祝辞:このうたはきみたちに [音楽業界]
茂木大輔アンサンブルが「恋とはどんなものかしら」を吹き
吉野直子がグランジャニーをはじき
松原勝也&鈴木理恵子がバルトークとピアソラを叩き
藤森亮一&向山佳絵子がバッハ=グノーの「アヴェ・マリア」を歌うとき
君たちが座って聴いていることなんて
この先の人生にもうないだろう
だって君たちは裏方なんだもの
この人たちにとって君たちは空気みたいなものさ
空気がなければ鳥だって飛べないんだけど
そんなこと鳥は考えちゃいない
それはそれでいい
つぎに彼らが君たちのために歌うのは
何十年かのあとのことで
そのときの君は花に飾られた写真の中
どっちかひとりはそんな歌を耳にするだろうけど
たぶん…聴いてなんていられないだろうし
だから今日だけは
下手に据えられた雛壇の上から
鳥たちの歌を聴きたまえ
司会者が「恵理子」と言い間違えようと
鳥たちの歌なんてちっとも特別に思わぬ元ボスたちが酔って嬌声を発していようと
ヴァイオリニストの椅子の位置がばみりからずれていようと
走ってって直してはいけません
澄んで羽を伸ばしやすい空気が都会から減っていくように
きちんとしたマネージャーは絶滅危惧種
鳥たちの飛び方を仕切りたがる輩ばかりになってきて
空はドンドン飛びにくくなってきてる
Maruta&Yukiが
鳥たちに上昇気流をタップリ与え
どこまでも高く飛んでいけて
どこまでも響く歌を心おきなく奏でられるような
あたりまえのちゃんとした大気になれますように
2007年卯月吉日 地上を這いずるPenguin夫妻より