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大物求人出ましたぁ [音楽業界]

関東圏の音楽業界関係者、30前の現場職員諸君、久しぶりに、ほんとーに久しぶりに、かなり大きな求人が出ました。

三鷹です。詳しくは、こっちを見てください。http://mitaka.jpn.org/info/recruit.php

もーぶっちゃけて言っちゃえば、「風のホール」立ち上げからずっと三鷹で制作業務をこなし、大きな財布をバックにお安いお買い物をする三鷹駅反対側の武蔵野市民文化会館とはまるで性格が違う、ここ以外ではあり得ない様々な独自の企画(三鷹市出身の沼尻氏率いる東京モーツァルトプレイヤーズ育成、茂木企画、等々)をプロデュースし現場を支えてきたA氏が、別の場所に栄転することになった後任です。
欧米及びアジア英語圏とは異なり、業界内キャリアアップの道が確立されていない日本のクラシック音楽裏方界では、このような栄転は非常に珍しい例です。ぱちぱちぱちぃ、ご苦労様でした、Aさん。貴方の現場での頑張りがなければ、今の「風のホール」はなかったでしょう。

さても、世界中のクラシック音楽裏方青年たちよ、相当な実力を要求される場所ですけど、やりがいはある筈ですよ(なにせ直接の地域ライバルは、日本一の業界カタログショッパー、武蔵野の2代目文化担当K氏ですから)。ふるってご応募下さいな…って、いくら超びんぼーな業界とはいえ、ギャラがちょっとなぁ。うううん。


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目覚めよ、目覚めよ、汝ら花々… [演奏家]

『ストリング』編集部にミドリのヴェトナム・ツアー原稿についての打ち合わせに行くべく荻窪駅を出たら、携帯がブルブル震えた。メールが2通。嫁さんからと、若きアマチュア指揮者の侒婆砂君から。内容は両方とも同じで、「ヘフリガー翁がお亡くなりになりました」。

そろそろオッサンからジジイに足を突っ込むくらいの歳になると、今の自分の有り様を決定してくれたいろいろな人がいなくなっていく。で、あるときから、そういうことには鈍感になろうとする。人の死を心から悼めるのは、若者の特権なのだ。若者よ、先達の訃報に大いに涙したまえ。わしらジジイ予備軍には、もう流す涙もない。残念ながら、あたしらは年中泣いてはおられぬ。

とはいえ、ヘフリガーという言葉の芸術家と短いながらも過ごせた時間には、昨日のように覚えている瞬間もある。サントリーホールのオープニングシリーズで、ケント・ナガノがNJPで日本デビューしたときの「大地の歌」。Pブロックに近い下手側があんなに人の声が聴こえない会場だなんてチケット購入時には知る術もなく、嫁さんとふたりで猛烈にフラストレーションばかりを溜めていたあの演奏会。ヘフリガー御大の横顔を延々と眺める1時間。音よりも、声よりも、大オーケストラの咆吼を背負って座っている翁の姿。声のアーティストの記憶が、ただ座っている絵という情けなさよ。

ヘフリガー翁に最期に接したのは…調べてみたら、1997年の5月。もう10年も前のことになるんだなぁ。大植英次指揮するミネソタ管の「グレの歌」で、当時えーちゃんがベートーヴェンの協奏曲チクルスをやっていたアンドレアスのパパが遙々舞台に登場し、この巨大な世紀末タブローの最後の最後で喝采をさらってしまったっけ。音程のある歌ではありません。そう、あの、語り、「ヘル・ゲンセフス…」で始まる、最後のシュプラッヘシュティンメ。声の芸とは音程の正確さじゃあない、なんて当たり前のことを痛感させてくれた、あの言葉たち。どんな巨大な音響よりも遙かに雄弁だった、冬の終わりの宣言。"Erwachet, erwachet, ihr Blumen, zur Wonne!"

終演後のパーティにも、ヘフリガー老はいたはずなのだけど、ご挨拶することは能わなかった。なにしろシェーンベルクの息子さんという伝説の方の側に座らされて、すっかり緊張してしまい、ガラにもなくどうしていいか分からなくなっちゃってたもんでね。

恐らく、ヘフリガー氏の最期の録音も、ロバート・クラフト指揮する「グレの歌」の語りなんじゃないかしら。最期にステージで聴いた声楽家エルンスト・ヘフリガー氏の声が、ドイツ語と生涯対峙してきたテノールが年齢を重ねた結果でなければ発すること不可能な「語り」だったのは、聴き手として最高の幸福だったのかも。

「目覚めよ、目覚めよ、汝ら花々、喜びへと!」


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若者たち・Part2 [音楽業界]

来る水曜日21日は、なんだか知らぬが昼間の演奏会が山のようにあり、あちこちでバッティングし取材やらご招待を断らねばならぬ羽目に陥っております。取材依頼やらなんやらで小生に関係あるコンサートだけを列挙してみても…

