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「神奈川」は地域なのか [音楽業界]

神奈川フィルが目標としていた寄付金1億円突破を達成したそうであります。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1304160002/

これでこの団体が選んだマッチングファンドによる資金調達のひとつの条件がクリアーされた、ということでんな。

あたくしめも、10ドルちょい(当時のレート)くらいだかは募金箱に放り投げたわけで、一応は「良かったねぇ」と言える立場にはあるわけではありますので、まずは「良かったねぇ」と言いましょうかね。

とはいえ、正直、個人的にはこの神奈川フィルの経営陣(なんだと思うんだけど、神奈川フィルって、演奏者=経営者、の自主運営団体ではないんですよねぇ)が選択したマッチングファンドというやり方そのものには、どうにも違和感を感じ得ないのであります。正直言えば、そりゃ嫁さんが横浜生まれで、大学まではずっと横浜、それも今の「なんでここが横浜なんじゃい」というような内陸じゃなくて、伊勢佐木町まで路面電車が走る大岡川の谷筋で育ったわけで、お宅のお嬢さんを嫁に下さい、百年早いわいとっとと帰れ、などとお義父さんに追い出され夜を明かしたりもした懐かしの場所、ってくらいの関わりしかない。無論、死んだお袋が爺さんの関係で横須賀生まれ、育ったのも横須賀だし、戦後は大陸でスパイをやってた伯父さんが逗子で私塾を経営していて、團伊玖磨の息子なんぞも来てたりして、夏はそこにやっかいになってたなんてこともあるわけで、まあガキの頃の夏のいくつかを神奈川で過ごしている。そう、太田投手が甲子園で投げきって、その裏番組でソ連軍のチェコ侵攻をやってたときも、逗子にいた。ICBMが年がら年中、横田、立川、府中、六本木、座間、横須賀、厚木を狙っていた、バリバリ冷戦時代のことでありまする。

北朝鮮の当たりゃせんミサイルなんぞに恐れおののく若い人たちよ、なんぼのもんじゃい、明日にも頭の上にソ連の核弾道ミサイルがきっちり狙い通りに何十発も振ってきて、一瞬にして日本どころか人類社会が終わりになるのが日常化してる状況で、あたしらオッサンは暮らしてきたんだよ。50代以上のオッサンやじーさんだって、あの頃のことを忘れちゃったわけじゃないでしょ。今の生活があっというまに、自分では何も知らない間に、なにも出来ないうちに、全部終わってしまう可能性が常にある。そんな感覚の上に、私たちは生きていた。へーきで生きていて、なんとも感じなくなっていた。中国がゴビ砂漠で核実験やれば、ガキ共は「この雨に当たると禿げになる」と下敷きで頭隠しながら慌てて家まで走っていた。全ての世界が次の瞬間に終わるのは、生きていく前提だった。「セカイ系」の妄想じゃあなかった。

もとい、そんなことはどーでもよくて、神奈川、です。

少なくとも小生には、横浜の嫁さんの実家があった辺りと、横須賀と、逗子とが、ひとつのコミュニティには感じられないんですわ。「神奈川」ってローカル・アイデンティティ、あるんでしょうか?

つまり、もっとはっきり言えば、「神奈川フィル」って言われて、「俺たちのオーケストラ」って感じられるものなんでしょうかね?

例えば「横浜フィル」とか「相模原交響楽団」とか、はたまた「横須賀シンフォニック・ブラス・アンサンブル」なんてのならば、そこの自治体なりもすごおおおく簡単に支援したくなるし、そこに住んでる人も「オケがなくなるらしい」と言われて焦ったり、ヘタクソのくせに税金泥棒なんだからあんなもの潰れてしまえと悪意バリバリで呪ったり、それなりにできるだろー。

でも、「神奈川」って、そういう反応があり得るのかしら。

実は似たような話は東京にもある。「都響」です。結果として今、放送新聞などのメディアをはっきりとバックアップとして名告っている団体を除く在京団体の中で、いちばん根拠地が分からない団体になってしまっている。杉並の日フィル、墨田の新日、江東のシティフィル、川崎の東響(うううん…)、オペラシティの東フィル(オペラオケ、ってイメージがあるし、事務所もそうだしね)、ってイメージがなんとなく出来ている。でも、まあ確かに「上野の都響」の筈なんだけど、どうもそうとも言い切れない感じがある。あたしゃ、「上野の都響」であって欲しいんだけど、どうも「東京都」である以上、小笠原から奥多摩のさらに奥までお世話せにゃなりません、って感じがある。

