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君はケージの何に関心があるのか? [現代音楽]

世の中何が起きているかよーわからんけど、どうもこの2020年夏以降、ニッポン列島では「第2次大戦後の前衛オペラ」古典の見直しがいきなり起こっているようでありましてぇ、去るお盆の真っ最中には温泉県盆地オフィスから遙々ニッポンの真の首都ナゴヤまで行き、その後炎上しちゃった(比喩でなく…)空港バスの姉妹号に乗って栄のアーツセンターまで行ってケージの集大成《ユーロペラ3&4》を見物。商売もんなんでこんなところに中身については書けないけど、これがアルメイダ劇場ならぬ愛知芸術劇場小ホールの当日の様子。
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昨晩は、新帝都は溜池で夏の終わりの伝統現代音楽祭り真っ最中に割り込むように乱入したスーパースター落合陽一息子さんのプロデュースに日本フィルが乗っかる年に一度の若者向け演奏会で、これまたケージの初期作《ミュージサーカス》が上演されましたです。これ、開演前にカラヤン広場でやってた同作品オープン上演に引っ張り出された張りぼて猫。
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実は、やってるイベントが見えない場所に陣取って急ぎの作文作業をノマド仕事していて、野外サーカスは音で聴いただけなんですけど…ホーミーとかスチールドラムとか、はたまた坂本九とか、いかにもなもんが騒々しく流れていたようであります。夏終わりのサントリー財団祭りのために来日中のクラング・フォーラム・ヴィーンが新ヴィーン楽派名曲小編成編曲集なぁんて、いかにもいかにもな超トラッドなことを小ホールでやってる隣の大ホールは、「なんでもいいから一緒にやっちゃってください」のホール版。最初にウルトラマンがシュワッチと出てきて、沖縄舞踏、アイヌ音楽、比叡山声明、イサン・ユン、打楽器音楽などを一緒にやっちゃいました――なぁんて60年代直感音楽偶然性の音楽ハプニングまんせー、ってもんを観せてくれる。客席には、恐らくは本日演奏されるクセナキス作品のためもあって仮設された舞台がどかーんと据えられ、サトちゃんとか
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なにやらAI組み込まれたシンセサイザー型ロボットが、動きながら聴衆と一緒に見守ってる。
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60年代っぽいハッタリかました世界、落合息子さんったら、舞台の上で若者に説教する中で「これはやっておかないと、先に行けない」みたいなことを「苦笑」という感じで仰ってました。ま、6年かけてこれがやれるまで来て、藤倉氏に新作書かせちゃうんだから、落合息子さんも「ゲンダイオンガクギョーカイ」の納まるところに納まってきたかな、と感慨ひとしおな晩でありました。

ま、そういう感想にもならん感想はそれとして、やくぺん先生的に感じたことってば…ああああ、ナゴヤの足立さんも溜池の落合息子さんも、「この作品がどうやって作られているかを説明する気は毛頭ないのだなぁ」。それだけ。

高齢者やくぺん爺とすれば、こういう作品への関心は、なによりも「混沌をどうやって組織するか、はたまたしないのか」の一点にかかっているわけで、結果として生まれてくる舞台というか、作品そのものは、正直、どーでも良い。なんか凄いことが起きることもあるし、全然スカなこともある。それはもう、今日は新帝都の風景は雲と太陽の具合でなんとも美しく見えるではないかい、とか、ああ残念ながら今日の由布岳はなんにも見えないわ、とかいうのとまるっきり同じ。それだけのことです。だって、「ニンゲンの手でどこまで自然を作り出せるか」ですからね、よーは。

で、驚いたのは、この2つの公演、当日配布される刷り物には、共に「この作品がどうやって作られているか」の説明が一切ない。足立氏も落合氏も、自分が作品をどう思うかなどはお書きになっているのだが、実際にケージがどういう指示をしており、それに対して自分が何をやってるか、とりたてて説明らしきものはない。足立氏には、商売ということで終演後に楽屋でインタビューをさせていただき、ご本人の意図は成る程と判り、短い原稿になんとか突っ込んで提出したんだけど、昨晩の落合氏に関しては単なる見物人ですので、このカリスマ青年がなにをやってるのか尋ねるチャンスもなく、現場スタッフに立ち話で愚痴を聞くくらい。正直、落合氏が何をやったか、ぜーんぜん判らなかった。どうやら、観る側がそんなことを判る必要はない、って思ってらっしゃる、ということなんですな。

なるほどねぇ…。

てなわけで、いよいよ俺の現役時代は終わったな、と思う夏の終わりなのでありましたとさ。

戦後前衛回顧、次は10月の《浜辺のアインシュタイン》東西競演、そして11月の巴里でのサイクル4作目《光の金曜日》へと突き進むっ。半世紀以上の時を経て、「前衛」がどんどん過去に納められて、安心して扱えるオモロイ娯楽となっていく。ま、それはそれで良いんでしょ。

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