極めて真っ当なあり方なんだろーなー、って。

なにせ1時間半の全体が、上のURLをペトっと押せばこの瞬間に全部眺められるので、どういうものか、どういうキャストか、説明はしません。本気で関心のある方はご覧になってくだされば判る。後の自分のメモとして最低限の事を思い出すままに列挙しておくと…

※冒頭と最後に、合唱が教会の中で歌う受難のモテットが置かれる。バッハの曲じゃありません。

※基本的に《ヨハネ受難曲》の第1曲から第40曲までを全て演奏する。ヨハネ福音書のパートは全部ちゃんとやります。なお、第7、13、15、20 、24曲はカット(きっちり楽譜眺めながら聴いたんじゃないんで、本気の人はちゃんと調べてね)。え、って曲をカットしてるでしょ。十字架を引っ張り歩くイエスの足取りを描く冒頭、それに被さる大合唱という映画「パッション」まんまの《ヨハネ》を期待していると、頭の大合唱を真ん中のテノールさんが打楽器伴奏でソプラノパートだけ歌ってるので仰天するでしょうが、「ああ、こういうものか」と思えれば、あとは特に問題はありまません。

※演奏者は、教会の真ん中に、エヴァンジェリスト以下全ての登場人物をひとりで担当するテノール、トラヴェルソからガンバから独奏ヴァイオリンから全ての器楽を担当する打楽器奏者、それにチェンバロとオルガンで通奏低音からなにからやる鍵盤奏者さん(この方はタブレットでした)。この三人がメイン。
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教会内の離れたところにヴォーカル四重唱と指揮者さん。それに、教会の表のバッハ像のところにヴァイオリン奏者がひとり。オンラインでテロップにあるトーマス教会の児童合唱以下、世界の複数の合唱&合奏団が参加。
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※裁判の場面でイエスを十字架にかけろと叫ぶ狂ったような民の声の合唱の曲は、テノールのレシタティーヴォというか、呟きというか、無言の演技というか、と打楽器奏者が担当。どんな風になってるか手っ取り早く知りたければ、イエスがピラトの前に引っ張り出されてる40分くらいからをご覧あれ。教会やネットワークの向こうに控えている合唱団は、そういう荒場には参加しない。《ヨハネ》締めくくりの大合唱たる第39曲の処理は、どうやっているか敢えて記しません。もの凄く効果的です。最後のコラールは、なんと打楽器と鍵盤さんも楽器を捨てる三重唱。

※ネットで世界各地から加わる合唱団は、基本はコラール部分。担当が決めてあったようです。
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以上、なんかこんな説明しても、直ぐに映像が見られるんだからアホらしい気もするから、こんなものでお許しを。

思えばこのパンデミック騒動が始まり、226総理要請でニッポン列島からコンサートやオペラの舞台が消え、3月に入るやネットでの生中継が巨大オペラハウスやメイジャーオーケストラから個人まであれやこれや大盛況となり、はたまたZoomという新たなツールが救世主のように出現したかと思ったら危険だから使うなというお達しが出る、ホントに怒濤の数週間。そんないろんな試みがそれなりの形を取り、こういう形で人々があちこちからライプツィヒに集い、弾いたり歌ったり、はたまた画面のこっちで一緒に声を挙げたりと、「アート」をよりしろにした集まりがあり得た。

こんなしょーもないわしらの世界だけど、もしかしたら、まだ諦める必要はないかも。とにもかくにも、Happy Easter!

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