ああ、都響さん、大変だなぁ、って思っちゃうわけですよ。

そういう意味で、神奈川ってのは、どうも「俺が帰属するローカルな場所」という感じになれるのか、心配になるわけですね。

ま、どーでも良い雑談で、神奈川フィルの経営の皆さんはいろんなお考えがあって、そんなことを百も承知でこういうやり方をしたんでしょう。経営危機と言いながら若くて弾ける連中をドンドン新しい団員にしてるわけだし、正直、K君、ちゃんとこのオケの経営状態が判って就職したんかい、って訊ねたくなるくらいであります。なんか、そのあたりもよーわからんなぁと思いつつ、頑張って下さいと呟く、ウラウラ目出度い春の日でありましたとさ。

それにしても、川崎市民の皆さんは、どういう風に感じてらっしゃるのでしょうかね。俺が1万円札を放り投げるべきは、東響なのか、はたまた神奈川フィルなのか?

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sato

素人が立て続けにすみませんが、思ったことを少し書きます。
育ちはずっと23区なもので、神奈川がどういったところか良くは分かっていません。
もし、おっしゃるように、いくつかのコミュニティの集合体でしかないのならば、「俺たちの」といった感は持ちにくいのでしょうね。
想像でしかありませんが、沖縄の方にとって、「(日本)国立競技場」といわれても、 (こちらの場合は距離があるのでまた違う話かもしれませんが)スポーツに関係がある方以外では、バカにされたりなくなりそうになったりしても、どうでもいいことなのかもしれないな、などと思うのですが、そういった感覚に近いもの程度なのではないでしょうか?

by sato (2013-04-16 17:17) 

Yakupen

sato様

コメント、ありがとう御座います。コミュニティの大きさ、というか、どこまでが「俺の地元」って感じるのかは、個々人によってどれくらい差があるのか、正直、全然わかりませんよねぇ。

ただ、東京で考える限り、やっぱりホントに自分のところと感じるのは、区や市が限界で、それより大きくなると「お役所の決めたこと」って感じなんじゃないかなぁ、と思うです。

だから、オーケストラが区や市の公立ホールにフランチャイズに行ったのは、生活感としては上手い具合にいったんじゃないかなぁ、と思うです。ただ、実はすみだトリフォニーとティアラ江東は滅茶苦茶近いんですけどねぇ。

スイマセン、無駄話でした。
by Yakupen (2013-04-16 19:08) 

sato

あの辺りは、トリフォニーに随分前に高関さんと群響のマーラーの第7番を聴きにいったきりなので詳しくないのですが、ティアラ江東を地図で調べたら、すぐ近くに錦糸町が出てきて、ちょっとびっくりしました。
あそこまで近ければ、他区でも親近感も涌くのでしょうか?
(ちなみに、僕は北区民ですが、すぐ隣が豊島なので、その辺りには確かに多少の親近感があります)

僕は音楽をそれなりに好いているほうと自分では思っているので、正直、逆に、そうでない方の気持ちが分からないのですが、僕は、詳しくないなりにも、「何処のオケだから」「地元だから」というよりは、「この作曲家が好き」とか、「この団体は何か面白そうだ」というところで、聴きにいくか否か・応援したいと思うか否かが決まってしまっている (と自分では思っています)のでちょっと分からないのですが、クラシックを好いている方の割合がそこまで高いとは思えないこの国では、だからこそ、「地元感」というものは、大事なのでしょうかね?

文化圏が多少違っても、例外はもちろん沢山あるでしょうが、九州の方には九州の人間としてのアイデンティティのようなものがある気もしますし (「九州男児」といったりしますし)、東京はあまりないように僕は思うのですが、もしかしたら、東京以外ではそういった感覚がけっこうあるのかもしれませんね。

また長くなり失礼しました。

by sato (2013-04-17 02:31) 

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