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謹賀新年 [たびの空]

全地球上の約4分の、10数億人の北京語・広東語文化圏の皆々様、旧正月明けましておめでとうございます。

ここまで遅い旧正月も珍しいんじゃないかしら。ちゅーことは、イースターも凄く遅いんだな。

なんせ今年の佃厄偏庵、メインカレンダーは「ホーチミン市キャセイホテル」という一泊15ドルのビジネスホテルでいただいたもの。新暦と旧暦が一緒に書いてある。だから、嫌でも旧暦を意識して生活することになります。見よ、ミドリさん以下、演奏家連中がみーんな敬遠したこの色彩センス!

と、なんかねぇ、季節の移りがまた違って感じられるんですよね。ああ、新年になって、春が来るなぁ、梅も咲いたし、もう新春だなぁ、ほーほけきょ。
昨日やっと到着したパシフィカQのブランドンが「東海岸各地の空港が軒並みダメで、みんなオヘアからの便に押し込まれたみたいで、もの凄く混んでた」と洩らしてても、ああ、そりゃそうだろうなぁ、旧正月で里帰りする連中がなんとか乗り込もうとしてるんだからなぁ、香港芸術祭も始まるし…なんて思っちゃう。

何年か前、ブルネイ航空で貰った卓上カレンダーを仕事机の上に置いていた年は、ラマダン明けが妙に待ち遠しかったものだ。カレンダーって、案外、生活意識に影響するもんですよ。いやホント。

イベント大好きイシハラ都知事が子供の遊びのように始めた新しいマラソン祭りも、知事さん大嫌いな「三国人」のお正月に合わせたようにしか見えないだろうなぁ、全世界のマジョリティには。「ああ、東京の旧正月イベントか」ってね。

ま、そんなこんなで、あらためて、謹賀新年賀正。


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「本気ですれば…」 [弦楽四重奏]

本日から、パシフィカQの東京都中央区ショートターム・レジデンシィが始まりました…と言いたいところなんですけど、実は、旧暦の大晦日は2月16日金曜日午後3時の段階で、パシフィカQはまだ東京湾岸地区に到着してませんっ!一昨日からの我が家での大騒ぎというのは、それなんです。

早い話、彼らが住んでる(文字通りのレジデント)イリノイ大学のあるシャンペーンというところ、シカゴからまああっすぐ南に車で2時間くらい、NY・ボストンよりは近いくらいの距離なんだけど、火曜日にシカゴ経由で成田に向かおうとしたら、飛行機が大雪で飛ばなくなった。で、1日遅らせ、成田から日本橋に直行してローカルFM局収録、というオソロシイ予定になった。ま、奴らならやれる。うん。

でも、1日延ばしてもシャンペーンの小さな空港は閉鎖が続いている。これはダメだ、と車でシカゴはオヘア空港まで向かうことにした。オヘアは流石に世界一デカイ空港、ちゃんと飛んでます。小さな子供を連れてるので、無茶はできないから、余裕を持って出かけたんだけど、大雪のおかげでハイウェイのあちこちで車がクルクル回転してたり、ひっくり返ったり、トラックが衝突して放置されてたりで、途中から大渋滞。で、昨日の東京行きの出発が迫る。なんとかギリギリにオヘアには着いたが、もう出発時間、とそこにいる登場予定機に乗せてくれない。チェロのブランドンは、東京で直ぐに仕事があるのだ、と頑張って机を叩いたが、ダメであったぁ。

かくて、辛うじて間に合った第2ヴァイオリンのシッビだけを乗せたアメリカン航空は、強い偏西風に押されながら昨日木曜日夕方に成田に到着。当然ながら、受け入れる晴海のNPOトリトン・アーツ・ネットワークはもう大騒動。なにせ、金曜日の朝10時から、水天宮の東京シティ・エア・ターミナル裏の小学校にアウトリーチがある。夕方には晴海総合高校生徒会主催のイベントに招かれている。さあああ、どーするどーする!

ここであった様々な騒動、緊急事態をMディレクターがどうやって切り抜けたか、急遽召集された「アウトリーチ界の女ターミネーター」田村緑さんとシッビが昨晩落ち合い、曲を決め、練習をし、いかにしてスペシャル・アウトリーチ・プログラムを緊急に完成させたか、それを語ればその筋の関係者諸氏はこのNPOの瞬発力に驚嘆し腰を抜かすであろーが、ま、それは語りません。ともかく、今日の午前10時、無事に中央区立の某小学校の音楽室で、「シッビ・パーンハートソンさん&田村緑さん」のアウトリーチコンサートが行われました。さりげなく手元にある刷り物だって、この12時間以内に作られたものなんだよなぁ。いやはや。

アウトリーチの中身はまた別のところに報告書を書くので、それはそれ。以下、まるで別の話。

音楽室にはいろんなものが張ってあります。「チェロの弾き方」なんて、いきなり川向こうの直ぐそこに住んでるチェリストM.Fさんの写真があったり。んで、極めつけを2点。


苦労人のあなたに真っ正面向いて言われると、説得力があるっつ。「すべてのことができる」じゃあなく、「大抵のことができる」なのが、妙に謙虚だなぁ。(それにしても、どうして音楽室って、必ずグラモフォンがタダでくれる白黒の演奏家カレンダーが貼ってあるんだろーか?)

じょーだんはさておき、貴重なのはこっち。

は、はちゃとぅーりあんが日本の子供らを指揮してます!

びっくりして、音楽の先生に「この学校にハチャトリアンが来たんですか」と尋ねたら、「いいえ、うちじゃなくて、世田谷の三宿小学校なんです」とのことでした。いずれにせよ、讀響振ったりした1973年の来日の時のことなんだろうなぁ。この頃は「アウトリーチ」なんて言わなかったんだろうけど。「大作曲家ハチャトゥリアン氏、小学校訪問」なんて大騒ぎになったのかしら。

以上、どーでもいい話ふたつでした。さて、運河の向こうの高校に行かねば。シッビが生徒会主催の「パシフィカQと語る会」に、ひとりで参加しますっつ。なお、明日のモーツァルト協会の演奏会からは、ちゃんと4人になりますので、ご安心を。

                            ※※

午後5時前、シッビがひとりで高校生の前でバッハ弾き、パガニーニ弾き、30分も質疑応答に応え、孤軍奮闘の戦いをしている中に、パシフィカQの残り3人が成田から直接晴海高に到着しました。えびちゃんみたいなキュートな生徒会長から「今、新木場近辺を走ってます」という緊急アナウンスがあるや、100人ほどの高校生や先生、親御さんなどから大喝采。
やがて大拍手の中を到着した3人は、おもむろに楽器を取り出し、譜面台を出し、ブランドンが「こんなクレイジーな旅はありませんでした、でも、無事に来れて嬉しいです、今日の演奏は忘れないよ」とひとくさり、で、ぎゅぃいいいん、っとピアソラの「フォー・フォー・タンゴ」を一発!もう会場はやんやの大喝采でありましたとさ。そー、本気で行けば、大抵のところには行ける!

さても、本気で21世紀の世界制覇を目指すパシフィカQ、野望達成前にお試しにお聴きになりたい方は、火曜日の昼に旧GHQの1階でロビコンがありますので、そちらへどうぞ。
ちなみに、高校生に尋ねられてシッビが応えたところによれば、「毎日の練習時間は、クァルテットとして5時間、個人としては更に1時間半くらい」とのこと。「クァルテット」を気楽に名乗る若者たちよ、これが本気で世界を取りに行く連中の生活なんだよ!