・上野の森美術館VOCA展ミュージアム・コンサート←来年はMIMで取材します、ゴメン
・新日本フィル「ローエングリン」←キャストに先頃コペンハーゲン歌劇場で見物した顔もいるなぁ
・SQWプレアデスQ←このシリーズ始まって以来、唯一のマチネー公演でありますな
・西新井文化ホール・スチューデントプロデュース白石光隆コンサート

って、まあこれだけ、地味に派手に並んでる。他にも、新国立劇場「運命の力」、東京のオペラの森「タンホイザー」、こんにゃく座「森は生きている」、東フィル、神奈川フィル、日フィル「カルミナブラーナ」、バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲」、東京バッハ合唱団「マタイ受難曲」、かずさアカデミア記念コンサート、チャールズ・ナイディック夫妻セミナーコンサート、わせおけ…。なんなんでしょうね、これは一体。まあねぇ、季節柄マタイがいっぱいあるのはしょうがないでしょうけど、その上でヴァーグナーのデカイものとヴェルディのデカイものを一緒にやってるんだから、トーキョー圏でいまさらフェスティバルなんてやる必要なんぞ、サラサラないですな。

さても、そんな中で、最も地味そうなんだけど紹介しておきたいコンサートがあります。西新井の駅から徒歩数分の西新井文化ホールで開催される、「スイッチピ!あのコンサート」なる素っ頓狂な題のコンサートです。

この演奏会は、西新井文化ホールを拠点に活動している(財)足立区生涯学習振興公社が主催する、所謂「公共ホールの自主公演」なんですけど、想像付く方にはお判りのように「素人の学生さんが制作するコンサート」なんですわ。財団側が演奏家と会場を用意し、地域の学生さんに呼びかけて演奏会を造り上げて貰う、という企画。晴海のNPOトリトン・アーツ・ネットワークが過去に2度吉野直子さんでやった「高校生プロジェクト」をヒントに、足立区の文化財団の方が是非ともうちもやってみたいと、昨年の前半からいろいろと準備した。その本番が21日ということであります。説明が面倒なんで、このホームページを見てください。ちょっと殺風景なページだけどねぇ。
http://www.kousya.jp/bunka/nishiarai/student/index.html
中身はこっち。http://www.kousya.jp/bunka/nishiarai/event/070321.html いろいろ説明するより、担当広報からの案内を貼り付けちゃいます。えいっつ。ちなみに、「スイッチピ!…」ちゅー、背筋が寒くなってとても口に出来ないようなコンサートのタイトルも、10代後半のお嬢さんたちが一生懸命頭を捻って、議論して、インパクトのある題名として考えたそうな。うううん、なるほど、そーかぁ、わしゃオッサンであると証明されたわけだな。ついでに、業界的な視点として、こちらもどうぞ。
http://blog.goo.ne.jp/shink_2006/e/da9239f6c749b651288c4c454eaf559e

                          ※※※

                 「スチューデントプロデュースコンサート」
                  私たちが発電所!学生からあなたに
                     スイッチ ピ!あの コンサート
出演:白石光隆(ピアノ) 公演日:平成19年3月21日(水・祝)15:00 会場:西新井文化ホール

                          ご案内
春分の季節、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。日頃より格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、いよいよ3月21日(水・祝)に西新井文化ホールにて「スチューデントプロデュースコンサート スイッチピ!あのコンサート」を開催いたします。
このコンサートは、企画・制作・広報・運営などすべて高校生、大学生の若い世代が行うという企画です。約10ヶ月かけて、私たちの手で一からコンサートを創り上げます。
昨年の5月から、参加者募集のポスター制作や、コンサートのコンセプトづくりなど、白石さんからのアドバイスをいただきながら、週一回のミーティングで話し合いを進めてきました。
今回、皆様にはぜひこのコンサートにお越しいただき、「大人」の皆さんが作る一般のコンサートとは、ひと味もふた味も違うコンサートを楽しんでいただきたいと思います。(中略)多くの皆様に私たちの作ったコンサートへご来場いただきたいと思っています。

日時:平成19年3月21日(水・祝)15:00開演(14:00開場)
会場:ギャラクシティ西新井文化ホール(東京都足立区栗原1-3-1)
問合せ:(財)足立区生涯学習振興公社 文化事業課
℡:03-3850-7931 Fax:03-5831-8660 e-mail:bunka@kousya.jp
担当:遠田・中山

                           ※※※

先鞭を付けた晴海のNPOは、運営予算の問題などで次回の開催が未定になっておりますので、このような試みが各地の公共ホールに飛び火し、あちこちでやられるのは素晴らしいですね。実は、このような企画、冷静に考えるとなかなか公共団体が主催するのは難しいんですよ。だって、「一般の人、ましてや高校生や大学生を公募し、(少額足りとはいえ)公的な予算を差配する裁断を任せる」わけですから。民間のNPOやら企業が勝手に金を使うならともかく、公的な資金で運営される地方公共ホールの財団の場合には、想像を絶するいろんな面倒なことがあるんだろーなぁ。こういうことをやろうとするスタッフには、ホントに頭が下がりますね。だって、世間は有名演奏家を買ってきて近くの公会堂で廉価で公演してくれれば喜ぶわけで、こんな手間暇だけはかかることやってくれなんて誰も言わないんだから。

