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藝大オケあれこれ [音楽業界]

上野御山は東京藝術大学には、オーケストラがいくつもあります。本日、そのうちのひとつのコンマスを務めることもあるクァルテット・アルパのヴァイオリン奏者とはら青年がプレコンサートでストラヴィンスキーの《3つの小品》で第1ヴァイオリンを弾くというので、これは眺めぬわけにはいくまいと、秋の冷たい雨が降る中を出かけた次第でありました。って、ホントは雨が降る前から学内某所に籠もって来月末のツアー日程をつくる「自分への秘書作業」をずーっとやってたのだけどさ。

ええ、昨日演奏したのは、所謂「藝フィル」と呼ばれる団体です。この団体と、「藝大シンフォニーオーケストラ」はしばしば混乱されるのですけど(ってかさぁ、混乱するなといわれても無理でしょ)、全く別団体。前者は「藝大出身(に限られるのかな?誰か、その辺り、教えて下さい)の若手プロ奏者をオーディションし集めたプロオーケストラ」で、後者は「東京藝大の現役学生が組織するオーケストラ」です。共に運営母体は藝大ですが、前者はプロで、後者は学生オケです。つまり、演奏という行為に給料が発生するのか、はたまた学校のお勉強なのか、という明快な違いがある。藝フィルは、どこをどうみても東京に拠点を置き、自分のホームベースまで持っているのに、なぜか世間では「首都圏のプロオケ」とは認知されない、なんだかちょっと可哀想な団体でありまする。オケ連にも加盟していないから、いろんな「日本のオーケストラ」というデータベースにも上がってこないしねぇ。

その通称藝フィルの藝大フィルハーモニア、やっぱりこれじゃマズいよねぇ、と思う人も多いようで、来月1日から改称するそうな。へえええ、いよいよ打って出るか、と思って期待したら…なんと新名称は「藝大フィルハーモニア管弦楽団」だそーな。

へっ…

昨晩、プレコンサートの前に舞台上からあった説明に拠りますと、「前身たる我が国初の本格的交響楽団の旧東京音楽学校管弦楽団の伝統と、藝大フィルハーモニアを合体させ、この名称になった」とのことなんだけど…。うううん、この学校、いちばん弱いのは広報関係のお勉強なのかなぁ、と思わざるを得ぬぞ。そう仰るなら、いっそのこと「イサワ・メモリアル管弦楽団」とかしちゃえばいいじゃん、と言いたくなっちゃう。確かに、日本国民の誰もがこの名前なら「ああ、日本の洋学史の礎を築いた人だなぁ」と常識的に思えるような名前って、案外と、ないもんだ。

ま、とにもかくにも、昨日はなんでか知らぬが裏番組がいっぱいあるというのに幅広い客層の聴衆で溢れる程の満員の奏楽堂で、ラフマニノフの3番の協奏曲と《ハルサイ》やったです。ラフマニノフの3番って、滅多に聴かない曲だけど、なんだかすごおおおく不思議な曲だなぁ、とあらためて思わされ、ハルサイは髙関御大の楽譜の細部あちこちビックリというマニアックさと洗練され切らないパワフルさを両立させた興味深い演奏で、「頭の良さそうな爆奏ってあるんだなぁ」と妙な納得。ハルサイの前に弦楽四重奏の隠れたアウトリーチ人気曲たる《3つの小品》って、すげえええ判りやすいと思ったり。

この藝大のオケ、ひっそりといろんな面白いことやってますが、なんせ広報がヘタというか、やる気がないというか、判る人だけ来れば良いという感じなので、ま、皆様も、たまには藝大ホームページなど見てあげてくださいな。

というわけで、早速藝大ホームページを眺めると、おおおおお、とぁおんんでもない曲が演奏されるぞお!
http://www.geidai.ac.jp/container/sogakudo/48278.html
藝フィルじゃなくて藝大シンフォニーが担当するお仕事。藝大邦楽科創設80年記念演奏会の第2部で、なんとなんとなんと、まず普通のオケの定期でライブで聴くのは不可能なあの超有名な秘曲、山田耕筰の長唄交響曲《鶴亀》が演奏されるではありませんかっ!

これは凄いぞ、こんなもん、次はいつ聴けるか判らん。11月7日に演奏される日本のマーラー柴田南雄の交響曲《往く川の流れは絶えずして》と一緒に聴けば、20世紀日本の洋楽の歴史がしっかりと辿れるじゃあないの。

てなわけで、皆さん、上野の杜から目をそらすべからず。ほんと、何をやってるかわからんですよ。

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コメント 3

Gustus

80周年記念邦楽定期第2部鶴亀は「お、やるか」と思いました
私事面倒なことがあり切符を買う前に満員となってしまいました
山田流では歌昇さんの奥様がお父様お姉さまなど一門のオールスター上演に出演ですから
故岩城宏之さんの書いたころとは様相が変わり邦楽科は邦楽の中心, 看板学科 となりました
各ジャンルの家元子弟相集う状態です
バブリーになってきたのはちょっと心配です
第一部公演は買えたので二部招待席開放分販売にダメ元で並びます
by Gustus (2016-11-12 06:39) 

Gustus

藝大フィルハーモニア、陸上自衛隊でいえば富士学校教導団といったものでしょうか
大学院生を鍛えるのが主目的で毎回何人かトラで出演します
ほぼ月一回モーニングコンサートで優秀な学生がコンチェルトのソリストを務めます
ソリスト、エキストラで出演する学生院生には招待券が配られます


by Gustus (2016-11-12 06:50) 

Yakupen

Guest 様

幸いにも第2部の頭、《鶴亀》だけを拝聴させていただきました。あれ、やっぱり録音じゃあバランス判らん曲ですね。なんでこういう曲を書いたのか、ますます謎は深まる経験でありました。勉強になります。
by Yakupen (2016-11-12 21:54) 

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