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なくなってしまった演目の原稿メモ [売文稼業]

オーケストラ・アンサンブル金沢の9月の演奏会の曲目解説作文作業をしていて、必要があって公式ホームページを眺めに行ったら、あれ、ちょっと変わってるぞ。

指揮者が変更になっているのは、まあ時節柄というか、現状、これはもうどうしようもない。数週間前から大いにあり得るというか、本来予定していたスダーン御大が来られる状況になるか誰にも判らなかったわけで、仕方がない。

問題は、当初演奏される予定だった演目が変更になっていること。慌てて事務所に連絡し、確認したら、やっぱり「休息無しでの演奏会ということになったので、残念ながら1曲減らすことになりました」とのことです。

てなわけで、外山雄三作曲《能登舟こぎ歌》が演奏されなくなってしまいましたです。この作品、曲目解説を執筆するために、当然、手書きの総譜は見せていただいたばかりか、オリジナルの「能登舟こぎ歌」の採譜された譜面まで探し出していただき、さらには「せっかくだから外山先生にコメント貰いましょうよ」とコロナ対応でお忙しい事務局の方に無茶を言い、先生から短いコメントまでいただけました。

これだけ素材があって、没になってしまうのも残念であります。そこで、全くの独断で、現時点での原稿執筆の為のメモをまるまる当電子壁新聞に公開します。無論、公開したところで演奏はなく、YouTube上に録音が落ちているわけでもなく、楽譜が出版されているわけでもありませんので、なんの役にも立ちません(逆に言えば、外山先生含め、誰の迷惑にもならないでありましょう)。なにしろこの作品に関しては、初演も再演も常にアンコールで、文章として書かれた解説は過去にひとつも存在していないそうな。こういう形ででも残しておけば、少しは後の役に立つかも、ということ。Google検索でも引っかかるでしょうし。

ま、このコロナの時代、こういうこともある。ちなみに作文にするには、さらに数行の追記があって「木管の導入に弦のピチカートが応えると、絽を漕ぐような弦のゆったりした動きをバックに、クラリネットとホルンが朗々と舟歌を歌い始める」などという中身の解説が付いた筈でありまする。なお、事務局の担当者さんに拠れば、「事務局の中でこの舟歌を知っている人はいませんでした」とのこと。郷土民謡って、案外、そういうもんなんですよねぇ。

ちなみに、YouTube上には何故かチェロで弾いているこの民謡の音が落ちています。これが小編成オケで歌われた、というような曲です。参考までに。

なお、あくまでも作業メモですので、以下の部分は外山先生の言葉を含め、引用は不可とさせていただきます。悪しからず。ちなみに外山先生手書きの総譜はOEK事務局にありますので、石川県のアマオケの方などが「どうしても演奏したい」という場合は、そちらに問い合わせてみてください。

※※※※

◆外山雄三:能登舟こぎ唄(1999年OEK委嘱作品)

OEKは、海外公演で演奏するアンコール曲として、外山雄三《管弦楽のためのディヴェルティメント》、《今様》など、日本民謡を題材とした作品を取り上げてきた。石川県の民謡を題材としたアンコール曲を新たに作っていきたいという事務局の意向のもと、1998年度OEK設立10周年を期に「作曲家登竜門コンサート」を実施。石川県民謡を題材とした小品を募集し4作品が入賞、1998年8月26日初演されてる。また、コンポーザー・イン・レジデンスにも委嘱作品と石川県民謡を題材としたアンコール曲の作曲を依頼した。1999年、これまでのコンポーザー・イン・レジデンスであった外山雄三と西村朗に依頼し、1999年10月1日に2作品を初演する。この外山作品は、初演時にもアンコールで演奏され、その後も洋邦ジョイントコンサートの中で演奏されている。以後、コンポーザーが作曲した作品には、間宮芳生のコントレタンツNr.1《白峰かんこ》がある。
「岩城宏之と私は同時にデビューした。1956年のことである。岩城はやがてヨーロッパを中心に活躍するようになり、その仕事の大切な部分を日本の作品の演奏に費やすようになるが、それは彼自身が積極的に作曲者たちに次々と新作を書かせることにもつながった。この小品も石川の民謡を題材として、と依頼されたものである。あれから20年以上の月日が過ぎたのかと改めて思う。あの時の意欲に溢れた岩城が眼に浮かぶ。」(外山雄三 2020年6月記)

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