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near Tokyoの春 [たびの空]

NJPの面々を前に小菅優嬢がベートーヴェン第2協奏曲の何とも不思議な自作カデンツァを披露し、真っ白な髪振り乱した棒振りさんがピアニストがカデンツァで弾く形に合わせ冒頭主題提示のフレージングを修正、独奏からオケに渡す入りを何度も繰り返すのを見物し(4日にパルテノン多摩でお聴きになる予定の皆様は乞うご期待)、調布グリーンホールを出たら…

10数年ぶりに春の深大寺の土の香りが嗅ぎたくなって、駅北口から三鷹行きバスにフラフラ乗り込み、神代植物公園前で降りたんだけど、いかんせん冬の戻りの寒い午後、春の臭なんぞありゃしない。

花に狂ったシジュウカラたちがつつぴぃ~と繰り返しながら、桜の枝で追いかけっこするたびに、植物公園に登ってくるバス通りの桜並木にはらりはらりと花弁が舞い、落ちた先はすっかりうす桃色の雪景色。

低い雲の下の高い送電線の足下には、ゴロリゴロリと春キャベツたち。雑草みたいに菜の花がぼつぽつ咲くのこの空き地、深大寺蕎麦復活を目指す地元有志が蕎麦を育てようと意気込んでた場所じゃあなかったか。こんな寒くちゃ、「near Tokyo三鷹の遙か奥なる秘境」深大寺の春の名物、モンシロチョウも舞いやせぬ。

桜の間に突き出す電柱に大書きされた「深大寺山門前元祖嶋田屋」の孫娘は、今はもう40前のオバチャンだろう。児童館の裏のガソリン屋の豚児はちゃんと学校を出られたか。合唱コンクール全国大会を毎年制覇した神中合唱部出身で、なんのかんので藝大に入っちゃったまん丸元気な優等生、どこかの中学で生徒の尻を叩く側にまわってるのかしら。某映画監督のちょっと困ったお嬢様は…心配だ、すごおおく心配だ、神様、悪いことなどしていないと良いのですが…

ま、深大寺近辺に生きるやくぺん先生最初期の弟子たちよ、どこにいようが、他人様に迷惑だけはかけずにいてくれ。あたしゃあ世間に迷惑かけっぱなしなんじゃ、君たちはそうならんでおくんなせぇな。

最初に厄偏庵が結ばれた「トイレ外風呂無し家賃月1万8千円也」の深大寺T荘、外は塗り替えらたものの、存外地形は複雑な武蔵野台地隅っこのくぼみで健在である。20回も前のこんな桜の頃には、2階からは広東語で「北国の春」ががなられてたっけ。アジア・アフリカ語学院留学生諸君、達者な日本語の能力を生かし、故郷に千昌夫も真っ青な豪邸でもぶっ建てたかね。

五叉路の向こう、昭和天皇が墓所へと運ばれた日にはとてつもない警備で囲まれてた中央フリーウェイ辺りで、500戸以上が入居予定の巨大住宅開発が進んでいるという。そう、あの明大野球部グランドの跡地。部員不祥事、初の女性選手誕生か…いろんなことで話題になった曰くつきの場所です。ここもまた「三井不動産の大規模都市開発」だってさ、Oh!Near Tokyo長閑な深大寺、これじゃまるっきりゴオゥッサムシティ・トーキョーじゃないの!

リヤカーで引っ越せる範囲を流転した厄偏庵が、最終的にこの地を離れたのは、農地法改正とやらで庵前のキウイ棚が伐採され、露天駐車場に姿をかえたことが理由だった。「武蔵野のチベット」が半端な郊外なんぞになるなら、やうやうお江戸に帰るべえ。

さて、農協前からバスに乗り、吉祥寺通って湾岸の田舎に戻りましょ。大昔の大家さんにご挨拶したくても、鞄の中にあるのはベートーヴェンとブルックナーのミニチュアスコア、それにアーノルド・スタインハート翁大放談三昧の新著だけ。名物焼き豚どころか、佃煮すらありゃしない。

多摩の春 昔詣でにゃ 寒すぎて


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