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これぞマスタークラス [演奏家]

マスタークラスとは、巨匠と呼ばれる音楽家からその人でなければ不可能なコメントをいただく特別レッスンである。音程が悪いとか、そこのテンポがどうだとか、そんなクラスのレッスンでいつもの先生が指摘するようなことを喋られても、なんの意味もない。

なーんて堂々たる正論を言い立てちゃうと、殆どの「マスタークラス」が「別の先生の特別レッスン」になっちゃうわけで、ま、ある程度それは仕方ないとは思っているとはいえ、やっぱりたまにはちゃんとしたマスタークラスにお目にかかりたいわなぁ。

さても、昨日のCMAコンファランスのプレイベントとしてマンハッタン某所で行われたリチャード・ストルツマン氏のマスタークラスは、希に見るホントのマスタークラスでありました。
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一応、一般にオープンだったものなので、内容を記しても構わないでありましょう。ほぼ速記なんてやれるわけなく、テープを回すのも不可能なので、記憶から印象的な断片をちょっとご披露し、こんな感じ、って思って頂くだけ。正確な記述ではないので、お願いだからストルツマンがこんなことを言っていた、なんて引用はしないでね。

★モーツァルト作曲クラリネット五重奏曲第1楽章展開部
「ピーター・ゼルキンが、どうしてもマルセル・モイーズにこの曲を聴いて貰いたいと思い、聴いて貰ったことがあるんです。ファーストがアイダ・カヴァフィアンで、私がクラリネット。モイーズって知ってますね、そう、クラリネット奏者じゃありません。で、モイーズがこの部分について言うには、ここは弦はどんどん音階を下降していくだけで、クラリネットはその反対。どんどん風船が膨らんでくみたいなイメージで、みんなが上に上がってくように、って。…」

★モーツァルト作曲クラリネット五重奏曲第2楽章冒頭
「皆さん、なんでこの部分がこんなに美しいかお判りですか?…単純な音楽だからです。単純な美しさ、深さ。…マールボロで、カザルスが「自分の葬式にはこの曲を弾いてくれ」と私たちに言いました。私はこの曲に対する考えが、そこで変わりました。チェロのパートだけ、弾いてご覧なさい。…それから、残りの弦楽器。そう…」

★メシアン作曲「世の終わりのための四重奏曲」冒頭
「この曲は、ピアノと他の楽器のチューニングが微妙に違うんですよ。そう、あなたがやったのは間違ってない。…」

★メシアン作曲「世の終わりのための四重奏曲」クラリネット独奏楽章
「fffはホルンみたいに。もっと…もっともっと。音が割れちゃうのは気にしないように。私たちがメシアンに弾いたとき、メシアンはもっともっと、と求めたものでした。…」

そんなこんな、楽譜を前にした雄弁術のあり方と、作曲家との直接の対話で得た情報がてんこ盛り。冷静に考えると、こんなホントのマスタークラスがやれる人って、今の世の中にどのくらいいるのかしら。

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