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ラファエル・ヒリアー翁没 [演奏家]

ある方からご連絡いただきました。全然知らなかった。面目ない。ま、ボストン・グローブに記事が出たのが6日だったみたいだし、先月まで教えてたというのだから、敢えて「突然」と記しても間違いないでしょう。

ラファエル・ヒリアー氏が先月27日にお亡くなりになりました。96歳とのことです。
http://www.thestrad.com/Article.asp?ArticleID=1770
http://www.boston.com/bostonglobe/obituaries/articles/2011/01/06/raphael_hillyer_96_helped_launch_juilliard_quartet/

当電子壁新聞で、特に「弦楽四重奏」カテゴリーをご覧の方には、いまさら説明の必要もない方。「ストラッド」の見出しにも「東京Qの師匠」とある。これでもう充分かも。

へっぽこ三文売文業者のやくぺん先生としても、ヒリアー翁は「師匠」でありました。ノーバート・ブレイニンやシモン・ゴールドベルクとはまた違った意味で、ホントに売文業者としての「師」。

ぶっちゃけた話、小生がクァルテット・エクセルシオのことをいろいろ眺め、関わって来ているのは、ヒリアー翁の御命令が理由なのです。

ヘンシェルQが優勝し、エクが2位となった第2回大阪国際室内楽コンクールの結果発表直後、なぜか審査員だったヒリアー翁に呼び止められました。で、「あのKOICHIROの弟子連中は、日本にいてクァルテットを続けられるのかね。なんとかボストンに来させられないか、来れば面倒を見るから、お前、奴らのケツを叩け」と言われた。

鳩が豆鉄砲喰らったような気分でありましたね。ま、直前にインタビューをさせていただき、翁の手近にいる日本在住の業界関係者が小生くらいしかいかなったからなんでしょう。

それから今に至るまで、小生の目の前には他にもいくらでも若い優秀なクァルテットが通り過ぎている。エクよりももっと素直に言うことを聞く若い奴らはいくらでもいるし、絡めばこっちも業界内で偉くなれそうな奴らはいくらでもいた。でも、ヒリアーさんからそんな風に託されちゃった奴らとなれば、いくらなんでも知らんぷりをするわけにもいかん。他の奴らは他の奴が担当する巡り合わせなんだろう。それはそれでしょーがあるまい。

最後にヒリアー翁をお見かけしたのは、2008年感謝祭頃のボストン。ボストン響の楽屋入り口だった。この記事にそのときの後ろ姿の写真がアップしてあります。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2008-11-29
最後にお話をさせていただいたのは、その前か後か記憶が定かでないのだけど、ともかくニューイングランド音楽院でボロメオQの演奏会があった後の楽屋でのことでした。
とっても寒い晩で、ヒリアー翁はコロコロに着込んでいらしたっけ。その際に、「先生が解散させないように、と仰った大阪で2等賞だったクァルテット・エクセルシオは、最近NPO化して頑張ってます」と立ち話した。そしたら、「どの団体だったかなぁ、なにしろ私は余りにも沢山の若いクァルテットをみてきてるからねぇ…」と苦笑なさってました。ま、翁とすれば、そういうことなんでしょうねぇ。

小生のような芸術を対象とする商売の人間にとって、「自分の趣味」とか「好き嫌い」とかいうものに頼って周囲を見るのは、極めて危険なのです。好き嫌い、良い悪い、とは違うモーティヴェーションが必要になる。だって、好き嫌いなんてコロコロ変わりますから。小生ら「ジャーナリスト」がある演奏家や演奏団体を長期的に眺め続ける理由は、その芸術家の芸への好き嫌いとはまるで関係ありません(そこがファンの皆様とは決定的に違うところです)。恐らく「評論家」さんは好き嫌いでものを見るべきなんでしょうが。

だから、ヒリアー翁のような神様みたいな方が、「こいつらのことを見てろ」と有無を言わせぬ命令をしてくださるのは、とても有り難い。そうか、俺の仕事はそれなんだな、って。どう考えても自分なんぞよりもスゴイ大先生に、そう言われたわけだもん。

そんなことを言われて「なるほど」と従える人に出会うのは、案外、難しい。これホント。相手もあることだし、自分の方のタイミングもある。例えば、今、小生がピヒラー翁とかクロッパー御大から「こいつらのことを見ててやってくれ」って言われても、「ああ、そりゃもう俺の仕事じゃないわなぁ」と思っちゃうでしょうね。

だから、やくぺん先生とすれば、ヒリアー翁には心から感謝せざるを得ないのであります。ヒリアーさん、ありがとうございました。まだもうちょっとは、御命令に従わせていただきますよ。

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