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ボンクリは電子音の祭りでもある [現代音楽]

春分の日から秋分の日までの半年のコロナ災禍の世界で、所謂「芸術」とか「アート」とか、それそのものが価値である創作物やらを作ったり鑑賞したり、ときには商売にしたりする世界は大打撃を受けているわけでありまするが、そんな中にあって実は最も影響が少ない、ってか、状況は状況としてそんなもんなのかと認めてなんとかする、という開き直れている業界は、「現代音楽」と呼ばれる特殊なジャンルなのではあるまいかと思う気がしなくもないのだが皆様はいかがお考えでしょうかぁ。

だから、なのかは知らないけど、秋の池袋ウェストゲートパーク近辺の現代音楽祭り「ボンクリ」も、規模や出演者の変更はありつつも、昨日、それなりに無事に開催されたようでありました。「このようなものを作らねばならない」という再現芸術系じゃないから、「今はこれしか出来ない」でもなーんにも問題ないもんね。まぁ、巨大なガラス張り空間に鳴ってるのは現代邦楽ばかり、なーんてことになったりするわけだが
IMG_6775.JPG
それはそれでいーじゃん、ってさ。

ことそんな調子で、「ボンクリ」は開催され、藤倉氏のディレクションの下にいろんなもんが鳴ってたわけであります。ぶっちゃけ派手な企画がなくなってしまった今年は、結果としてこの音楽祭のひとつの主役としての顔がはっきり浮かび上がったのが、有楽町線改札口からダラダラ歩いてきてカフェの横曲がって入ってくる地下の空間の左右のスタジオだかを中心に響いてた「電子音楽」でありました。
IMG_6771.JPG
これがずらっと並ぶメインのプログラム
https://www.borncreativefestival.com/electronicsmusic
それに、こういうワークショップもあったり
https://www.borncreativefestival.com/tonmeister

ボンクリのコンサートホールでのいちばんメイジャーな演奏会がチェルカトーレQの演奏会とバッティングしてしまったやくぺん先生ったら、午前中から昼過ぎまでチョロッと会場を眺め、2時間弱ほど電子音の部屋というところに潜っておりました。なんせ、昨年(なんだよなぁ、なんだか遙かな昔に感じられる…)のアムステルダムとパリでのシュトックハウゼン《光》の集中的な上演があった夏が過ぎ、年が明けたらあれよあれよとコロナの世界になってしまい、やっと劇場なんぞが再開して最初の大きな取材が秋吉台の野外電子音楽大会だった。その間に「テレワーク」という名の電子音楽のひとつのプレゼンテーション形態は、コンサートホールが存在しなくなった世界での音楽創作や受容の中心となってしまった。電子音、というべきか、要はスピーカーを通して出てくる再生音がこれほどまでに「クラシック音楽」で重要となった瞬間は、過去の歴史にない。

そういう状況下での「ボンクリ」電子音祭りなわけでありまするから、当然、そういう状況を反映した作品なども発表されたわけで、どんなもんなんやろーなぁ、って野次馬根性丸出し。

んで、あっさり結論から言えば、「電子音楽というジャンルでくくられてるけど、やってることはいろいろ過ぎるなぁ」というアホみたいな感想でありました。

古典としてフィーチャーされたラディーグ作品は、基本的に電子音はドローン、ってか通奏低音みたいなもんで、その上にテープ収録された人声やらがあれこれ乗っかっていく、というもの。時代的にノーノのライヴ声楽と電子音の作品なんかと考え方は近いのかな。新作やそれに準ずるような若い世代の作品は、もっとポップスというか、パンクってか、「クラシック音楽」や「現代音楽」の文脈とは違うサンプリング音楽というか、DJっぽいパーフォーマンスをテープに固定したようなもの、というか。ま、それだって、今回たまたま耳にした作品はそんなだった、というだけのことで、もっといろいろあるのでしょう。

ワークショップの素材がシュトックハウゼンだったりして、いよいよ電子音がそれなりに市民権を得つつあるのか?敢えて言えば、音楽学校で習う演奏技法を前提にピアノやヴァイオリンを用いて演奏される楽曲が「クラシック音楽」と認識される世の流れから言えば、エレクトリシャンがコンソールの前に座り(座ってないことも多々あるけど)繋がったスピーカーから音を出すのが「電子音楽」なら、そりゃいろいろあって当たり前ってことなんでしょう。この定義だと、初音ミクだってしっかり「電子音楽」なんだよなぁ。

果たして「電子音楽」ってのはジャンルとして成り立つのか、とすら思わされるコロナ下ボンクリでありましたとさ。

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