SSブログ

「はーい、皆さん、シンフォニーホールへようこそ…」 [音楽業界]

ミシガン湖の畔、ミシガン通りを挟んでシカゴ美術館に面したシカゴ・シンフォニーホールは、世界でも珍しい「オーケストラが所有するコンサートホール」なのである。ヨーロッパにもアジアにも、自前でホールを持っているオケなんぞない(いわゆるオケがレジデンシィをしているホールも、建物そのものは市が建てた公共施設だったり、民間団体の楽友協会やらプライベートなビル会社が建てたホールと優先的な使用契約を結んでいるだけ)。他にはボストン響とミネソタ管があるくらいだそうな。

数年前にリニューアルされたシンフォニーホールとはいえ、上海バント地区みたいな感じでミシガン湖畔に広がるゴテゴテしいアールデコやら、昨今流行のウルトラ・ポストモダン金属曲面ウネウネ組み合わせビルなんぞの中に置かれると、すっかりオールドファッションドな低層モダンビルになってる。美術館正面大階段を上ったところから眺めると、シンフォニーのとこだけスカイラインがポコンと凹んでる感じがするもんね。ほれ。真ん中の煉瓦色の建物がそれ。

さても、アムトラックの到着時間が信用できないのでチケットは敢えて買ってなかった昨晩のシカゴ響、宿に荷物投げ込んで一息入れて、チョコチョコ歩いてミシガン通りを下ってシンフォニーまで到り、ボックスオフィスのオジサンに「今日の切符ありますか、一番安いの」って尋ねたら、あるぞ、という。でも、舞台が見えない席じゃないのぉ。いんや、全部見えるよ。ただ、すごくちっちゃいけどね。じゃ、それでいいや、ちょうだいな、と45ドル也。なんかいつもよりやたらと高いなぁ(自慢じゃないが、あたしゃシカゴのホールは、あの転げ落ちそうな天井桟敷以外に座ったことがありませんっ!)。

ま、高いのもしょうがないでしょ。というのも、昨日は定期じゃなくて特別演奏会。向かいに広がるミレニアム公園の北側に数年前に新設された劇場をホームベースに、もう30年もシカゴベースで活動しているハッバード・ストリート・ダンスというモダンダンス・カンパニーがシカゴ響とコラボレートする、という1公演限りのショーなんであーる。やくぺん先生んちがモダンダンスを見物するなんて、もう四半世紀もの昔に国立劇場にシュトゥットガルト・バレエが来て「ピエロ」だとかやったとき以来じゃないかしら。
そんな奴らがのこのこ見物に行った理由は、このシカゴのモダンダンスを代表するカンパニーで、我らがボロメーオQの第2ヴァイオリン奏者クリストファー・モデル体型・タン君の妹が踊ってるからです。昨晩も、42人編成のシカゴ響室内管(我らが小倉ちゃんはヴィオラのトップ隣りに座って、バッハでは短いながら独奏もありました)を前に、クルクル跳んだり跳ねたり、転がったり引きずられたり止まったり、しっかり訓練された動きを披露しておりましたとさ。ハイティンク定期なんぞとはまるで空気が違う、貧乏な若者だらけの天井桟敷から、ぶらぼおおお~おぉ!

ところでこのシンフォニーホールのシカゴ響主催公演、毎回、ひとつお楽しみがあります。

今世紀に入ってから、どこのホールでも聴衆の携帯電話とペイジャーのピープー音やら呼び出し音に対して、様々な警告を発してますね。やり方は様々で、いろんな意味でホールが聴衆にどんな風に付き合うか、どんな風に接するかが見えてとても面白い。どの国はどうで、って言えない、ホール及び主催者の考え次第。

ここミシガン湖畔のシンフォニーホールでは、一昨年のシーズンくらいから興味深い方法を採っています(以下の内容、正確にいつからかご存知の方、ご教授下さいな)。オケがステージに登場し、指揮者が出てくるのを待っている間に、アナウンスが入る。ま、内容はどことも同じ、携帯の電源切ってくれ、録音や写真撮影やるなよぉ、ってもの。それだけなら別になんてことない。
さても、昨晩もアナウンスが流れ出しました。
「やあ皆さん、ランランです。シンフォニーホールへようこそ。さて、携帯の電源を切ってくれましたか…」
そー、なんとなんと、アナウンスをしてるのがかのランラン君なんですわ。小生の記憶する限り、昨年のマルサリス作曲「みんな総立ち」のときはマルサリス御本人。自主制作CDになって日本でも話題になったハイティンク指揮ブルックナー第7番の定期のときは、豪華にもヨー・ヨー・マでした(この頃、向かいの美術館とシンフォニーの共催でシルクロード・プロジェクトをやってたからでしょ)。今回はランランだったのは、北京オリンピックの年だからかな。

みんなが知ってる大スターが「はーい、ヨーヨーマです」なんて名乗ってくれると、客席は一瞬「おおおおお」って感じになって、みんなの耳がアナウンスに集中する。で、あっちこっちでゴソゴソと携帯取り出したりしてる。案外と効果はあるみたいなんですね。

いかがでしょうか、日本のホールの支配人さん。新国立劇場に行くと「皆さん、良くいらっしゃいました。音楽監督若杉弘です…」、大阪シンフォニーホールに座れば「皆様、大阪フィルにようこそ、大植英次でーす…」なんて調子でアナウンスがあったら、ちょっと嬉しくないかしら。少なくとも「騒いだりヘンなことしたら逮捕するぞ」とSプロデューサーが出てきて恫喝してるみたいな重苦しい雰囲気のNBS主催オペラ開演前のアナウンスとは、よっぽど印象が違うと思うんですけどね。

いかがですか、堤さん、サントリーホールで影アナやってみちゃいかがでしょ。結構真面目に提案してますよ。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

すみこ

どんなプロだったんだろう。。。と思って今ハッバードのサイトを見てみたら、現在の監督はオランダのデンハーグのキリアンの元で踊ってた人で、ハッバードってもっとのりのりアメリカン!なのかなと思ってたらとてもヨーロピアンなレパートリー。ちょっとびっくりしました。バレエダンサーでチャイコフスキーバレエ程クラシックなのはやりたくないけど、みたいな人に勧められる感じです。ダンサーのレベルはどうなのかなー?アメリカ人が多いんでしょうね。
by すみこ (2008-01-13 02:06) 

Yakupen

今、日曜日の朝6時半前。シカゴはオヘア空港のラウンジです。これから乗り継ぎ乗り継ぎで米大陸の半分と、太平洋を越えます。ハッバード・ダンスのメンバーは、意外にもアフリカン・アメリカンは殆どおりませんでした。アジア系が3名ほど、あとはそれ以外、という感じ。アメリカ人かどうかは外観では全然判らない。なんせ、「アメリカ人」という人種はいませんからねぇ。
ちなみに、ルーズベルト大学でピアノの先生をしているマンチェ・リューによりますと、今回のシカゴ響とダンスの共演実現はなかなか苦難の道だったそうです。詳しくは話してる暇がありませんでしたけど。

というわけで、月末にはよろしくお願いします。
by Yakupen (2008-01-13 21:25) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0