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471号室から [こしのくに音楽祭]

 立山国際ホテル475号室にいます。朝です。昨晩、富山駅からの富山地鉄立山行き終電2両編成を専用お召し列車にして、アルディッティQのセミナーを終え武生から大雨の立山に到着。ばったり倒れ、一夜明けると、本当に何日ぶりの雨のない空。

こんな風景を、シモン・ゴールドベルク翁は眺めていた。

3つ並びの471号室が、最晩年の翁が過ごした終の棲家でした。遙かポーランドはワルシャワから100キロほど西の街を振り出しに、ベルリン、ロンドン、アムステルダム、コモ、ジャワ、シドニー、テルアビブ、ニューヨーク、アスペン、デンハーグ、ニューヘイブン、フィラデルフィア、そして東京から、日本アルプスは立山の麓。80余年の長い旅路の果てに辿り着いたのが、ここ立山国際ホテルの471号室。

1993年の7月、この場所でひとつぶの麦が地に落ちた。12年後の昨年秋、この場所で翁を偲ぶ小さなセミナーが行われた。そして、町内会予算規模の催しがまたひとつの種となり、富山の人々を巻き込み、あれよあれよという間に「メモリアルコンサート&セミナー&地元裏方育成セミナー」という果を結んでしまった。富山の人々が資金を積み、その熱意に亡夫の名前でのイベントを渋っていた未亡人が動かされ、弟子が集められ、国籍のない翁を迎えてくれた「脱走先の天国」首都のスミソニアン博物館に納められていた愛器が眠りを覚まし、男爵の復活の雄叫びに呼応するように若き日の翁によって音楽への愛を目覚めさせられた日本の愛好家が所有していた別の銘器も集合し…

今晩の「前夜祭」を以て、「こしのくに音楽祭」が始まります。

「こしのくに音楽祭」プログラムを裏から捲ると、誰でも知っているひとつの文章が挙げられています。当たり前すぎる言葉だけど、真実なのだから仕方ない。

                  αμην αμην λεγω υμιγ,
        εαν μη ο κοκκοσ του σιτου πεσων εισ την αποθανη,
                   αυτοσ μονοσ μενει.
            εαν δε αποθανη πολυν καρπον φερει.

                    誠にまことに汝らに告ぐ。
            一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん。
                 もし死なば、多くの果を結ぶべし。
                    (ヨハネによる福音書より)

すべては471号室から始まりました。


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