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好き嫌いで選んでいられないレベル [大阪国際室内楽コンクール]

大阪国際室内楽コンクール&フェスタ、大阪城内堀外北東の主合戦場だけでなく、今回からは遙か富山の地を討ち取った強者が大阪上まで侵攻してくるようになったフェスタの戦も始まり、そっちはそっちでモルドヴァからの伏兵が集票率のわずかな差で惜敗し淀川を越えられなかったり、いろんなことが起きているようでありまする。

本陣讀賣テレビ・コナン城横のいずみホールでは、冷たい雨の中、ピアノ付き室内楽で争う第2部門が行われましたです。結果その他は、こっちでご覧あれ。
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https://jcmf.or.jp/news_en/2023result-section2/

なんせピアノが必要なんで練習場の確保が弦楽四重奏よりも遙かに大変、などいろんな現実的な事情もあるんでしょうけど、クァルテットは4回のセッションがあるのにこちらはセッションは3回の大会なので、一次予選で4団体が敗退せねばなりませぬ。で、始まってみると、もう頭っから「俺たちは20年後の天下を獲るぞ」って勢いの連中が次々と舞台に現れ、その勢いが午前10時から午後7時半までとうとうひとつとして途切れることがないという異常なまでの水準の高さ。正直、やくぺん先生は90年代の前半くらいから「国際室内楽コンクール」というものを世界のあちこちで眺めて来ているわけですけど、最初のラウンドでここまでレベルが高い試合は過去に経験したことがありません。これはもう隠居の爺がいーかげんな回想で盛ってるんではなく、ファイナルなんかでは普通に感じる「まあ、どっちでも良いんじゃないですか、もうあとは趣味の問題でしょ」としか言いようがない闘い(2003年ボルチアーニのクスVSパシフィカ、2006年同大会ベネヴィッツVSドーリック、などがその筆頭)をこのステージで目にするなんて…いやはや、なんなんだ、という感じでありますわ。

まあ、もう結果が出たラウンドなので「裏話」として漏らしても良いと思うんですけど、大会運営委員長氏に拠れば、主催側としては10団体にしてくれないと予算なりで困るんだけど、テープ審査の先生方から「どうしてもあとひとつ絞れません、この11団体は他とレベルが違い過ぎ、なんとかならないでしょうか」との悲鳴のような報告が挙がり、円高予算削減必至の大会としてはホントはイヤなんだけど、アーティスティックな要求をないがしろにしたら本末転倒なので、第2部門は11団体が大阪に招聘されたとのことです。テープ選考委員で、コンクール専門委員の視察としてずっと客席に座り、日本の参加者の皆さんとすれば「影の審査員」みたいなことになってるエクの大友パパなど、「僕はもう好き嫌いで考えてますよ」と苦笑しておりました。

んで、ここからはグダグダに疲れた前頭葉が綴るどーでもいいが、だけど案外大事な話。この水準の闘いになってくると、大友パパが仰る様に、審査員でなければ「好き嫌い」で聴いている他に手はないのであります。その意味では、1000円で1日11団体聴ける殆ど慈善事業のようなフェスティバル・コンサートと思えばよろし。

だけど、逆に言えば、審査員という仕事となると、「好き嫌い」では判断出来ない、ということなのでありますね。今、コンビニ弁当抱えて雨に打たれながら土曜の夜のなんだか半端に寂しい地下鉄長田駅から安宿まで走るように戻って来て、あらためて結果を眺めると、ううううむなるほどなぁ、と思うわけでありまする。

極めて安直に言えば、「現代作品はみんな上手なんで評価の対象にならない、判断は古典の扱い」ということなのかなぁ、って感想ですな。

例えば、夕方に聴いたばかりでまだ記憶に新しいNECのトリオ・ガイアという元気な団体と朝っぱら2つ目に聴いたプロカルテットのプログラム常連で経歴だけから見れば優勝候補の一角たるトリオ・パントゥムのカーター最期の作品、昨年のグラーツ「シューベルト&現代音楽コンクール」トリオ部門覇者でこれまた優勝候補一角のトリオ・オレロンと溜池アカデミー代表ポルテュス・トリオの細川作品と、共にもうまるっきり対照的なアプローチながら、どっちも「へえ、そうなんだぁ、こういう作品なんだよねぇ」と思わせてくれて、正直、本日はこれらの数曲を聴いただけで体力精神力の衰えたやくぺん爺さんはもうお腹いっぱい、今日は充分喰った喰った、だったわけでありまする。

だけど、この中でNECの連中だけが敗退している。で、なんでやねん、奴らにヴァインベルグやらせたらもう圧倒的だった筈だぞぉ、ということになるわけです。

これが、「好き嫌い」なんでありましょう。

要は、「古典」には正しさがある。ワイラーシュタインやイーサンやカシュカシュアンが教え、NECの教室で一生懸命考えて練習を重ねたであろうベートーヴェン初期の「音楽としてのあり方」は、トリオ・ヴァンダラーやらが考える「古典」のあり方とは異なっていた、ということなのだろーなぁ…と思うしかないわけですね、わしらトーシローには。

それが悪いわけではなく、それを見せつけられる、教えて貰うのがコンクールというものだ、ってことです。いやぁ、頑張った若い人たちには失礼な言い方になるが、ホントにこのレベルの闘いは勉強になります。疲労のしがいがある、ってもんですな。

さてと、あとは数も殆ど無い写真の処理をしたら、もう何もせずに寝ます。明日も雨の日曜日、大阪場外ではロマン派と20世紀前半という山寺攻略のような大合戦が繰り広げられまする。本日のような血で血を洗う苛烈な闘いとはちょっと違うと思いますので、お暇な方は気楽にドビュッシーやデュティーユを聴きに来て下さいませ。1000円で日曜日1日楽しめる娯楽、そうはないぞっ!

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