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セミナー『指定管理者制度の導入状況を俯瞰する』~ほぼ速記まんま [指定管理者制度]

昨夜の嵐はどこへ、湾岸に暮らす目にはやたらと烏ばかりが跋扈する内陸は代々木のオリンピックの森(意外にも佃月島には殆ど烏はおらぬ)、春もうらうら、もう梅がチラホラ咲いてます。ほれ。

佃厄偏庵は、遙かシカゴ近郊での大雪がとてつもない騒動になってるのだけど…ま、それはまた来週にでも。みーんな笑い話になったらお伝えしましょ。まだ状況は進行中です。

というわけで、朝も9時前から路地を抜け、月島駅から延々と代々木公園までご出勤です。やくぺん先生がこんな時間にどっかに出かけるとなると、なんだか周囲はビックリするらしく、路地をお掃除中のお隣の魚河岸ご隠居ばかりか、その向こうの炉端焼き屋のオバチャンまでが「いってらっしゃい」と声をかけてくる。いやはや、なんと思われてるんじゃろか、この庵。

さても、本日の(社)全国公立分化施設協会及び文化庁主催の「舞台芸術フェア・アートマネジメントセミナー」でありますが、午前10時から中はいよいよ本命、『指定管理者制度の導入状況を俯瞰する』であります。文化庁芸術拠点形成事業委員だったり、自治省系では地域創造にも関わっていらっしゃる衛紀生氏がパネリスト。それに、言わずと知れた空間創造研究所の草加叔也氏がコーディネーター。実質、草加さんが公文協が纏めたデータを整理し、衛さんが突っ込む、というか、問題点を指摘する、という明快なレクチャーでした。
「いろいろな形で公共文化施設に関わっている方々から、現場の状況を知りたい」という草加さんの意向もあり、2時間のうちかなりの時間が各地の事例の会場からの発表となりました。聴衆は、比較的管理系の年配の方が多かったようで、100人は越えていたかしら。
そうそう、「ここにはどんな人が来てるんだぁ」という昨日挙げた疑問ですが、本日はホントにいろんな人に会って、殆ど当私設電子壁新聞のオフ会状態。ってことは、つまり、管理する立場の人や文化財団など公共的団体の方だけじゃなく、指定管理を取った民間企業の方、指定管理に入る前に財団を辞めたOB、さらには指定管理関係の本を出している出版社の編集者さんなどマスコミ系までいらしてます。
残念ながら、小生の直接の同業者諸氏は、やっぱりみんな国際フォーラムに取られちゃったのかしら、だーれも顔を見ませんでした(結局、小生は「ラ・フォル・ジュルネ」記者発表会は不参加)。

以下は、久々の「ほぼ速記まんま」シリーズ。公文協の冊子「公立文化施設における指定管理者制度導入状況に関する調査Ⅱ報告書」のデータが前提。ウェブ上にデータ部分はあります。これを前提にお読みあれ。http://www.zenkoubun.jp/siteikanri/report2.html

さて、長いぞぉ。根性据えて眺めてくださいね。関心ない方は、もう今日はここでオシマイにしたほうがいいですよ。速記故の誤字脱字は勿論、意味不明な言葉や議論、なんにも直してません。読むのが面倒な方に論調だけ申し上げますと、衛氏は「正規雇用の職員が安定してやらねば文化は育てられない」という立場からの議論展開。草加氏は誠実なデータ処理に徹していらっしゃいました。小生の感想は…うううん、いずれまた、機会があれば。

                           ※※※

◆草加氏による公文協調査結果の分析
できるだけ会場の皆さんの意見を出していただき、導入状況など生の現状が判るようにしたい。しして指定管理者制度の実態を共有できれば。
今日の資料は公文協が昨年の10月1日時点でまとめた調査、報告書を前提に進める。2189館が整理されている。現在、もっとも整理されている資料である。公立文化施設は2500ほどあるとすると、8割から9割のデータが入っている。
さて、指定管理者制度は、ご存じのように、2003年に導入され、昨年9月に移行措置期間が満了した。少なくとも管理委託制度はなくなっているはず。基本的には直営か指定管理者制度のどちらかにシフトしているのが現状。第2クールに入っている施設もあるが、第1段階が落ち着いたところ。この状況を踏まえて、どうなっていくのかを予測する。以下が全公文の資料による分析。

(2)の分析
指定管理者が上回ったのが10都道府県。西高東低で西側に導入、東北・北海道では上回っている圏はない。埼玉東京愛知大阪など、大都市圏に指定管理者導入が多くなっている。
中四国地域に指定管理者導入実績が沢山ある、鳥取、島根、広島、香川は直営より指定管理者導入の方が多い。富山も多いのはなぜか。

(3)の分析
2189のうち指定管理者が40.2%。その他、の2.7%は財団が施設を直接所有していたりする特殊な制度。管理しているのではない。
実態としては直営が6割近くある。指定管理者が4割程度に留まってしまった。直営だったものは直営に、管理委託制度だったものが指定管理者に、という流れが基本。実態としては、直営から指定管理者、その逆の例もあるはずだが詳細は判らない。施設規模による違いは(大きな施設が指定管理者を導入する傾向が強いと想定される、300席程度しかない小ホールは直営館として運営される傾向にあるのでは)。この状況がどう動いていくかは、噂に聞くと、直営の中でも指定管理者を導入していこうとする傾向はある。直営が急激に増えるという見通しはない。
不幸な例として、指定管理者制度を取り消された例がある。静岡などの例では、指定管理者制度を議会で廃止し、直営に戻している。

(4)の分析
指定管理者を導入した881のうち、種別は公共的団体が81%(財団、社団などの公益法人)、民家事業者13%、NPO3%、公民の共同事業1.7%。公共的団体とそうでないところは、民間が18%弱。基本的には、民間事業者は関心はそう高くなかったのではないか、という憶測がマスコミに出ている。が、公募でないとチャンスが殆どない。公募の中で、民間事業者が受託している。民間事業者3社が非公募、NPO3社が公募でなく指定されている例があるが、極めてレアなケースである。

(5)の分析
公募は43%弱、非公募が57%。881サンプルのうち、非公募が公募をかなり上回っているのが1回目の結果だった。指定管理者への移行のソフトランディングが目的だったのではないか。地方公共団体職員の作業量の低減化から、「指定管理を公募するのは作業量、金銭的な面から無理なので非公募でも良いだろう」という施設は非公募にしたと考えられる。
説明責任ができにくいとか、果たせないという状況ゆえに、消極的な非公募の選択もあったろうと考えられる。導入期における消極的な非公募といえる。公募、非公募は積極的なものよりも、説明責任が難しいので公募、非公募が決められた。
1度目は非公募だったが、2回目からは積極的に公募にしていこうという地方公共団体も多そう。2回目以降は公募が急激に増えるのではないか。

草加氏による追加特別分析
民間事業者は、殆どの場合、公募でなければ選定されない。公募の中での民間事業者の割合は。378施設の中、60%は公共的団体が指定され、公共的団体60.1%(227)民間事業者29.9%(113件)、NPO法人が6%(23)。共同事業体4%(15)つまり、公募した中で4割が民間事業者が関わっている。それ以前は民間はゼロだったのことを考えれば、大きな数ではないか。より公平な競争原理が働けば(応募の制約、地域に限定した事業者の公募、同規模施設の管理運営経験が無ければダメ、指定管理料が後払いになっているので借り入れが出来ないNPOなどは難しい、など)、もっと民間が増えると思われる。民間事業者がさらに参入してくる可能性は高いと予測される。

(6)の分析
指定期間。これが大事なポイントであるとされる。一番多いのが3、4年未満。実数としては3年が多いと思われる。次が5年であろうと思われる。もう半分以上はその時期に入っている。7年以上は0.8%しかない。この中である一定の成果を求められる。
規模の違うものを比較しても意味はないだろうが、これが現状。

