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ウィハンQを勝手に応援します [弦楽四重奏]

昨日だか、当電子壁新聞の小生の個人アドレスに連絡を頂いた方、筑波山麓の研究者さんのようなのですが、メールにお返事しようとしたらなぜか上手くいかず、帰ってきてしまいます。で、その内容を、まんま本日はここに貼り付けちゃいます。

内容を差し障りないように記しますと…
「①幸松氏の新著を読んだので感想をお伝えしたい、連絡先を教えてくれませんか。②やくぺんどんはベートーヴェンの弦楽四重奏の演奏は何を聴いてはりまっしゃろか。③日本語では弦楽四重奏のディスク聴き比べのサイトなどがないので残念じゃ。④ヴィハンQという団体のベートーヴェンのディスクを発見した。どないだんべーかね。」

さても、以下、コメント兼感想。

①皆さん、どんどん感想をお伝え下さい。少しは宣伝になって、当電子壁新聞としても嬉しいです。詳しくはこちらへどうぞ。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20061219どこそこで売ってるのを見たぞ、などという報告がありましたら、どんどんコメント欄に情報下さいな。

②ええ、大きい声で言えませんけど、小生、ディスクは観賞用としては殆ど聴きません。なんせ、佃オフィスにも厄偏庵にも、ホントの意味でのオーディオ装置がない(隣のうちの音が全部聞こえる長屋や安マンションで、オーディオなど不可能です)。幸松先生のお宅のオーディオ装置など、SPからCDまで立派に再生でき、周囲を心配する必要もない環境です。ああじゃないと、とてもじゃないがレコード評論なんてできません。演奏家に対して失礼ですもん。
ですから、ディスクは、情報というか、やってることのデータを知るためにヘッドフォンで拾い聴きする程度なんです。それに手元にあるディスクは、所謂商品となったパッケージのディスクなのか、それとも演奏家がプロモーションや試聴用に作ってるデモテープみたいな録音なのか、よく判らないようなもんばっかり。絶版状態の拙著『弦楽四重奏の名曲名演奏』でも、オライオンQのバルトークの1番だかを注目ディスクに挙げてるけど、あれって、商業盤じゃなくてプロモーション用のお皿でした。スイマセン、売ってないものを出しちゃって。

そんな状況なんで、評論家の先生みたいに「これが推薦」なんてえらそーに言えません。この録音やらこの団体はもっと知られるべきだ、ということで言えば、小生の「皆さん、騙されたと思ってお暇ならどうぞ」ベートーヴェン(一応、CDとして手に入るもの)は以下。あくまでも推薦じゃなく、この演奏はこの団体はもっと知られるべきだけどなぁ、というリストです。

★作品18:ミロQの全曲セット。21世紀に入って猛烈な勢いでルネサンスが起きている作品18は、長期的にみれば、現在40代以降の長老団体による演奏は全てお払い箱になるでしょう。20世紀末から21世紀初頭を風靡したアルノンクール趣味の完成型としてカルミナQに期待してるんだけど、ディスクになるかなぁ。
★作品14:せっかくだから後述のウィハンQ、ホントのオススメはニューミュージックQ。
★ラズモ:曲が強いので余程ヘッポコでない限りどんな団体でも良い(メイジャーな音楽業界とすれば、アルテミスQあたりが21世紀最初の20年くらいの「決定盤」を出してくれないと困るところなんだろうが、今や業界そのものがそういう流れじゃあないですからねぇ)…但し、第3番はニューミュージックQを聴かずに語る無かれ。
★セリオーソ:ちゃんと弾けてる団体はこの世にないかも。
★ハープ:終楽章に向けての流れがきちんと納得できたのは、上海Qが数年前にNY大学でやった演奏だけ。でも、結局、デロスがああいう酷いことになってしまって、録音はなくなった。ううううん。
★後期:イェールQ、作品135は巖本真理Q。
★大フーガ:5年前ならアルディッティQ(苦笑)、と言ったところだけど、今やパシフィカQなんぞ本気に世界一を狙ってるフルタイム若手団体の技術水準は彼らゲンダイオンガク専門家が不要な所にまで来てます。嘘だと思うなら、来週の水曜日に晴海においでなさい。この曲のイメージは、ライブの現状から数年状況が遅れるディスクなんぞでも、この10年で大いに変貌するんじゃないかしら。