去る12月20日、ヴェトナム出発前日だかの猛烈に慌ただしい頃に、白石さんを交えた学生プロデューサーさんたちの記者発表会があり、見物に行って参りました。その様子も、上のウェブから眺められると思います。せっかくだから、そのときの写真を貼り付けて、若者たちの奮戦振りの一端を感じ取っていただきましょうか。

記者たちはステージ上に引っ張り上げられ、実際に21日の演奏会で行われる白石さんお得意の「ピアノ三枚下ろし」を実演してます。向こうにずらっと並んでる制服の女の子たちが、この演奏会のプロデューサー軍団です!みんなすましちゃって、ホントはどんな奴らなのか全然わからなかったぞ!

21日午後、足立区近辺で暇してる方は、ぶらりと見物に行ってあげてくださいな。これだけいっぱい演奏会がある日に、わざわざ地元のピアニストを聞きに行くなんて、足立区民冥利に尽きるでしょ。「ラ・フォル・ジュルネ」1公演分1500円也で、3倍の長さで内容も数倍の演奏会が地元で聴けますよ。


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パブリックビューイングが出来ないわけ [音楽業界]

税務が忙しい最中、「東京のオペラの森」ちゅー「の」がやたらと入るけったいな題のイベントの、メインとなるオペラ以外の取材をずっとやってます。本日も、ホルン塚田&フォルテピアノ小倉夫妻によるレクチャーコンサート「ホルンの進化」を見物してまいりました。場所は鯨が泳ぐ国立科学博物館。取材は媒体2つで、ひとつはイベントが全部終わらないうちに入稿せねばならん。ま、そんなこんなで中身について書くことは出来ませんので悪しからず。

舞台となってる上野の山は、暖冬で今日辺りからお花見のビールの臭いが漂うころであろうと想定されていたらしく、すっかり花見体制になってます。でも、桜はまるっきり咲いてません。ちらりほらりの早咲きに、人がわんさとたかってる。

先週の古部氏による「オーボエの歴史」では差し入れに「みはし」のあんみつ抱えてったから、今日はやっぱりトラッドに上野広小路は「うさぎや」のどら焼きでも、とチャリチャリと立ち寄ったら、なんともの凄い列。そりゃ名店だけどねぇ、行列をして何かを買うという作業に限りない恥ずかしさを覚える小生としましては、さっさと見切って、チャリチャリと湯島坂下の「つる瀬」にまわり、この時期の名物「ふく梅」買って、本番前のご夫妻の楽屋になんとか届けましたとさ。あの「ふく梅」って和菓子、上にのってる梅を見るだけで口の中がパブロフの犬状態になるのが困るなぁ。

そういえば、あの坂の上で実相寺監督のお葬式があって数ヶ月。嫌でも梅が咲き、春が来る。

って、暢気してる場合ではない。ええ、この「オペラの森」というイベント、期せずして同じ年に始まった「ラ・フォル・ジュルネ」と比較されることも多いですけど(両方とも一見東京都が絡んでるみたいに見えるところも同じ)、性格はまるで違いますね。
有楽町が「クラシック音楽の舶来スーパーマーケット」で、構造的に薄利多売の不可能な商品を、大量仕入れ・大量宣伝・大量販売で、どこまで廉価で大衆にさばけるかが課題。音楽マーケットそのものを変革しようとする意欲、大いに誉めるべし(正直、小生にはまるで興味ないテーマだけど)。「カルフールのクラシック音楽版」とまでは比喩せぬも、ま、そんな感じ。「コルボのフォーレ」なんて目玉商品がちゃんとあるのは、東雲のイオンにも「百年の孤独」揃えてます、みたい。
一方の「オペラの森」は、「スターを中心に据え世界に売れるプロダクションを一本制作する」という旧来の音楽業界的価値の頂点を極めようとするイベント。古いやり方、といえばそれまでです。当然のことながら、クラシックのライブイベントは多売は出来ませんから、メインのオペラに接することができる人はたかだか6000人弱しかいない(国際フォーラムなら一番デカイ会場の1回公演分でしょ)。それじゃあイベントとして困る。で、上野の山の様々な文化施設を巻き込んだ室内楽やら、レクチャーやら、絵本の読み合わせやら、はたまた落語タンホイザーやら、「オペラの森イベントウィーク」と称してやってるわけです。小生の取材はそこの部分。いつもながら、手間と暇ばかりがかかる地味なとこ拾ってます。