◆以上の分析を受けた衛氏の感想
・指定期間の問題が非常に大きいと思う。指定管理者のミッションと著しく矛盾する。
・効率的な経営、経済面が強調されている。前年度20%減などは常識。プロパー職員の雇用形態が、非常勤や契約になってきている。これ自身が、指定管理者の制度のミッションから外れている。サービスの質的向上は、1年毎の契約職員や非常勤職員、派遣の職員で出来るわけがない。明らかに矛盾している。施設は職員に技術集積が起こるような雇用の形態を考えるべきだ。
・直営館も、それまでの職員が財団職員から行政職員になって運営している小出郷のようなところもある。だが、行政職員は貸館だけで、他は行政職員はノータッチ、などというところも。それならなんで直営を選んだのか。直営の方が良いサービスが出来るとそういう選択した筈なのに、最長3年の派遣で事業を運営している。いかに芸術文化が継子扱いされているか。
・40%の民間事業者は何を考えているかというと、いくつかの大手の指定管理者をとった幹部にインタビューした。その結果、コンソーシアムを取って管理部門をやってるところは売上げが利益に反映しているけれど、事業を担当している民間会社のトップの人間が言うには、「10数館を取ってるが、売上げは上がったが、事業のリスクを抱えているために意外と儲からない。その部分は撤退するか、2巡目にはスケールメリットをせねば。」つまり地域にあった事業ではなく、一括購入になってくるということ。本部で一括購入して、沢山指定管理者を取って、事業が上手く繋がるようにしていくしかない。2巡目は公募になるだろう。そうなったら、民間の側がどのような戦略で来るか、全国同じような、郊外と同じ風景が公共ホールでも起きてくる。
・公平な競争原理が働く、というが、効率的な運営とはお金をかけないこと。民間と闘って一番の問題は人件費。従来の財団が指定管理になって、契約職員や非常勤しか雇わないのは、このため。制度的なミッションはあるが、外部的な状況(金がない)。民間は従来の財団職員の半分でできる。社会保険に入らない週29時間労働、など。これが行政のやることなのか。一番の問題は、人的な資源にしわ寄せが来る。そのために、技術集積が起こらない。その結果、サービスの質的な向上が起こらない。何の経験もない非常勤に、行政職員が事業を押しつける。効率的な経済性がクローズアップされてくる。
・今後は闘うしかない。民間と競争するしかない。民間も現地に張り付いているのは課長クラスまで派遣。何よりも問題なのは人。民間に全部渡していくようなことになるのでは。

(ここで草加氏におる前半の展開のまとめ。以下は会場からの発言に応える。)

◆匿名。公益法人の職員
非公募で指定管理者に選定してもらった。選定委員会にはかかった。非公募になるにしても、指定の仕様書、ミッションも市から来る。だが、その両方とも、提案書を書く立場の自分が作った。年間50本くらい事業をしている大きな市での話である。なにしろ、現場でやってきた方しか、仕様書やミッションを作れないのだ。だから自分で仕様書を書き、それに提案書を出した。公益法人がやりたいことと、市の考え方に矛盾があるのではないか。公募するときにも自分に仕様書を作らせるのか、という疑問。こういうことが他でもあったのか。

草加:何をやってるか判らない人が公募要項を作ったら、不幸な結果しか生まない。その意味では、不幸なことではない。
衛:それに類したことはよくある。滑稽な風景だが、実態である。市長が理事長をやってる財団が指定管理者になってるところはいくらでもある。指定管理者になって、行政がどういう根拠を持ってその施設と作ったかがスカスカになった。現場の人間にとっては、ミッションを現場で詰め込み、人的資源にどういう風にダウンロードしていくか。そこで年限がひっかかってくるのだが。
草加:地方公共団体がやらねばいけないことが、指定管理者制度ではっきりした。地方公共団体が大きな背骨を作らねばならない。10年、20年の成果は公共団体が示さねばならないのである、ということが判ってきた。経費の削減は納税者からすれば良いが、それが余りにも体力を奪われてるのならば良い削減ではない。その辺のかねあい。
衛:きちんとミッションを持って事業を1年目から組み立てていき、5年くらいで切られると、困るのは市民なのである。事業の連続性を担保すること。地域住民にとって何が大切なのか、から始まる。結局、雇用の問題なのだが。

◆鹿児島、館の名前は言えないが、行政、館の管理運営をやっている立場から
これまで、指定管理者制度の論議の中で、館のミッション、役割を殆ど抜きにして、どこも同じ館であるとして扱い、指定管理者の論議がされた。それが混乱を生じさせた。もうひとつ、先程の人の話を受ければ、行政は地域の文化振興のために公的財団を育ててきたのだから、行政からすれば財団にそれをさせれば良いというつもりだった。だから先程の方の事実は当然なのである。(草加氏の纏め:「地方公共団体からすれば、蓄積をする器として文化振興財団を置いてきた。それがいきなり違う人格として動けと言われても困る」ということ)
指定管理者を言い出したときに、最初は事業を行っているところに導入する予定は無かった、と自治省の人が言っている。
地域に密着した事業をやっている、民間がそれをやろうとしても出来ない。公募型の事業展開をするなら、それはできない。

衛:中間組織のようなものは必要。美術館、博物館、公共ホールは指定管理に馴染まないのだから。公募になって、民間会社と闘うために、40歳以上は給与40%カットして再雇用してやっと勝った、などというところ。文化に関する施設は蓄積が必要である、とするならば、公園と横並びでやっても矛盾する。貸館も徹底して市民をサポートするのが役割。その意味では市民サービスなので、事業館と貸館はそう違わないのでは。制度の矛盾が文化的な施設に来ている。繰り返すが、人の問題。
草加:文化の蓄積を起こすのは地方公共団体ではない、と開き直ってくれないと、文化の芽は出ない。文化評議会を作っていこうという動きはあるが、ストックが起きるセクターが出来れば。

◆和歌山県民文化会館、和歌山財団の方
公募でやった。その前、15年9月に改正され、セミナーが沢山開かれる。財団から見れば雇用の喪失。公益法人の都合の良いリストラと思われる。16年に、指定管理者が導入されるので舞台関係者がどんどん退職していく、という声がある。選定委員に劇場ホールを経験した人が入るべき。専門家を推薦し、選考委員に入った。募集要項を見ると、採点基準に、経費の縮減を、というのが第一になっていた。100点中30点が経費縮減だった。民間と競争して負けるのは人件費。で、リタイア組を5名固めて、5000万の人件費を圧縮した。3割カットで職員を辞めれば良い。結局は9名が辞めて、5名が再雇用となった。財団を見直す良いきっかけにはなった。
三重の財団に勉強に行った。民間の年俸は400万円、だが財団はトップが900万円で普通は500万円、これはコストでの戦いはやれない。で、カットした。2クール目で勝つのは、事業の継続性か。

草加:人件費を内部で切るのは難しいことである。厳しい現実はあったのであろう。指定管理者を運営していくには、こういうことも起こる。
衛:民間にないのは、地域に根ざした蓄積、それと行政から派遣された職員がいること。行政は文化の専門家ではないが、エリア・アドミニストレーションを少なくとも良く知っている人間である。そんな人がいることをどう強みにするかなのである。

◆新潟市役所文化振興課の方
新潟市の状況説明。水族館、美術館もあるが、ホールは貸し館中心の多目的ホールは民間が取った。芸術文化振興財団が委託されていたが、財団の管理する使命が終わったということで、財団が手を上げなかった。りゅーとぴあ、音楽文化会館のふたつ。後者は市民の文化活動の中心地として、練習室をメインに考えている。このふたつは現在は非公募で、3年間は芸術文化振興財団が管理している。3年後は公募に向けて積極的な見当をはかっていく。
で、芸文財団と一緒に、今後どうあるべきか議論した。制度的に馴染まないと個人的には思うが、財団と文化振興課で出した結論は、地域住民と行政の間にたった定点でしっかり見ていける専門家集団として育成してきたので、それを大切にしていく必要がある。文化の専門家集団が新潟にあることが都市の魅力になる、ということで、なんとか非公募で行きたい、と市の三役まで説明に行った。が、助役は総務省から来ているので、財団の活動は高く評価しているので、公募をしても負けないでしょう、と上にいくほど考えている。市長もその考え。公募に向けてちゃんとミッションが継続できるような公募をしてきなさい、ということで、公募もやむなし。
だが、この制度の矛盾を再認識し、公募に向けたモーティヴェーションが下がっている(笑)。
公募するには施設のミッションを明らかにし、要求水準を明確にしよう、それを最も明確に満たすところはどこかを考える。一番相応しい団体をこちらが考えていくと、今、やっているところが条件として被ってきてしまう。公募は公平性と平等が課題としてあるが、行政として相応しいパートナー像を求めていくと公平性が損なわれる。そこが悩み。

