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初台の《ヴァルキューレ》はあれこれ「画期的」なのじゃ! [音楽業界]

家の撤収、オフィス引っ越し騒動もいよいよホントにギリギリのタイミングになってきているなか、311災害10周年とはまるで無関係に、初台の「ヘルシンキ版フリードリッヒ《リング》」から《ヴァルキューレ》のみの単独再演初日があり、なんのかんので珍しくも芸術監督というこの劇場の書類仕事をなさっている方が指揮をなさるというので、出かけて参りましたです。

チケット発売が日本とは思えないギリギリだったのだけど、それでもキャストが決まっておらず、結果としてこんなことになった。
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そー、一部の専門家マニア筋では「こんなの学生オペラ発表会以外では観たことない」と呆れ驚かれた、ジークムントが1幕と2幕で別のキャスト、という世界の主要国首都の国立オペラハウスとしては空前、画期的なダブルキャストとなった次第でありまする。

ま、正直、やくぺん先生とすれば、引っ越し疲れの合間に一服の清涼剤、1幕後半と2幕の死の告知から先、それに最後の最後でりーう゛ぉーーーーる、と叫んでるのを眺め気分転換をはかり、完璧睡眠のつもりで€70弱くらい払って天井桟敷まで登ってったわけでありまする。もう、まるっきり根性座ってない、無責任聴衆じゃわい。

とはいうものの、ヴァーグナーはヴァーグナー。1幕のイタリアオペラみたいにリリカルなジーグムントさん登場から冬の嵐が過ぎ去るくらいまではガッツリ寝てしまったけど、2幕の夫婦喧嘩は北京のカラヤン演出再現版以来の立派なフリッカ奥様ですっかり起きてしまい、その後も根性入らないままにダラダラ眺めてしまいました。メイジャー劇場では画期的な主役級歌手の二人での歌い分け、思ったよりも違和感ない、というか、違和感たっぷりなんだけど、「名前すら定かではない男が、ジークムントと名告った瞬間から人が変わったように決然とした立派な男となった」って話が妙に納得がいくキャラクターの変化で、マジ、ヴァーグナーのテノールが常に人材不足なのを逆手に取って意図的にそういう演出をやってみるのもあり得るんじゃないか、と本気で思わされた次第。いやぁ、べんきょーになるなぁ、我らが初台のハウス。

もうひとつ、このプロダクションの画期的なところは、「途中休憩でロビーでの一切の飲食禁止、主催者側からの飲食提供一切無し」というストイックなご決断。なんせ、ヴァーグナーといえば、「幕間に何を喰らうか」が最大の議論となるわけで、当電子壁新聞でもレギュラーで取り上げているネタでありまする。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2009-04-09
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-11-30

会場に水すら売っていない状況で、どうやってこの長丁場を乗り切るか。現実問題、持ち込んだペットボトル飲料を隅っこでこそこそ飲んだりしていても、レセプショニストさんが吹っ飛んでくるようなことはなかったようだとはいえ、やはりねえ。

で、みんな散々困り、向かいのカレー屋さんやら蕎麦屋さんに突っ走る、コンビニに行列作る
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等々。それにしても、45分の幕間、ホールのロビーになんにも売ってないヴァーグナーって、ホントに前代未聞であります。どの主催者も、この時間を利用していかに売上を伸ばすかで頭を捻っているってのにさぁ。

初台の《ヴァルキューレ》、フリードリッヒ御大の「瞬間瞬間の場面はそれなりにきっちり筋が通るように処理されているけど、全体として何をやりたいか今ひとつ判らぬ」最晩年の《リング》の一端を眺め、画期的な舞台に触れるまたとない機会でありましょうぞ。客席半分(でも、ひとり空けじゃない)ながら、最終日はまだお高い切符が残っているとのこと。お暇な方は、是非どうぞ。

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