さても、「オペラの森」をイベントとして考えるならば、現代のテクノロジーを以てすれば、ライブのオペラを一気に大衆動員イベントにする方法があるのは誰でもお判りでしょう。そー、所謂「パブリックビューイング」という奴。よーするに、「ライブでやってるオペラ公演や演奏会を、そのままライブで中継し、野外巨大スクリーンなどに投影してみんなに廉価若しくは無料で見物させる」というやり方。これをやれば、一気に大衆動員イベントになり得るわけですよ。
なんせ、今の季節の上野の山に何台かヴィデオを据えて、文化会館でやってるオペラなりオーケストラ公演なりを国立博物館の中庭やら、西洋美術館の表やら、噴水の前の交番のあたりにでかいスクリーン立てるやらすれば、たちまち動員数は十万単位になる。ってか、桜見物の通りすがりの人もすべて「オペラの森」が動員した、とクライアントやスポンサーに向かって胸を張れる(有楽町から東京地下駅に抜ける人を全部参加者と数えちゃう国際フォーラム方式ですね)。すご~いでっかいイベントになるじゃないの。

なーんて妄想を抱きつつ、「どうしてパブリックビューイングしないの」と、このイベントウィーク担当者I氏に尋ねました。ま、ジャーナリストとして当然の質問です。
本来は何かのメディアに発表せねばならぬのでしょうけど、小生がこのイベントについて持ってる媒体は「フェスティバルの構造」について論じることを求めてないので、どちらにも記せない。で、同じ疑問を抱いてる方も多いでしょうから、この電子壁新聞に記します。以下がお答え。

「その話は毎年持ち上がるんです。でも、不可能なんです。理由は、このオペラが海外との共同制作で、映像収録権や放映権がとても複雑になっていること。そのため、パブリックビューイングみたいなことが出来ないんです。私もやりたいんですけどねぇ。(東京のオペラの森関連イベントウィーク担当I氏)」

うううん、なんかいろいろ難しい大人の事情がある、ということですな。
ま、この新演出映像独占収録料があるから制作費や演奏家のギャラが出せているのだろうし、同水準のゼンパーオパーやらリンデンオパーやらメトやらの引っ越し公演に比べ、庶民感覚として高いとはいえ、それでも数万円安いチケット料金に設定出来てるのだろう。そんなことは、オペラのプロデュースについて最低限の知識がある奴ならば誰だって想像がつく。なーるほど、しょーがあんめえなぁ、とは思える説明ではあります。

というわけで、「東京のオペラの森」は、大衆動員という点ではポッカリと真ん中に穴が開いたみたいに上野のお山で開催されております。都響のアンサンブルによる都美術館での室内楽演奏会、あと2回ありますから、上野へどうぞ。今後「タンホイザー」上演史を語る上で不可欠のひとつとなるであろうカーセン新演出は、バスチーユでは12月上旬に出ます。見物なさりたい方はクリスマス買物兼ねてパリへどうぞ。あそこはデカイから、上野よりもチケット入手は楽な筈ですよ。


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あんさんなにそんなにおこってはりまっか? [音楽業界]

久しぶりにまともな時間に夕刊などという紙媒体を拝読していて、興味深い記事に眼が釘付けになりました。文化欄ですから、ウェブには上がらないでしょう。東京の音楽業界の方にはお馴染み、朝日新聞文化部の吉田純子記者のクリーンヒット、ちゅーか、ピッチャー強襲内野安打、というか、振り逃げホームラン、かも。

本日、3月16日、朝日新聞東京夕刊7面文化欄です。「クラシック演奏会トラブル急増~キレる客対策、業界本腰」というなんとも刺激的な題です。ほーれ、読みたいでしょ。今、夜の9時前、まだ駅のキオスクなどは閉まるギリギリですけど、売ってると思いますよ。コンビニって夕刊あるんだっけ。ええ、浜離宮朝日ホールのロビーには、その日の朝日夕刊が山積みになってもってけどろぼー状態になってますけど、あんな場所は他にはないでしょうね。築地の朝日東京本社も、壁新聞にして貼ってる場所はなかったような気がするなぁ。聖路加の向こうの日刊スポーツは、ベタベタぁって貼りだしてますけど。

知ったような東京の業界関係者ばかりが次々登場するその内容、纏めれば以下。
①半年くらい前から、携帯のアクセサリーの音がうるさいの、チラシが煩いの、主催者に詰め寄ったり、終演後に喧嘩になってる客が目立つようになってきた。最近は常連客が突如キレる。
②ここでNJPのK氏登場!精神科の先生が、最近の聴衆はヘッドフォンで密閉した状態で音楽を聴くのに慣れているからでは、と分析。
③オケや主催者ではいろいろ対策に頭を悩ましている。東フィルの名物広報(おお、今は渉外部長ってポストなのか)M女史が、ちょっと前から業界内で大問題になってる「東フィルの演奏会ではチラシを撒かせない」(自前のチラシの挟み込みはOKらしいけど)というポリシーについて弁舌を振るう。他にも、ジャパンアーツ、シティフィル、オケ連などの対応について列挙。
④大フィルの事務局の方の話(なぜかソース名なし)として、「大阪では主催者を巻き込んでのトラブルはほとんどきかない」というオチ。