衛:りゅーとぴあは民間は狙ってくるだろう。
草加:いや、あんな面倒なところはやりたくないんじゃないか、民間は。私なら、最も手を出さないのは世田谷、兵庫、新潟などには手を出さないですよ。

◆神戸の方
2年前まではホールでしていたが、今は辞めた。募集に関して、情報公開と審査基準を決めてしまえばオシマイ。どこを向いて仕事をするのか、が気になる。財団は行政、自分らの近くなどを見ている。市民を見ていない。基本的には天下りの場である。文化の勉強は3年ではできない。市当局なりが、文化の出来る行政マンを育てていかないと、長期に亘ってやっていくことができないのではないか。人材をやとって、育てていくような仕組みがない。行政サービスの中身の研究が必要。指定管理を取った民間は、本社を見ている。権限が本社に行ってしまい、館で出来た決済が出来なくなる。

衛:制度に合わせて体を作り直す必要はない。

◆民間事業者・去年からある市民会館に入っている方
従来の財団が8名で働いていたが、今は3名。事業は財団が、自分らは運営の部分のみ、というやり方。財団は職員がそのまま残っている。そのような形でやってる。
誰が得したのか。財団がなくなったので、市民に還元されたわけではない。会社も受けたは良いが、儲からない。財団は来年の事業予算が減っていく。ホール代収入が減るので、こちらも儲からない。誰が得しているのか?

草加:直営か指定管理者か、という議論が全体。指定管理の混乱は、法の問題ではなく運用の問題。最終的には納税者がどれだけ指示するかが評価。そこをどう顕在化出来るか。公立ホールの役割は、事業者や財団が儲かるか、ではない。
衛:市民の支持が一番大事。財団はアドヴァンテージをもらっている。制度に合わせて体を作らない方が良い。それをやった瞬間に市民の支持を得るホール劇場運営が出来なくなると思う。自分らのミッションに従ってやるのが、戻ってくるものが大きいのでは。制度に合わせようとするために、非常勤になる。

◆草加氏による最後のまとめ
草加:公立ホールの開館数、開館年次別の数。昭和30年に生まれたホールがいまもある。平成17年のホールは10しかない。あと30年経ったら、日本の公立ホールは朽ち果てる。だから、職も殆どなくなっている。ハードが作られないのと同じように、改修もされていない。いざなぎ景気の後、石油ショックのあと、それぞれ落ち込んでいるが、バブルのあとはそれどころではない状況である。ハードも考えていかねばならない。

[2007年2月15日午前10時~12時、国立オリンピック記念青少年総合センターにて。尚、以上は速記録でテープ起こしではありません。あくまでもセミナーの雰囲気を知るためのメモです。文責は当電子壁新聞では取りかねますので、オフィシャルな発言として流用などは厳禁です。草加様、衛様、ご苦労様でした。]


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公文協アートマネージメント研修会始まる [指定管理者制度]

ええ、今更宣伝もないですが、本日2月14日午後から、代々木のオリンピック記念青少年総合センター(湾岸地区からはなんと行き難いことか)で、「全国公立文化施設アートマネジメント研修会舞台芸術フェア・アートマネジメントセミナー2007」が始まります。詳しくはこちら。一般の方もお金出せば入れます。http://www.zenkoubun.jp/about/kensyuu/18art.html

今、催促が来てる別の原稿をやってて、1時からの井上ひさし氏の基調演説には絶対に間に合わぬ。ヘタすると行けんぞ。明日は「ラ・フォル・ジュルネ」の記者会見があるが、そんなものよりもこっちの方が余程重要だわなぁ。うううん。

                            ※※※

というわけで、基調演説には間に合わなかったけど、行ってきました。これが表の様子。

「芸術情報コーナー」と謳ってはいるものの、先月NYであったチェンバー・ミュージック・アメリカなんぞに比べると、凄く寂しいなぁ。ま、しょーがないけどね。音楽関係の資料が1ダースほどあって、演劇やダンスが中心になる芸術見本市よりは比重が大きかったのはビックリ。今日は館長クラスの「企画を決められる」人が沢山来ていた、ということかしら。だから、地方公共ホールに出し物を売る事務所やイベント屋さん、文化芸術団体が、ブースを出して売り込みをやってるんです。

このイベントがなんなのか、恐らく、殆どの方は訳が判らんでしょう。ぶっちゃけて言えば、文化庁系団体が音頭を取って開催する、日本全国の公共文化ホールの職員や担当者を対象にした研修会です。この組織の広報誌、第22号というのに、小生も原稿書いてます。おお、トランスブルー君も書いてるじゃないの。http://www.zenkoubun.jp/print/geijyutu/geijyutu.html著者名のところをポチョと押すと、PDFファイルが開きます。出来はよろしくない原稿ですが、お暇ならどうぞ。

ちなみに、公立ホールを拠点とした日本の文化行政には、文化庁系、旧自治省系、それに外務省系の3つのラインがあって、それぞれがまるで連絡も関係もなくやってます。ニッポン・ブンカコッカ!いかにもな風景ですな。今日のイベントも、用事で会場から電話した自治省系の関係者は、「あ、今日からやってるんだぁ」という有様でした。
「日本の文化行政の省庁間の縦割り問題」は、これまで誰も議論してないテーマなんですよねぇ。まあ、そもそも予算も少ないジャンルなんで、納税者の関心が皆無だから、しょーがない(日本中の公共ホールで使われる文化予算を全て足しても、某国のミサイル発射を監視する早期警戒機1機分の額にならないでしょう)。

ま、なんにせよ、小生は『地域に芸術団体レジデント、フランチャイズは何をもたらすか』という部会を見物して参りました。いろいろ言いたいことはあるけど、地方ホールの方々はみんな一生懸命勉強なさってます、という認識を新たにし、今日はオシマイ。
この部会に出ていた70名ほどの方々の中には、ホールの指定管理を取った民間企業の方もいるのかしら。それとも、みんな地方文化財団やらホールの直接の職員の方ばかりなのかしら。判らん。

明日は朝の10時から指定管理者導入後の状況報告の部会があるので、出かけます。午後の「ラ・フォル・ジュルネ」の記者会見とハシゴしたら、水星からいきなり天王星にワープするみたいな状況で、頭がクラクラしそうだなぁ。夜はパシフィカQの東京都中央区ショートターム・レジデンシィが始まるし。ううう、考えただけでぐるんぐるんしてきたぞ。


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ウィハンQを勝手に応援します [弦楽四重奏]

昨日だか、当電子壁新聞の小生の個人アドレスに連絡を頂いた方、筑波山麓の研究者さんのようなのですが、メールにお返事しようとしたらなぜか上手くいかず、帰ってきてしまいます。で、その内容を、まんま本日はここに貼り付けちゃいます。

内容を差し障りないように記しますと…
「①幸松氏の新著を読んだので感想をお伝えしたい、連絡先を教えてくれませんか。②やくぺんどんはベートーヴェンの弦楽四重奏の演奏は何を聴いてはりまっしゃろか。③日本語では弦楽四重奏のディスク聴き比べのサイトなどがないので残念じゃ。④ヴィハンQという団体のベートーヴェンのディスクを発見した。どないだんべーかね。」

