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真っ当なものを真っ当に [葛飾慕情]

溜池やら晴海で開催中のTOKIO室内楽音楽祭に関しては、ま、いずれそのうち。なんせ去る金曜日から日曜日まで、余りにも多くの情報量に晒されて、頭が割れそうです。今日くらいそっち関係は何も考えたくないぞ。

てなわけで、祭りの切れ間に雑務をこなしに葛飾厄偏庵にやってきた。過去30年の間、泊まった記憶があるのは…そうそう、葛飾シンフォニーヒールズでヘンシェルQが演奏会をやって、翌朝成田発で帰国するため、都心に戻るのも無駄だからシンフォニーヒルズ近くの唯一のビジネスホテルに泊まったは良いが、日本ツアーが終わってさあああおわったおわったあ、なんか食いに行こうぜ、のマティアスなんぞを連れて行くような所もない新開地、じゃあしょーがなないなぁ、と酒だけはいくらでもある実家に連れて行き、まだ元気だった親父をビックリさせた晩に泊まったっけなぁ。親父はあれ以降、「あのスゴイ美人のドイツ人がいる楽団」ってことある事に言ってたっけ。ヘンシェルがローマ法王の前で弾いた、なんて教えたら、我が事のように喜んでたっけなぁ。

そんな新開地、わずか数日足を運ばなかっただけで随分戻ってないような気がするようになったのは、別に懐かしいからとかじゃないよ。あくまでも、今やってる仕事の資料をゴッソリ持ち込んでるからです。誤解なきよう。

さても、「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」をモットーに掲げた当電子壁新聞、所謂情報系ブログなんぞがやるようなことはする気はない。で、情報系の定番たる「こんな美味しいお店があった」みたいな記事は、多分、一切挙げたことがないんじゃないかしら。マンハッタン厄偏庵の横の世界一のスーパーマーケットなんかは記したことがあったけどさ。

本日、そんな前例を打ち破り、お店の紹介をいたしましょうぞ。

そもそも水戸街道(今の自動車道の水戸街道で、松尾芭蕉が楚良と歩いた旧道ではありません)沿いの亀有辺りは、小生の30年数年来未改訂の脳内地図では団地と葱畑、さもなきゃ低湿地帯らしい田圃があるばかり。子供は夏になると日本脳炎の蚊が沸いてきて刺されるううぅと恐怖するしょーもない場所。最近は、こんなもんも見えたりしてさ。
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そんななんてことない新開地街道からちょっと入ったところにS高校という、高校野球なんかではちょっとは知られた学校があり、その裏辺りには住宅地や町工場の中にちょこちょこっと食い物屋らしきものもあったりする。

で、F乃屋さんという蕎麦屋さんもあります。こういうのって、実名を出さないと宣伝にならないのかもしれんが、どうなんでしょうかね。裏にFの湯という風呂屋があるS高校の西側、ってくらいは書いときましょ。東京天樹の6倍くらいの高さの高名な休火山が屋号です。

そのF乃屋さん、別になんてことない、普通の蕎麦屋さんです。熟年ご夫妻がやってて、近くに住んでる娘さん(亭主も子供もいる方です)が昼時なんかは手伝ってる。日本全国津々浦々どこにでもあるよーなお店。入口には、いつ書いて貰ったんだか、ご当地漫画に登場したときの記念色紙(ってのかしらね)もあったりして。
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座敷席の隅には少年ジャンプやらスポーツ新聞やらが積み上がり、テレビでは遙か新宿から天樹経由で飛んでくる電波を拾った「いいとも」なんてやってる、そんなお店。

さても、ところがどっこい、この店、ただものではないのじゃよ。

ええ、ある事情で小生は数年前からこのお店の厨房事情を詳細に知るに至ったわけであります。で、葛飾厄偏庵に通うようになって以来、一度は喰らいに行かねばなぁ、と思っていた。

というのも、単なる蕎麦屋の親父さんにしか見えないし、誠にもってその通りのオーナーシェフが、(全然どこにもそんな宣伝していないんだけど)猛烈に研究熱心な方なのであります。S高校の野球部生徒が喰らいに来ても十分なくらいの盛り蕎麦は当然ながら、なんと、饂飩が旨いのじゃよ。蕎麦屋の饂飩の常識を越えた、きしめんタイプのつるつる麺、長年の研究の成果だそうな。

グルメブログならここで写真が登場なんだろーけど、近くの工務店のにーちゃんや裏の事務所のオッサンが漫画雑誌めくりながら蕎麦啜ってるよーな店でカメラ引っ張り出す勇気は、あたしにゃありません。で、写真はなし。ともかく、水戸街道を亀有辺りまで下った方は、お暇ならどうぞ。木曜日定休です。

なんでご紹介したかといえば…ま、いいや。話が長くなるし、したところでどーだ、って話ですから。ただ、こういうもの凄く水準の高い真っ当なものを真っ当に出す真っ当な店が普通にあるのだから、こりゃ葛飾、なかなか捨てたもんじゃないわい。

凄く水準の高い真っ当な音楽を真っ当に聴けるシリーズが、我が町TOKYOにはあるか?正直、お祭りはもう充分です。おしゃれな銀座や溜池に、とは敢えて言いません。でも、銀座東京駅から最も近い田舎町たる佃嶋界隈に、F乃屋さんみたいな主催者がなぜ存在出来ないのか。

最高の素材を用い最高の腕のシェフが懲りに凝ったソースをぶちまけた高級料理など、あたしゃもう、とりたてて食いたくなんかない。裏の蕎麦屋で普通の饂飩を食うような、普通のベートーヴェンが聴きたい。どんな素晴らしいフェスティバルがあろうが、それが普通に出来ない街って、どっかおかしいんじゃないかい。

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コメント 3

上野のおぢさん

先生、いいお写真を有難うございます。
訳あって、私の両親は水戸街道の青戸7丁目の交差点付近に1994年から2000年にかけて住んでいました。その時分から亀有がとても綺麗になってヨーカドーにヴィトンのトートバッグが陳列されるようになりました。当時は今ほど景気が落ち込んでいませんでしたし・・・

懐かしくなる写真をどうも。
by 上野のおぢさん (2012-06-12 07:49) 

Yakupen

おおお、では、F乃屋さんも御用達だったかも。
by Yakupen (2012-06-12 09:55) 

Yakupen

蕎麦屋さんの関係者の方と本日、ちょっと話をしたのですが、実名を出してくれても結構だ、とのことでした。F乃屋さんというのは、「富士乃屋」さんです。ま、あとはこっちのグルメブログなんかをご覧になってちょうだいな。
http://r.tabelog.com/tokyo/A1324/A132403/13037026/dtlrvwlst/197650/
なお、今は揚げ物類はもうやっておりません。また、表の色紙は「こち亀」という漫画の単行本で1巻から10巻までくらいの初期に登場したときに、漫画家さんからいただいたものだそうです。漫画家さんが直ぐ近くに住んでいて、その頃に食べに来ていたそうな。でも、全然そういうことを宣伝にする気もないらしい。

by Yakupen (2012-06-12 21:43) 

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