いやぁ、オチが痛快ですね。つまり、「東京では文句があるとキレる幼児化現象が進んでいるのではないか」っちゅー、限りなくネット上の繰り言に近いエッセイだもの。編成さん、よくこの原稿でOK出したなぁ。小生が編成デスクだったら、全面ボツにするか、せめて最後の部分はなんとかしろ、と突っ返すでしょうね。いやぁ、書いた方も通した方も、あんたら偉い!
新聞という媒体は、原稿の絶対量が小さいため、事前に結論を設定しコメントを取るのが普通です。ですから、この大フィルの方みたいな書き手が予想もしていなかったようなコメントが来ると、嬉しくなってオチにしたくなっちゃうんですよねぇ。書き手の気持ちは手に取るように判るぞ、うん。

「演奏会でキレてるいい大人」ということなら、小生も数週間前に似たような経験をしましたっけ。お昼のコンサートで、ピアニストの小山さんの演奏会だったんだけど、小生の並びに座ってたオッサンが、1曲目が終わったとたんに、後ろに立ってるレセプショニストさんのところに吹っ飛んでって、ビニール袋だかをカサカサさせる音がうるさい、とくってかかってます。アヤシイオッサンがおるなぁ、と思って注意してたら、なんだか凄く神経質な方のようで、最後のショパン作品22では前半のアンダンテで周囲の客席に余程気にくわないことがあったらしく、いきなりアンケートの紙を引っ張り出し、カリカリ音を立てて一生懸命なんか書き始め、大いに盛り上がるポロネーズの間中も必死にお書きになってる。おじさんおじさん、本末転倒ちゃうんない?、と肩を叩いてさしあげようかと思ったけど、そんなことしたらかえってげきこーするじゃろなぁ、と、微笑ましく(些か呆れて)眺めておりましたとさ。

客席でのレギュラークレーマーというのは、聴衆の皆さんはご存じないでしょうが、昔から札付きの人が常に何人かおり、業界中に要注意情報が流布してます。今もあります。そんな情報が出まわってるなんて、本人は想像だにしていないでしょうけど、狭い業界ですからねぇ。でも、この吉田記者の記事は、「普通のまともな聴衆が、最近、いきなりキレ出した」という①の部分が重要みたい。

ううううん、そーかなぁ。ま、彼女はそう思ったんだろうなぁ。②の精神科の先生の分析は、まあテレビのワイドショーのコメンテイター程度のトンデモ見解と思っておくべきでしょうね。コメントを求められて、その場で適当に言いつくろった感がありありのご意見、ご苦労様です。③の各論は、へええ、勉強になるなぁ。それにしても原稿のテクニックとすれば、④で落としちゃっていいんかね!いやはや。

この話を読んで思いだしたのは、未だに東京の業界に伝説として流布している「朝比奈隆演奏会フライングブラボー男リンチ未遂事件」ですな。内容は、述べたまんま。サントリーホールでの朝比奈御大の東京公演で、曲が終わった直後の音の余韻に浸っていたいときにブラボーを叫んだ男が、終演後にPブロック裏の人目につかないところに連れ込まれ、音楽を静かに聴きたいファンらから殴る蹴るの暴行を受けそうになって、スタッフが必死に止めに入った、という想像するだにおっそろしい事件です。

これ以上書いていると誰もコンサートに来なくなりそうなので、もう止めましょ。なんであれ、吉田記者の記事、図書館ででも読んでみて下さいな。

追記:なんと、この記事、ウェブに上がってます。なぜか記者の著名はウェブにはありません。http://www.asahi.com/culture/music/TKY200703160235.html
何日間かは読めるでしょう。それにしても、こういう記事までウェブに載せちゃうなんて、もう紙媒体の新聞は買わないでも結構ですよ、と自分で首を絞めてるんじゃないかいな、大川向こうの新聞屋さん。


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豊洲にSTOL国際空港を建設せよ [新佃嶋界隈]

納税作業も無事に終え、今年も「御上からの強制労働でピラミッド建築作業肉体労働に従事3日間」という感じの日々が終わりました。さあああ、これでどーどーと岸孫にも無能都知事にも文句が言えるぞ。えっへん。

ちなみに、嫁さんは今年は住基ネットになにやら登録し、e-Taxとかいうネットで確定申告を提出する方法を採りました。結果、旧来通りに京橋税務署に持ってった小生の方が、最後の入力作業は楽だったようで、すっかりプンプンです。なんなんだ。ともかくソフトが重く、やたらと反応が遅く、入力するだけで数時間かかってしまったそうです。へえ。

さても、明日の朝には入ってなきゃならん原稿があるけど、頭が全然動かぬ。何をせねばならぬのかが把握できぬ。慣れぬ強制労働のお陰で、すっかりバカになってしまった。で、数日開いたこともなかった紙の新聞などボーッと眺めていると、おおお、デハビラント・カナダの新型機が足が出ないのかぁ、知らんかった。でも、わしらが1月に30メートルの強風の中にスキポール空港に着陸した際の機長の腕の方がもっと誉められてしかるべきだったぞ。それに、高知空港への緊急着陸なら、ホントに危ないと判断されたなら、完成したけど運用開始前の関空第2滑走路というスペースシャトルだって降りられる滅茶苦茶安全な場所があるんだし。