さても、以下、コメント兼感想。

①皆さん、どんどん感想をお伝え下さい。少しは宣伝になって、当電子壁新聞としても嬉しいです。詳しくはこちらへどうぞ。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20061219どこそこで売ってるのを見たぞ、などという報告がありましたら、どんどんコメント欄に情報下さいな。

②ええ、大きい声で言えませんけど、小生、ディスクは観賞用としては殆ど聴きません。なんせ、佃オフィスにも厄偏庵にも、ホントの意味でのオーディオ装置がない(隣のうちの音が全部聞こえる長屋や安マンションで、オーディオなど不可能です)。幸松先生のお宅のオーディオ装置など、SPからCDまで立派に再生でき、周囲を心配する必要もない環境です。ああじゃないと、とてもじゃないがレコード評論なんてできません。演奏家に対して失礼ですもん。
ですから、ディスクは、情報というか、やってることのデータを知るためにヘッドフォンで拾い聴きする程度なんです。それに手元にあるディスクは、所謂商品となったパッケージのディスクなのか、それとも演奏家がプロモーションや試聴用に作ってるデモテープみたいな録音なのか、よく判らないようなもんばっかり。絶版状態の拙著『弦楽四重奏の名曲名演奏』でも、オライオンQのバルトークの1番だかを注目ディスクに挙げてるけど、あれって、商業盤じゃなくてプロモーション用のお皿でした。スイマセン、売ってないものを出しちゃって。

そんな状況なんで、評論家の先生みたいに「これが推薦」なんてえらそーに言えません。この録音やらこの団体はもっと知られるべきだ、ということで言えば、小生の「皆さん、騙されたと思ってお暇ならどうぞ」ベートーヴェン(一応、CDとして手に入るもの)は以下。あくまでも推薦じゃなく、この演奏はこの団体はもっと知られるべきだけどなぁ、というリストです。

★作品18:ミロQの全曲セット。21世紀に入って猛烈な勢いでルネサンスが起きている作品18は、長期的にみれば、現在40代以降の長老団体による演奏は全てお払い箱になるでしょう。20世紀末から21世紀初頭を風靡したアルノンクール趣味の完成型としてカルミナQに期待してるんだけど、ディスクになるかなぁ。
★作品14:せっかくだから後述のウィハンQ、ホントのオススメはニューミュージックQ。
★ラズモ:曲が強いので余程ヘッポコでない限りどんな団体でも良い(メイジャーな音楽業界とすれば、アルテミスQあたりが21世紀最初の20年くらいの「決定盤」を出してくれないと困るところなんだろうが、今や業界そのものがそういう流れじゃあないですからねぇ)…但し、第3番はニューミュージックQを聴かずに語る無かれ。
★セリオーソ:ちゃんと弾けてる団体はこの世にないかも。
★ハープ:終楽章に向けての流れがきちんと納得できたのは、上海Qが数年前にNY大学でやった演奏だけ。でも、結局、デロスがああいう酷いことになってしまって、録音はなくなった。ううううん。
★後期:イェールQ、作品135は巖本真理Q。
★大フーガ:5年前ならアルディッティQ(苦笑)、と言ったところだけど、今やパシフィカQなんぞ本気に世界一を狙ってるフルタイム若手団体の技術水準は彼らゲンダイオンガク専門家が不要な所にまで来てます。嘘だと思うなら、来週の水曜日に晴海においでなさい。この曲のイメージは、ライブの現状から数年状況が遅れるディスクなんぞでも、この10年で大いに変貌するんじゃないかしら。

③それこそ幸松さんがそういうサイトをやってくださると最強なんですけどね。まあ、日本語というか、世界でもそういうのは無い気がする。狭いマーケットなんですよ。ホントに。

④ウィハン(ヴィーハン、ウィーハン?)Qは、ほぼ毎年日本に来てます。1991年のロンドン国際弦楽四重奏コンクールで、メニューインが舞い上がっちゃった団体です。音楽としては、「スメタナQを最高と思う人は大喜びの、ちょっと古い中欧タイプの弦楽四重奏のテクニカル・モダン・ヴァージョン」です。チェコも、シュカンパQ以降、ヘロルドQやパベル・ハースQに至るまでの新世代は、西側の教育を受けられるようになったプラハの連中、というのが基本です。でも、ウィハンQは、はっきりと保守本流、古い音楽趣味のアップグレード。
大阪国際コンクール&フェスタのコンクール第1部門じゃなくて、なんとフェスタの方に応募して来て(ヴィーハン・クァルテット、という団体がフェスタに出てきたのを見たときには、同じ名前の別団体と思いました)、あの民族楽器団体が圧倒的に優位なフェスタの審査で見事3位に輝いてます。ネタギリギリの、お前らそこまでやるか、って程のえせ民族音楽風「アメリカ」をやらかしてくれたっけ。
正統派の演奏でも日本では絶対にうけると思って、20世紀末頃には拙著を含めあちこちで宣伝したものでした。だけど、招聘しているところが、「日本公演3週間で20回、連日移動でのりうち、本番は「雲雀」か「アメリカ」やって、あとは地元邦人ピアニストとシューマンかドヴォルザークの五重奏やら、地元フルート奏者とフルート四重奏」ってような営業バックバンドをさせてます。彼ら以外にも、チェコの連中でこの音楽事務所のそういう仕事に付き合ってるところがいくつかある。「こういうところから招聘の声があるんだけど、どうでしょうか」と尋ねてきて、「そこはこういう仕事の仕方だよ、金にはなるだろうけど、それで良いんなら結構でしょ」とアドヴァイスした団体もいくつかあります。
はっきりいって凄く勿体ないわけで、プフィッツナーの弦楽四重奏でもなんでもきっちりやってくれ、と言いたい。一度、嫁さんが某横浜の区のホールからアドヴァイスを受けたときに、彼らがたまたま日本にいたものだから、「好きな曲をやってください」と頼んでやってもらったことがあります。なんと、「運命」「未完成」「新世界」みたいな超名曲を並べたヘビーなプロをやってくれましたっけ。そういう人たちなんだぁ、と驚いた。
ともかく、この団体、ベートーヴェンは安心して聴けますよ。まるで抵抗なく聴けるはずです。ちなみに、どういうわけかミューザ川崎が来月の10日に彼らにメインプロをやらせます。演目は「ラズモ3番」、モーツァルトのヴィーンQのニ短調、「雲雀」、それに「アメリカ」です。また超ヘビー名曲プロじゃんかぁ。800グラムのステーキ定食みたい。http://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=27a217b09491f990d23e72fa70bfd9bf

ちゅーわけで、皆さん、ウィハンQを聴きに川崎にいきましょー。川崎のホール、床が傾いてて気持ち悪くなるけど、最近日本以外では流行の「大ホールでも室内楽が出来るタイプのホール」ですから、問題はありません。なお、川崎はどういうわけか、この年末にはアーロンQをやるそうです!良かったねぇ、日本でやるところがあって。

それにしても、中欧系の有力若手って、BやWのオケマンのやっつけ仕事団体に混じって、まるで注目されなままにチョロっと来ちゃうんだよなぁ。構造的な問題だなぁ。うううん。


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佃厄偏庵恒例牡蠣パーティ開催中 [新佃嶋界隈]

酔っぱらいです。現在紀元節午後7時前、佃厄編庵恒例、厳冬の廣島からの牡蠣を喰いまくろーパーティ、現在、路地での第1ラウンドは日が落ちて余りに寒いので、部屋に入っての鍋に移ってます。まだあと3時間くらいはやってますので(明日は嫁さんが仕事なので、11時にには終えるぞ!)、関係者各位、これから来ようという方は、まだ大丈夫。廣島神辺文化会館にいらしたMさんから送っていただいた牡蠣一斗缶、順調に消費されておりますっ。見よっつ。

余りに下手くそな七輪扱いに、お隣の魚河岸ご隠居あにいがお手伝い下さり、瞬く間にふたつの七輪が燃え上がり、路地にまるで炉端焼き屋のような臭いを漂わせているのであーーーる。昨年は小生がグラーツに行っていて出来なかったので、久しぶりだなぁ。