③それこそ幸松さんがそういうサイトをやってくださると最強なんですけどね。まあ、日本語というか、世界でもそういうのは無い気がする。狭いマーケットなんですよ。ホントに。

④ウィハン(ヴィーハン、ウィーハン?)Qは、ほぼ毎年日本に来てます。1991年のロンドン国際弦楽四重奏コンクールで、メニューインが舞い上がっちゃった団体です。音楽としては、「スメタナQを最高と思う人は大喜びの、ちょっと古い中欧タイプの弦楽四重奏のテクニカル・モダン・ヴァージョン」です。チェコも、シュカンパQ以降、ヘロルドQやパベル・ハースQに至るまでの新世代は、西側の教育を受けられるようになったプラハの連中、というのが基本です。でも、ウィハンQは、はっきりと保守本流、古い音楽趣味のアップグレード。
大阪国際コンクール&フェスタのコンクール第1部門じゃなくて、なんとフェスタの方に応募して来て(ヴィーハン・クァルテット、という団体がフェスタに出てきたのを見たときには、同じ名前の別団体と思いました)、あの民族楽器団体が圧倒的に優位なフェスタの審査で見事3位に輝いてます。ネタギリギリの、お前らそこまでやるか、って程のえせ民族音楽風「アメリカ」をやらかしてくれたっけ。
正統派の演奏でも日本では絶対にうけると思って、20世紀末頃には拙著を含めあちこちで宣伝したものでした。だけど、招聘しているところが、「日本公演3週間で20回、連日移動でのりうち、本番は「雲雀」か「アメリカ」やって、あとは地元邦人ピアニストとシューマンかドヴォルザークの五重奏やら、地元フルート奏者とフルート四重奏」ってような営業バックバンドをさせてます。彼ら以外にも、チェコの連中でこの音楽事務所のそういう仕事に付き合ってるところがいくつかある。「こういうところから招聘の声があるんだけど、どうでしょうか」と尋ねてきて、「そこはこういう仕事の仕方だよ、金にはなるだろうけど、それで良いんなら結構でしょ」とアドヴァイスした団体もいくつかあります。
はっきりいって凄く勿体ないわけで、プフィッツナーの弦楽四重奏でもなんでもきっちりやってくれ、と言いたい。一度、嫁さんが某横浜の区のホールからアドヴァイスを受けたときに、彼らがたまたま日本にいたものだから、「好きな曲をやってください」と頼んでやってもらったことがあります。なんと、「運命」「未完成」「新世界」みたいな超名曲を並べたヘビーなプロをやってくれましたっけ。そういう人たちなんだぁ、と驚いた。
ともかく、この団体、ベートーヴェンは安心して聴けますよ。まるで抵抗なく聴けるはずです。ちなみに、どういうわけかミューザ川崎が来月の10日に彼らにメインプロをやらせます。演目は「ラズモ3番」、モーツァルトのヴィーンQのニ短調、「雲雀」、それに「アメリカ」です。また超ヘビー名曲プロじゃんかぁ。800グラムのステーキ定食みたい。http://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=27a217b09491f990d23e72fa70bfd9bf

ちゅーわけで、皆さん、ウィハンQを聴きに川崎にいきましょー。川崎のホール、床が傾いてて気持ち悪くなるけど、最近日本以外では流行の「大ホールでも室内楽が出来るタイプのホール」ですから、問題はありません。なお、川崎はどういうわけか、この年末にはアーロンQをやるそうです!良かったねぇ、日本でやるところがあって。

それにしても、中欧系の有力若手って、BやWのオケマンのやっつけ仕事団体に混じって、まるで注目されなままにチョロっと来ちゃうんだよなぁ。構造的な問題だなぁ。うううん。


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