もとい。どーやら、なにやら今度の都知事選、我らが田舎町佃や晴海島の両隣、築地と豊洲が急に話題になってきてるよーですなぁ。オリンピック誘致はモロに晴海の問題だし。新佃嶋界隈、一気に注目スポットだぞ。ま、小生の知る限り、政治家さんやらなにやら思惑のある方以外には、隣の人工島でオリンピックなんぞやると正気で思ってる佃界隈地べた人はおりません。嘘だと思うなら、西仲通り商店街のオバチャンやにーさんと話して歩いてごらんよ。イシハラ記念オリンピック、まるっきり世界都市博の二の舞でんがな。ともかく、昔から我らが東京湾岸地区は、政治家の玩具にされる場所となってる。いやはや。http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/archive/20061004

さても、正直、築地の移転そのものはどーあれ、問題は旧豊洲埠頭の汚染ですな。これはじょーだんでは済まぬ。http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070305/eve_____sya_____000.shtml
まあ、だーれも住んでないところですし、仮面ライダーや怪傑ズバットが数々の戦いを繰り広げた古戦場という意外はなーんの名所旧跡もない空き地。ほれ、これが晴海大橋開通日に眺めた豊洲の原っぱ。奥がお台場で、更に奥に羽田空港があります。

流通の基本がトラックになって、汐留操車場も今はなし、マッカーサー道路(環状2号線のこと)をホントに豊海に向けて橋を架けるなら船での搬入も問題になる。3つ隣りの島に移せ、というのはおかしな話しじゃあないですな。
ただ、「銀座に近すぎる」というのは理屈になってません。それを言うなら、マンハッタンの南東はずれ、ブルックリンブリッジの南側、ウォールストリートから歩いて直ぐのフィッシャーマンワーフ(ハリウッド版ゴジラが上陸したところ)はどーなるのよ。

さて、ここで、佃住民で年間にまるまる3日半ほどは地上に滞在せぬ「うわの空」状態になるやくぺん先生が、ひとつ真面目に提案します。

晴海大橋から南西に延びた豊洲埠頭の先っぽ、それこそ正に築地から魚河岸が移転してくると言われてる超高度汚染土壌に、STOL機専用空港を造りましょう。地図を見る限り、晴海大橋から埠頭はずれまでは1400メートルくらいはあるから、豊洲大橋は建築を止め、少しお台場側に埋め立てし、1500メートルくらいの滑走路と誘導施設を都営で造る。24時間運営にして、対岸の晴海で暇してる入管の人が兼務することにしてイミグレーション施設も置く。で、ビジネスジェットを積極的に受け入れる。高い空港使用料を取っても、成田も羽田もろくに使えなくて困ってる香港やら上海、北京のエクゼがガンガン自分のビジネスジェットで入ってくるようになる。大好きな有楽町ビックカメラでお買い物をするために、マイケル・ジャクソンが自家用ジェットでカリフォルニアからやってくるぞっつ。なんせ、空港から銀座まで晴海通りが混んでなければ車で5分。チャリでも15分です!←ビジネスジェット降りてチャリに跨るエクゼはいないだろうけど。
あとは、東京駅と新幹線システムで直結しておらず、JRを用いると東京駅から4時間以上かかり空港があっても閑古鳥しか就航していない国内主要都市に、1時間に1本ペースでシャトル定期便を出す。花巻、松本、福井、但馬、米子、佐賀、それに丘珠くらいを、BAe146なんぞでカバーする(この飛行機、大好きだったのに、最近どんどん退役してるなぁ)。豊洲←→丘珠線は、全席ビジネスクラス仕様にして片道4万円付けても商売になるでしょ。それならいっそ、ソウル(金浦)便まで出そう。うん。やくぺん先生は利用します!佃厄偏庵を2時過ぎに出て、チャリで空港まで行けば、7時からの世宗文化会館での演奏会、悠々間に合う!
よーするに、テームズ河畔のロンドン・シティ・エアポートの大江戸版です。ほれ、これが昨年のシティ・エアポート。BAe146が降りてくる。Q400より速いぞ!ちなみにホンダの新ビジネスジェットもこの空港で欧州お披露目をして、なぜかジェイソン・バトンが手を振ったそうな。

こんなところに空港造って、それもジェット機24時間飛ばして、騒音はどうするんだ、と仰る真面目な市民のあなた、ここは東京なんです。世界の大都市なんです。煩くて当たり前です。それが嫌なら住んじゃダメ。世界の主要都市で、上空がこんなに静かなのは東京くらいでしょ。都会は煩い、そりゃ都会に住む当然のデメリット。清澄通りの煩さは誰も文句言わないんですからね。