以上、酔っぱらいの報告。あと2時間くらい鍋やってるから、皆の衆、厄編庵にいらっしゃい。

路地住まい 引き戸の前も わしのうち

追記:今、深夜2時前。某オケの首席奏者夫妻が帰っていって、牡蠣パーティも無事に終わりました。ここでいろんな人々が酒飲んで、話していったことが、なにか新しいことに繋がれば良いんだけど…ま、そればっかりは小生には判りません。佃厄偏庵にいらして下さった総計2ダース弱の皆様、有り難う御座いました。今年もまだまだいっぱいありますから、頑張りましょ。そして、廣島のMさん、有り難う御座いました。またゆふいんで。


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佃例大祭への道:第1回 [新佃嶋界隈]

我が銀座東京駅から最も近い田舎佃の名物といえば、なんといっても「住吉神社例大祭」であろー。

3年に一度、佃一丁目全域を御神域へと変貌させ、佃掘から掘り返された柱に歌川広重が「名所江戸百景」の浮世絵に描いたまんまの幟が翻り、八角御輿が大川に飛び込みはたまた勇壮に人工島を練り歩く、江戸東京を代表する祭りなのであるよ。

さても、そんな例大祭まであと1年半と迫った。つまり、半分を切ったわけである。いよいよ「祭りの後」から「次の祭りの前」へとスイッチが入れ替わったわけであーる。

そんなこんなで、本日、佃三丁目町会集会所で、佃二丁目と三丁目の連合臨時町会役員会が開かれた。こんな町内壁新聞に役員会の中身を書いて良いのかどうか、実は全然判らぬ。議題に関しても、多少なりとも面倒な内容なので、世間にばらして良いのか判らぬ。情報の開示という意味では、是非とも書きたいところなんだが、どーなんじゃろか。

ええ、差し障りのない程度のことを記しますと…

皆の衆、お祭りというのはどのような組織で成されるのか、貴方はご存じかね?実は、あたしゃ、知らぬ。知らんままに、一昨年の夏は八角を担いでおった。こちらをどうぞ。
http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20050806
睦ってなんじゃ、町会との関係はどうなってるの、そもそもあたしゃ神道の神事に参加なんぞしていいの…未だに訳の判らんことばかり。

そんな奴が話に参加して良いとはちっとも思えぬのだけど、まあ、勢いでそんなことになってるのだからしかたない。
本日の次回例大祭に向けての最初の集まりは、「新佃嶋」として共通の御輿を担ぐ佃二丁目と三丁目の人工島町会住民が、祭期間中の御神輿運行を仕切っている「睦」という「お祭り現場運営任意団体」とどのような関係を持つべきか、祭りを運営する組織を町会としてどのように立て直していくか、そんなこんな、祭り運営の基本に関わる議論でありました。←だから若い連中が紀尾井ホールでモーツァルトのハイドンセットを全部弾くイベントにも行けなかったんですぅ

ま、ぶっちゃけた話、三丁目町会役員が繰り返したように、「佃例大祭という文化をいかに次世代に継承していくか」という相当に深刻な問題でもあります。お祭りは放っておけば3年に一度いきなり始まるものじゃあない。そこに住んでる連中がなんのかんのやらないと、8月の暑い第1週の週末から月曜にかけて、町内御輿は上がらないし、八角御輿が町内にやって来たときに責任を持って引き受けることすらできない。高層マンションに居住なさる勝ち組の殿上人新住民と、都会の田舎者たる地べたの旧住民の交流が、決して上手くいっているとはいえぬこの佃地区、その本質的な構造にも関わるわけだし。

さああて、この先18ヶ月後、無事に佃二丁目に八角御輿はやってくるのか。スリルとサスペンスの日々が訪れたのであるぞよ。

この新シリーズ、この先も続くか、この1回で終わりになるか。はたまたやくぺん先生が厄偏庵をたたみ、佃の路地を去って、いきなり終了となるか。乞うご期待…なんじゃろかねぇ。


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北千住の若者たちに注目せよ [音楽業界]

東京藝術大学音楽環境創造科学部学生さんたちの、卒論発表会を見物してきました。こちらで宣伝したイベント。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20070206

そもそも「藝大音楽環境創造科」なんて言われても、そんなものがあることをご存じの方が業界内にだってそれほどはおらんじゃろに。北千住キャンパスも殆ど知られてないだろうし。こういうとこ。
http://www.geidai.ac.jp/labs/mce/
せっかくだから、昨年暮れのオープンハウスのときの正面写真。これじゃなんだか判らんなぁ。

ホームページによれば、こんなことをするとこです。
「教育内容としては、1)コンピュータ、録音技術などテクノロジーを活用した音楽・音響表現 2)舞踊、パフォーマンス、民族・古典芸能など身体表現の研究 3)映像表現、演劇、舞台制作・脚本・演出の研究 4)芸術文化政策、アートマネジメント、音楽環境デザイン、音楽文化論など、音楽環境・文化環境の研究、そして、5)それらを支える音楽理論やコミュニケーション技術 の5つの系列を横断的に学ぶことによって、芸術やそれを取り巻く環境を総合的に学習することを基本とします。」

なにしろ、昨年度に初めて卒業生が出たばかりで、今年でやっと2期生。キャンパスは去る秋からで、その前は板東太郎の流れの畔、取手キャンパスに同居していました。学生は学部生が80名ほど、大学院生が15名程度というから、まあ、ちいさな学科ですな。

たかだが20名ほどしかいない学部の卒業生も、上記のso-upという今回のイベントの中身を見て貰ってもお判りのように、中身はバラバラ。所謂メディアアートやらジャンル横断的な創作を実践している奴(世間が「げーだいの学生」と信じているアーティストの卵)、音楽音響創造なる音響や録音技術についてやってる奴(録音技師養成、ではないんだろうけど)、それに所謂アートマネージメント系をやってる奴の3タイプくらいがいるみたい。

小生が直接なんのかんの喧嘩をふっかけられる相手は、最後のグループ、公式ホームページで謳ってる内容なら4と5の生徒さんたちでありますな。そんなアートマネージメント系の卒業生さんらは、特に見せるパーフォーマンスや作品なんぞないんで、地味に研究発表をするしかない。で、本日は4人の卒業生の発表がありました。うちひとりは録音音響系の方だから、アートマネージメント系の学生さんは3人です。

発表後の質疑応答で最低限の意見は本人らに言ってきたので、ここで今更具体的にどうのこうの言い立てることもないわけですが、日本全国納税者諸氏にも関わりがなくはない国立大学(今は独立なにやら…と面倒臭い名前だけど、よーするに我々の税金でやってる大学にはかわりない)なので、一般的な感想を記しておきますとぉ…

●みんな、プレゼンテーションにパソコンを使うのは達者ですねぇ。パワーポイントとか、まるで当たり前の表現道具で使っている。いやはや、スゴイもんだですな。←携帯電話のキーボードが打てないオッサンにこんなこと言われても、なんにも嬉しくなかろーが

●プレゼンテーションとしては、これから発表することが「調査研究の結果」なのか、それとも「自分がたてた仮構の思考装置やら仮説なのか」を、もうちょっと明快にしながら議論していかないと、ギャラリーは混乱します。「調査のための仮説」、「調査結果」、「自分の意見」の区別は常に明快にして発表しましょー。←わしゃ担当教官かぁああ

●どーでも良いことですが、研究発表会は聴衆がせめてコーヒーやらを持ち込んで飲めるような環境でやってくださいな。ひとりあたまの時間は短いからまだいいようなものの、やっぱり4本まとめて聞くとシンドイ。プレゼンテーション用のでっかいスクリーンを使いたかったのであのスタジオAというところでやったんでしょうけど、普通の教室でやってくれた方がギャラリーには有難いです。←これはアンケートに書くことだなぁ

