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オリーズ健在 [マンハッタン無宿]

マンハッタン厄偏庵は、ホントの意味でのキッチンは付いていません。マイクロウェイブと冷蔵庫とちっちゃな流しと食器と…ってくらいで、その辺からなんか買って来て暖めて喰らうのが精一杯。まあ、昨今は外食が滅茶苦茶高いこの島、ブロードウェイ沿いのスーパーから買ってくるお総菜とベーグル(世界一のベーグル屋がちょっと上がったところにあったのだけど、21世紀に入って直ぐ、アホな社長が業務拡大して日本なんぞにまで商品を出し失敗、潰れてしまった)で済むのだからありがたいと思うべきでありましょう。

とはいえ少しは外食をすることもあり、その際はもう、決まってました。中華です。知る人ぞ知る、Ollie'sでありまする。

そもそもはブロードウェイを挟んだコロンビア大学正門、ってか、ミラー・シアターの向かいにある学生先生向け朝飯系中華屋から始まった店で、今を去ること20年くらい前になるのか、ヒンデミット生誕100年だったかのフェスティバルがカザルスホール、ウィグモアホール、それにミラーシアターで開催されたとき、実質上のディレクターさんだったジュリアードQのサミュエル・ローズ氏に連れて行かれて、彼がスピナッチを練り込んだ緑色のけったいなラーメンみたいなもんを喰らうのをぼーっと眺めていたのが始めて。なんであんな記憶が鮮明なのか、まあ、誰がこんなの喰うんじゃ、って緑色が面がインパクトがあったのかなぁ。

その後、世紀の終わりくらいにはブロードウェイを南下するようにあれよあれよと店舗を増やし、マンハッタン厄偏庵からそう遠くない78丁目の角、リンカーンセンター北ってか、ブロードウェイからマーキンに入る67丁目の角、さらにはなんとなんと天下のタイムズスクエアは42丁目と43丁目の間なんてとてつもないところにまで店を出す盛況ぶり。別に旨いとも思えない、日本のやたらと手の込んだラーメン好きからすれば醤油溶いただけみたいなスープにざっくりとエッグヌードルが浮かび、その上にこれでもかとローストポークやらが積み上げられる、しょーもないといえばしょーもないアメリカンチャイニーズでありました。値段も格別高くは無いけど、すげええ安い、ってんでもない。

でもねぇ、結局、これがやくぺん先生とお嫁ちゃんがNYCにいるときのほぼ全ての外食先だった。だって、ミラー・シアターの真ん前、マンハッタン厄偏庵からバーンズ&ノーブルの先までいったとこ、リンカーンセンターの裏、それにアメリカ室内楽協会総会があるホテル至近、ってわけで、用事のあるところにしかないんだもんさ。

そんなオリーズ快進撃に陰りが出て来たのは、いつ頃のことだったか。21世紀に入って暫くして、確かリーマンショックの頃だったか、まずはタイムズスクエアの店が撤収しました。まあ、あれはしょーがないよねぇ、あの場所はいくら客が入ってもあの値段の店はやってけないだろー、という感はあったもん。前後して82の辺りの、マンハッタン厄偏庵から最も近くて、「じゃあ、宿の向かいのギリシャ料理店じゃなくて、ちょっと上がったところのオリーズで会いましょうかね、ラーメンでも喰いながら、別に旨くもなんともないけどさ…」って使い方をしてた店も無くなった。

さらには、2010年代に入って、アッパーウェストサイドがトランプビルなんぞのお陰で(なのか?)地価高騰家賃高騰し、音楽家達が住めなくなって遙かマンハッタンの北やら、クィーンズとかに逃げ始めた頃に、とうとう最後の牙城、いちばん便利に使っていたリンカーンセンター北のいちばん上手くいっていそうに思えた店もなくなりました。その隣の凄く長くやってた怪しい料理屋が無くなって、なんとお洒落なAppleストアになったりしたので、ううん、大丈夫かなぁ、と思ってたんですが。数日前にマーキンに行ったとき、まだ看板だけは出ていたので、まさか復活したのかと思ったらそーじゃなかったです。

もっとも、隣のタワーレコードがなくなり、向かいのバーンズ&ノーブルがなくなり、カルチャーコンプレックスとしてのリンカーンセンターの周辺施設が壊滅となったんで、「なんかいろいろあるど真ん中の唯一リーズナブルな飯屋」という機能はなくなりつつあったんだけどさ。

かくて、21世紀も10年代の半ばが過ぎた今、ブロードウェイの安中華の代表オリーズは、ほぼ壊滅。遺されるのは、89丁目を上がったところのテイクアウトに特化して、喰いたければそこで喰え、って感じの「Olies to go」と
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元祖大学正門前本店(なのか)のみになってしまった…

と思いきや、夏の終わりの爽やかな風に誘われハドソン河畔ノマドをしたあと、こっちは再開発になってから全然来ないよねぇ、とリンカーンセンターからハドソン河の方に行った辺り、カーネギーから厄偏庵に戻ってくるときに使うM57 のバスが通る方に行ってみる。と、トランプなにやら、という怪しい名前のビルの1階に、こんな店があるではあーりませんかあ。
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慌ててメニューを眺めると、なんだい、オリーズまんまじゃないか。どうやら、ブロードウェイからは逃げたけど、本店及びテイクアウトと、再開発地区での寿司ショップを前面に出した営業はやるということなんですな。まあ、確かにテイクアウト店に寿司、並んではいるもんなぁ、わざわざオリーズでは喰わんけどさ。

どうやら、これが今の状況みたい。公式webサイトをどうぞ。なんか洒落てるけど、こんなお洒落な店じゃありません。
http://ollieseats.com/ollies-noodle-shop-grille/

てなわけで、NYC滞在も最後の日、一度くらいここで喰わないとマンハッタンに来た気がしないとばかりに、テイクアウト店の店舗内で喰らって参りました。狭い店内、奥に向けてこんな感じ。
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この写真だけ見たら、香港かなんかだと思うでしょうねぇ。で、壁にはこんなもんが貼ってある。
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このオーケストラ、この前、マーキンでやった現代作曲家ばかりの初演5曲という日に、表でチラシ巻いてたなぁ。中国出身の女の子の作曲家がいたからだろうけど。

んで、基本はテイクアウトなんで、こういう風に出て来ます。
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麺と具材、スープは別です。お家や職場に持って帰って、スープをぶっかけると、こうなる。
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ちなみに、奥はお嫁ちゃんが取ったチキンと野菜の炒め物。これに、ご飯がゴッソリ詰まったパックが付いてくる。これ全体で$20札でおつりが来ますから、マンハッタンの昼飯とすれば滅茶苦茶安いでんな。テイクアウトして店の隅で勝手に喰ってる、という形になるので、チップいらないしさ。無論、店員さんらはサービスなんてする気は欠片もないけど。

てなわけで、オリーズ、派手な店舗展開は止めたけど、しっかりやってます。味も…何も変わらぬ、旨くもマズくも無い、あったりまえのアメリカン中華。お値段は、ぶっちゃけ、食い物がアホみたいに高いマンハッタンにあっては、お安いでありまするから、皆々様もこの島を訪れた際には是非どうぞ。

ただ、夏の麺はやっぱり、暑いなぁ。冷麺系はありません。

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