妄想、と一蹴されるでしょうけど、何を隠そう、かつて豊洲の向こう東雲に、セスナなんぞが降りる滑走路があったんですよ。国土地理院ウェブで公開されてる昭和49年の航空写真、ほれ。

左手上隅が豊洲。貯木場を挟み東雲です。画面右真ん中上から左下に対角線を描く道が、今の湾岸線やりんかい線になります。未舗装の滑走路は真ん中右上。ほぼ羽田のA滑走路と似た18番36番に近い姿で入ってますね。現在では、首都高湾岸線が晴海に向け直角に曲がってくるインターを造ってる辺りです。これで900メートルくらいあったそうな。新潟地震の報道などで活躍したとのこと。
http://w3land.mlit.go.jp/cgi-bin/WebGIS2/WC_AirPhoto.cgi?IT=p&DT=n&PFN=CKT-74-15&PCN=C33B&IDX=9
なによりも、そもそも豊洲は皇紀2,600年記念万博&オリンピックのために東京国際空港が造られるはずの場所だったんですからね。

さああ、イシハラさん、どーです、オリンピックなんぞよりも、横田民営化よりも、余程貴男の山っ気をくすぐる話しではないかね!あ、都知事は逗子にお住まいの神奈川県民で、新宿にも週に2日程度しか出勤なさらないというから、豊洲はちょっと遠すぎるかな。


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税務作業中につき禁連絡! [売文稼業]

3月12日昼前からやっと税務作業に着手。現在14日午前0時30分過ぎ、佃オフィスに嫁さんと隠って、領収書の山の中に埋もれております。電話、出ません。FAX、見ません。宅急便来ても、まともに相手にしません。ここは異空間です。

なんとか14日深夜には終わるだろうなぁ。で、現状で見えてきた、やくぺん先生今年の財務状況の傾向を、恥も外聞もなく世間にお伝えしようぞ。フリーの売文業者とは、こんなもんじゃ。

①歳入は2005年度よりちょっと良いくらいか。カサド資料調査、ゴールドベルク資料調査&取材など、ある程度まとまったものがあったのだが、意外にそれらは使った時間に比して歳入全体の中での比重は小さい。どーゆー意味なのかっ?うううん。

②経費支出で多いのは、やっぱり圧倒的に旅費交通費ですね。もう殆どこれで入ったものがなくなりそうだ。昨年は、訳の判らない通貨がいくつかあるなぁ。幸いにもウズベクの宿はスムじゃなくて米ドルで落ちてるから面倒はないけど、細部がわからんぞ。それにしてもポンドの高いこと。日本経済の地盤沈下をヒシヒシと感じさせられますね。一国の経済が頂点を迎え、やがて衰退していくのを、己の財布で実感する人生になるとはなぁ。

さて、こんなことはやってられんぞ。ヒーリング効果がありそうな、お経みたいなウィリアム・ヘンリー・ハリス卿の讃美歌集でもパソコンから流しながら、淡々と入力を続けましょ。まだ夜は長い。お、嫁さんがコーヒーを入れると叫んで立ち上がったぞ。

                            ※※

只今14日午後7時過ぎ、一応、納税書類作成作業は完了しました。あとは実印ぺったん押して、綺麗に乾かすだけです。なんせ昨年から全部パソコンプリントアウトでOKになった(昨年からだかどーだか知らんが、わしゃ昨年からそれで良いと知った)ので、ある意味、データを細かく仕分けして入力さえすれば、あとはパーソナル税理士を雇ったようなもんで、まるで意味の判らぬ青色申告の計算をやってくれて、フォーマットにプリントしてくださいます。全部自分で書き込んでた頃が懐かしい…わきゃないわい!

なんであれ、一応、御上による実質まるまる3日間の強制労働から解放されました。このタイミングで「事務所の経費の領収書なし云々」という騒動をやってくれているなんて、我が田舎町佃から地下鉄で10分のところにドカンと控える某国国会は、なんとも教育的なことでございまする。臣民共よ、こういうことはしてはならぬぞよ、と、そーり自らが盟友大臣の恥を晒してまでご教授下さってるんですから。有難いこってす。嬉しいなぁ、今年もちゃんと納税できて嬉しいなぁ。でも、大声で「国を愛せ」とお説きになる方々なんかは、領収書なんぞ貯め込んでしこしこ経費を積み上げず、さぞかし太っ腹に税金払ってるんだろうなぁ。そんな人たちに比べると、国家による強制労働だ、などとふとどきなことを叫びながら徹夜で細かい税務作業をやっとるあたしなんぞ、自分の事ばかり考えて国を考えない非国民だなぁ。うううううん…


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再録「町民会館を借り切った大利根のサンタ」 [音楽業界]