って、マヌケな意見はそれくらい。以下はちょっと本気の感想。本日一生懸命に卒論を発表なさった学生さんたちに対する批判ではありません。そこはご理解あれ。

ええ、全体の発表を聞いての感想は、「音楽環境創造科という学際的な学部は、大学院大学として存在させた方が良いんじゃないかなぁ」に尽きます。
つまり、ここで学部学生さんたちが一生懸命議論したようなことは、やっぱり、社会学とか、経済学とか、ある種の専門性を持った学問を修め、考え方や学問のやり方の基礎や背景を最低限身に付けた上で展開しないことにはしんどいんじゃなかろーか、ということ。(考えてみれば、小生がこれまで付き合ってきたアートマネージメント関係の学生というのは、どれも大学院生以上だった。アートマネージメントをやってる学部学生は知らなかった。だから、学部での議論の水準がどれくらいなのかまるで見当がついていなかった、というのも問題だろーけど。)

例えば、テレビ報道の影響力を論じてくれた今風の青年がおりました。彼の議論は思いっきりデカいテーマで、ある種の社会学の方法論や議論の積み上げを前提にしないと、「学問」とするのが凄く難しいタイプのものでした。ああいう大風呂敷広げちゃうのは、やくぺん先生は大好きだし、若いもんはあれくらいの無茶を言わにゃーいけん。うん。
でも、ヘタすると、巨大匿名掲示板のメディアへの悪口と変わらない内容になりかねない。
ま、正直、根っ子は同じでもいいんだけど、それを「学問」としての普遍的な言説にでっち上げるには、基礎的なテクニックがある。それを学ぶのが大学でやるべきことなんじゃないかしら。学者というのは「学問的な議論をするテクニックを持ったプロの職人」なんだから。「そのレベルの議論は大学院でいい」というのならば、ますます音楽文化創造科は大学院大学に限定すべきでしょうし。

藝大で演奏を習ってる連中がプロの音楽職人であるのと同じように、プロの卵になって欲しいなぁ。直ぐにホールや劇場の現場で働ける人材を養成する専門学校じゃあない、やっぱり学者養成所なんだからね。日本でフランスみたいなアートアドミニストレーティング専門の官僚や役人育成をするなら、藝大じゃなくて、超高級専門学校たる東大の仕事だろうし。

そもそも、18歳くらいの段階で、「わたしはアートマネージメントを学問として学ぼう」なんて積極的なモーティヴェーションを持てる奴が、日本語文化圏に20人もいるなんて、とても想像でない。やっぱり学部の4年間をいろいろ研究なり勉強なりで過ごす中で、「アートマネージメントというものを学問として考えてみよう」と思える奴がやっと数人出るくらいなんじゃないかしら。私はチェロを弾きたい、油絵を描きたい、なんてのとはまるっきり違うわけだもの。

なんにせよ、せっかく壮大な構想で生まれた音楽環境創造科、音楽業界の皆々様、暖かい眼差しと、滅茶苦茶厳しい視線を同時にグサグサ投げつつ、この先を期待しましょうぞ。こういうところで議論を重ねた若者が、トーキョーワンダーサイトなんぞの未来を担うわけですからね。明日明後日も同じ発表がありますので、お暇な方は北千住までどうぞ。


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如月はSQの月 [弦楽四重奏]

昨日、先月末からずっと東京は錦糸町に長逗留してNJPと5回の本番だけをやったブリュッヘン御大の最後の演奏会があって、珍しくもチャリチャリとサントリーに行きました。サントリーホールは、自転車置き場がない。非常に困った会場です!デンマーク人やヴェトナム人なら暴動を起こすでしょう。そのせつは、佃の住民たるやくぺん先生も積極的に暴動に参加したいと思いますです。ちなみに、墨田もこのところ駅周辺の放置自転車撤去ということで、自転車が置きにくくなってます。
環境に優しく、無駄なエネルギーも消費しない自転車が東京ではこれほど冷遇されるのは、東京がコペンハーゲンやベルリンみたいな平らな街じゃあないからなんだけろうなぁ。無論、日本国の経済が巨大な自動車産業に支えられているからなのは、言うまでもない事実ですけど。

もとい。小生らの業種にとって、コンサート会場に行くのは、社交及び仕事の連絡が半分以上です。で、昨晩も会場でまたまた春から仕事がひとつなくなる連絡があり、極めて独特なブリュッヘンとNJPの駆け抜ける哀しみの世界に浸っていたわけでありますな。早く小生もブリュッヘンの境地に至りたいものだ。うん。

あ、そうそう、先頃この電子壁新聞に、雑誌『バンドジャーナル』大高編集長(もー、実名出しちゃいます)の「ブリュッヘンは古楽のフルトヴェングラー」なる至言を記したところ、業界関係者、はたまたオケマンからも「そーいやそーだわなぁ」という反応がありました。
で、昨日の会場での大高編集長、音楽編集界唯一のジャーナリスティックな才覚を発揮し、返す刀で言うよう、「で、アルノンクールが古楽のトスカニーニなら、さしずめノーリントンは古楽のストコフスキーですかねぇ」。以下、爆笑。わああっはっはっははぁ!
ま、ノーリントン氏とすれば、「古楽のビーチャム」と言われた方が喜びそうな気はするけど、あのお下品ギリギリの娯楽系音楽作りは、確かにストコフスキーだわなぁ。表の媒体には書けん。

ううう、また仕事が来なくなりそうなことを書いてしまった…

                            ※※※

さても、ブリュッヘン週間が終わった極東島国の首都とーきょー、ふと気付くと、この週末からクァルテット月間じゃあないの。以下、自分への月末までの動き方のメモを、まんま貼り付けます。クァルテットにご関心のある方は、参考になさってくださいな。

●8日(木)&9日(金):芸大奏楽堂室内楽定期 卒業発表会で、K.387やらメンデルスゾーンの作品44の2やら、いろいろあります。午後6時半からで有料公開です。
●9日(金):イェルサレムQ 武蔵野
●9日(金)&10日(土):紀尾井シンフォニエッタが、あのケルビーニQ(ご存じの通り、EMIが一頃やたらと録音して力を入れていた団体だったが、フィッシャー=ディスカウの息子のチェロがオケに入ることを選んだために解散)以降、ドイツでの室内オケ指揮の帝王になりつつある元第1ヴァイオリンのポッペン氏が、自分の編曲でヴェーベルンのクァルテットを指揮します。これって、作品番号がある方の曲なのか、それとも1908年の奴なのか、どっちなのかしら。なんにせよ、番外編ですな。ポッペン氏という方は、とてつもない場所で会う人で、マニラの日本大使館主催演奏会でいきなりお会いしたことがあります。ホント、驚いた。マニラのユースオケを指導に来ていたという。
●10日(土):テレビマンユニオン主宰で若い連中にクァルテットを組ませてマスタークラスを公開でやるシリーズ、モーツァルト編の発表会。紀尾井小ホールにて2時から。←佃例大祭に向けた最初の二丁目と三丁目の新佃連合町会役員会があるので、小生は行けません。
●14日(水):大倉山 アンサンブル・ステラ
●15日(木):パシフィカQの晴海レジデンシィ始まる。午後5時くらいから銀座のどっか。
●16日(金):パシフィカQ 中央区のどっか
●17日(土):紀尾井H東京Q、津田ホール松尾発表コンサート(フォーゲル、アルモニコ、エク)、文化小ホール日本モーツァルト協会パシフィカQ これがぜええええんぶ2時から。おいおいおい!
●18日(日):フィリアH東京Q
●19日(月):墨田小NJP室内楽シリーズ、王子H東京Q、サントリー小ツェトマイアーQマスタークラス これがぜええええええええんぶ7時から。おいおいおいおいおい!
●20日(火):サントリー小ツェトマイアーQ、トッパンH東京Q、鵠沼室内楽協会パシフィカQ これらがぞぇえええええええええんぶぅう……えええい、もーどーでもいいわい!
●21日(水):晴海第一生命HパシフィカQ、サントリー小ツェトマイアーQ
●22日(木):神奈川県橋本コルビヌスQ←小生はまるでこの団体知りません、全く知らない団体というのも珍しいので興味はある。山根三銃士の山根先生追悼演奏会の日なので行けませんが。
●23日(金):武蔵野 ツェトマイアーQ
●24日(土):横浜のどこかで昼 パシフィカQ、紀尾井午後7時から 20世紀の音楽展 エクが野平さんのSQ弾きます

