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ブラバンド公国に幸あれ! [音楽業界]

ニュルンベルクのヘアマン演出《ローエングリン》を見物して参りました。
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中身を語り始めると、もう所謂「ネタバレ」という奴にならざるを得ない代物。一昔前のweb創生期の頃ならニュルンベルクなんぞの演出を語ろうがそんなもんを眺めに行く奴なんぞ日本語文化圏にいないのでなーんにも問題なかったんだけど、今やいろいろと出かけてご覧になっている方も多く、そーゆーもんを目にするのをスゴく嫌がられる方もいらっしゃるという。だから、その辺りには触れません。スイマセン。ま、爆笑、としか言いようのない大ネタのオチがある演出で、終わったあとに隣のおばちゃんと顔を合わせて大拍手してしまった、ってことでご勘弁を。

心ある方から非難されることを覚悟で記せば(以下、ネタバレ注意←ああ、嫌な配慮だなぁ、書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ、をモットーとする当ブログであることをどーして理解してくれぬかっ)、《神々は黄昏れず~自主独立ブラバンド公国万歳!》でありました。先頃の菅尾《神々の黄昏》同様に、普通は負け組の側から描く、というやり方です。最近の流行といえばそれまでなんでしょうけど、それが最後まで徹底していて筋は通ってるので、幕切れでお口あんぐりになって、起きてることが許容量を超えちゃってるからもう笑うしかない、ってこと。

ヘアマンという演出家さん、昨年の秋にベルリンで《マクロプウロス事件》を眺めて、うううん、なんか自分だけで納得しちゃってないか、こいつ、ってあまり良い印象はなかった。でも、大変な奇才ということは誰にだって判る。「登場人物のいろんなことを説明する(理解させる?納得させる?)ために、台本にはないペルソナを登場させる」というのが得意らしく、今回もそのやり方でガンガンにやってます。この演出の場合、あくまでも台本から読める存在を出してきていて、全然恣意的じゃないし、極めて納得出来るんだけど、それにしても…

なんか隔靴掻痒だなぁ。ま、それはそれとして、本日の舞台で最も感心したのは、合唱の扱いでした。

《ローエングリン》という作品、ともかくハインリッヒ王が連れてきた軍勢とか、ブラバンド公国の人々とか、合唱がいっぱい出て来る。でも基本、「偉い人たちのあれやこれやに右往左往するばかりの、哀れな一般大衆」になってしまう。で、最もファシズムっぽい作品とも見えてしまう。

ところがどっこい、本日の演出、ブラバンド公国の民とハインリッヒの軍勢関係者とは、きっちり立場の違いがあり、ぶっちゃけ、対立してるんです。台本をどう読んだらそんな演出が出来るんだと思うけど(それが演出家の力なんでしょう)、衣装やら動かし方やらではっきりと「あれぇ、ブラバンドの連中、口先では現状にOKしてるみたいに見えるけど、本心とは思えないなぁ」って感じさせてくれる。口では「万歳」と叫んでるけど、腹の中ではそうは思ってない。戦争という状況だから仕方なく声を合わせてるだけ。考えてみれば《ローエングリン》って、一度は神前裁判で負けた奴が異議申し立てを出来たり、案外、多様な意見が堂々と言える社会じゃあないの。それがこれほどはっきり判る舞台、これまで観たことありませんでした。

いやぁ、野蛮人の集まりみたいに見えるけど、ブラバンド王国、案外、言論の自由がちゃんあり、神聖ローマ帝国とは是々非々でやってける、21世紀のニッポン国よりよっぽどしっかりした独立国じゃないかい。あんまり住みたくはないけどさ。

明日もはよから、いよいよアムステルダムへの移動なんで、もうオシマイ。なお、元ヘンシェルQセカンドのマルクス君、メンバーリストには名前はちゃんとあるものの、本日のピットにはお姿を拝見できませんでした。そもそも本日この劇場を眺めに来たのは、来月にヘンシェルQ25周年のプチフェスティバルの顔を出すんで、久しぶりにマルクス君にご挨拶したいなぁ、というのがあったんだけどさ。ま、こればっかりはしょーがない。

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