これ以外も、煩雑になるので挙げてませんが、ゲンダイオンガクの2月らしくあちこちで現代作曲家の新作Qが披露されたりしてますね。

まあ、毎度ながら、業界どおし首を締め合うような日程を作って、わずか300人しかいない東京圏のクァルテット聴衆を奪い合っている姿は、総理大臣を筆頭にあらゆるものがマーケッティングリサーチで動くようになった1990年代後半以降の末期的資本主義ニッポンとは思えぬ、まことに健全な業種だこと(要するに、イェルサレムQと東京QとツェトマイアーQとパシフィカQが一緒に東京にいる、ということです)。いやはや。 


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サーカスの風景 [音楽業界]

仕事関係の某放送局(バレバレ)からのご招待で、サーカスのGPを見物したです。内部撮影禁止だったので、外の風景。日没過ぎの午後5時半開演という不可解な時間設定は、GPだからかしら。

まあ、この壁新聞に宣伝を書いてくれ、という意図ではないだろうし(地下鉄中吊り広告やら自前メディア総動員の大宣伝をやってるロングラン商業イベント)、あたしにサーカス観せてどーなるのよ、でも実券送りつけられちゃってるしなぁ、と、まるで出席簿をチェックされるから行かないと拙い学生気分で、遙々内陸はNHKホールの足下の仮設テントまで出かけたわけです。サーカスよりも、秋にそちらが招聘するチューリッヒ歌劇場の「薔薇の騎士」見物させて下さい、とは言えないしね。

さても、GPというから関係者の内覧会程度のものかと思ってたら、よーするに本番初日前の公開リハーサルというか、実質上本番でありました。関係者はいっぱいいたけど、殆どが普通のお客さんみたい。仮設テントとはいえ千人規模で入るだろうから(今は亡き、かのディズニーランド裏の第一生命ホール、じゃなく、「東京ベイNKホール」みたいな感じの空間。当私設壁新聞読者層なら、某民間事務所がブーレーズの「レポン」やったみたいな場所、と言えば判るかしら)、ガラガラだろうと思ったら、スポンサー企業の招待があったんでしょうねぇ。

会場で面白かったのは、「モントリオール4泊6日の旅ご招待」というアンケートが、なんとコンピューター入力になってたこと。グッヅ売り場の横にパソコンが半ダースほど並んでて、そこにアンケートを入力するんです。これ、処理能力がとても足りないと思うんだけど、他の場所にもあったのかしら。動員数が百万単位のイベントの場合、アンケートのデータ処理を考えただけでも相当の手間と出費になるだろうから、賢いやり方ですね。小生など無縁の巨大イベントでは、こういうやり方が当たり前になってるのかしら。うううん、異業種を見物するのは勉強になるなぁ。

中身に関しましては、よーするに玉乗り、火縄くぐり、ジャグリング、空中ブランコ、トランポリン、集団縄跳び、はたまたピエロ、と伝統的というか、古典的というか、スタンダードな「ほおおお人間の肉体ってこんなことまでできるんだぁ、すっげー」系エンターテインメントを今っぽいパッケージにして並べる。その間に、ロープを用いた三次元バレエとか、テクノロジーと肉体のギリギリを狙った今風の出し物も配されます。なんのかんので2時間半ほどの娯楽パーフォーマンス。見てくれは限りなく京劇風、10日ほども早いけど祝旧正月!という感じ。蛇足ながら、セクシャルなコノテーションはほぼ皆無な健全さなので、おこちゃま連れでも大丈夫です。

いやぁ、勉強になりましたね。ええ、小生なんぞはオペラの解説などで極めて気楽に「オペラとは現存する芸術の全てを取り込んだ総合パーフォーマンスである」なんてしたり顔で書いてるわけですよ。でも、考えてみたら、これまで「スペクタクル」みたいな側面は殆どイメージできてなかった。
ルイ14世の宮廷バレエやオペラなんぞを頂点に、花火やら騎馬隊やらまで動員するスペクタクルとしてのオペラ(英国流なら「マスク」ですな)というものがあることは頭では理解してるし、21世紀の古楽復興が浪漫派では大した仕事をしてないフランスがバッハ以前の音楽を探していったら宮廷スペクタクルだった、で、バロック系の人は盛んに宮廷舞踏など習ってる、なんてことも理屈は知ってはいるけど、「スペクタクル」というものを実際に経験することは殆どない(ヴェローナなんぞ、近くまで行っても見物しようという気にもならんですから)。昨年、オーチャードホールでやったシャトレ座のラモーだかも、実際は現代の創作で、当時のスペクタクルの再現ではないわけですしねぇ。

そんな意味で、現在の我々が接することが出来る興行なり見せ物で、最もそんな「スペクタクル」に近いものって、そおおかぁ、サーカスなんだなぁ、と思わせてくれたですよ。小難しい現代オペラなんぞでも、ホントは音楽じゃなくて「スペクタクル」の要素で強引に見物させちゃってるだけの舞台は多いよなぁ、なんて思ったり。え、T.D先生、なんて申しておりませんよっ!
実際、今日から初日のこのサーカスでは、サイトウキネンで最初に出て、今はパリオペラ座のレパートリーになってて、来年だかには小澤氏の棒でメトが買うことになってる「ファウストのごう罰」のプロダクションで我々がビックリしたあのケベック・シティ拠点の水平面よじ登りパーフォーマンス集団のタイプの壁面上下行が、重要なモチーフとしてあちこちで用いられていました(サーカスというパーフォーマンスの永遠の課題は「人体による重力へのあくなき挑戦」ですもんね)。世界中のサーカスの要素を素材として取り込むこのサーカス団、本拠地がモントリオールだそうなので、当然、繋がりはあるんでしょう。

残念ながら、小生のような商売の人間とすれば、マイクを通した巨大音響でがなりたてられる歌と、ヴァイオリンやらクラリネットやらが入っているけど全てスピーカーのハウリング音色になっちゃうライブバンドの響きに、2時間半耐えるのがしんどかったのは事実。まさかブーレーズ指揮パリ管による馬のサーカス、とは言わぬも…百万単位の動員が必要な興行とすれば、音楽はこういうものじゃあなきゃならんのですかねぇ。
それこそ今をときめくミンコフスキ指揮ルーブル宮音楽隊なんぞが入るなり、モントリオールなら隣のトロントからターフェルムジークを連れて来るなり、そんなものでやれないのかしら。フランス宮廷音楽って、判りやすさとノリの良さでは「のだめ」のベト7どころじゃない、何の素養がない聴衆でも全く抵抗なく受け入れられるものなんだから。フランス系古楽マニアが独占するような高尚なもんじゃない、ホントは極めて大衆的なおバカ音楽なんだから、サーカスにはピッタリだと思うんだけどなぁ。

とにもかくにも、「オペラというものの本来の姿を知りたかったら、現代の最先端サーカスは観ておいても損はない」というお話でした。オペラを論じるつもりのある奴なら、チャンスがあったら、他人にチケットあげるよりも、一度くらいは眺めておけ、ということです。
昨日眺めた超高級サーカスのスタッフをスペクタクル要員に用いて、「ラインの黄金」とか「モーセとアロン」とか、眺めてみたいなぁ。バンコック・オペラのリング・チクルスも真っ青だぞっ!


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