まだ本作業には未着手ながら税金週間に突入、電子壁新聞などやっておれぬ。で、旧稿再録である。とはいえ、一応時事ネタがらみ。

去る土曜日、ミューザ川崎でウィハンQの演奏会がありました。いらっしゃった方も多いでしょうね。比較的期間は短い今回のこのチェコの楽人の来日、彼らなりに非常に明快なビジネスモデルに則っている。要は、「日本各地で地元演奏家とピアノ五重奏やらをすることで演奏会をつくり、ウィハンQはバックバンドに徹し、クァルテット自前の曲はそれぞれの演奏会で1曲くらい」というもの。ま、特殊職能団体として遙か極東の島国への短期出稼ぎ、ということです。

川崎の演奏会は、そんな中で、ウィハンQをメインとした唯一の演奏会でした。どうしてこんな演奏会が出来たかといえば、理由は簡単。ウィハンQを愛するホール事業課長のK氏が、彼らの実力でこんな演奏会ばかりではいかん、と義憤にかられ、自分のとこでちゃんとしたコンサートをやらせる決意をしたから。地方公共ホールで「演奏会を決める」権限を有する方が、適切な判断をした、ということです。「クァルテットは客が入らないんですけど、しょうがないでしょう」と苦笑なさってましたけど。関東圏の室内楽ファン諸氏よ、K事業部長に敬礼っ!

なお、この12月にアーロンQを川崎がやるのも、ヴィーンでこの団体を聴いて気に入ったK課長の決断に拠るとのこと。氏曰く、「うちでは某AQみたいな賞味期限切れはもうやりません!」。おお、立派な発言だっ、再び敬礼っっっつ!

さても、K氏の痛快な発言を聞いて、ひとりの社長さんのことを思い出しました。以下、㈱ぎょうせい発行の小学校管理職向け月刊専門雑誌『悠』に「エリアが奏でるハーモニー」という題で連載していたエッセイの2006年5月号原稿まんまです。雑誌リニューアルで去る3月号で廃刊になり、連載もオシマイになりました。担当編集者S氏からの承諾を得て、旧稿再録します。どうしてここで挙げるかは、お読みになればお判りの筈。ちょっと季節はずれですけどね。ではどうぞ。

                           ※※※※

             《すてきなメロディ-エリアが奏でるハーモニー-第2回》
町民会館を借り切った大利根のサンタ~埼玉県北葛飾郡栗橋町総合文化会館イリスホール/シベリウス「親愛なる声」/テンペラ弦楽四重奏団演奏会

 音楽ジャーナリストがコンクールに出向くのは、結果を知るためではない。数多くの新しい才能にまとめて出会うのが目的だ。だが、コンクールには年齢制限がある。弦楽四重奏の場合、結成から10年ほどでコンクール時代は終わる。そこからは「期待の新人」ではなく、若いプロとして生き方を模索するとき。結果として、コンクールの舞台を去り、若手から中堅に向かう頃になると、その音楽家に接する機会は激減する。
 だから、北関東は栗橋でテンペラ弦楽四重奏団の演奏会があると知り、出掛けねばと思った。90年代末にコンクールの舞台で何度か出会った北欧の娘さんたち。青春時代を終えた胸突き八丁でどう成長しているか。昨年暮れ、クリスマス前のことである。
 とはいえ、この演奏会、ちょっと妙だ。映画会、地域住民演奏会、菅原洋一、爆笑ライブと、総計12のイベントが並ぶ栗橋町文化会館平成17年度自主文化事業に、純粋なクラシックは2本。数は問うまい。不思議なのは、音楽公演ではこのテンペラQ演奏会だけが無料なこと。どこの自治体も税収不足で四苦八苦の昨今、他の公共ホール公演は有料なのに、栗橋町の太っ腹ぶりはなんなのか。
 整理券は配布当日に無くなった客席に、ホールのご厚意で潜ませていただく。栗橋は東京のベッドタウンにはちょっと遠い埼玉と茨城の県境。東武線とJR宇都宮線の連絡駅へと両線が接近する鉄路の三角地帯に、町文化会館がある。副館長も務める教育委員会生涯学習課長K氏、豪快に笑い「そりゃ無料なんて普通じゃないですよ。この演奏会、隣の大利根町にある某企業の丸抱えなんです。」
 曰く、小規模ながら自動車部品メーカーとして国際的評価の高い地元企業の代表取締役I氏が、出張先のヴィーンで偶然テンペラQを聴き一目惚れ。東京の音楽事務所が招聘し来日したもの、知名度は皆無とあって地方公演は難しい。でも自分の会社の従業員に聴かせたい。じゃあいっそ、費用は全部出し、隣町の会館に近隣住民を無料招待してしまおう。とはいえ広報や人集めは大変だ。「そこで会館の主催事業にして、私らもお手伝いすることにしたわけですな。要するに、地域密着企業メセナです。(K氏)」
 ハイテク工場の社長が、気に入った音楽を社員や周辺住民に聴かせたいと、自腹で町営ホールを借り切る。こんな地元公立文化施設の使い方、筆者は前例を知らない。

 開演前、満員の聴衆の前に登場したI社長は、意外にも、ダンディな紳士だった。ちょっとはにかみ加減で、自分が大好きな音楽家を皆さんにも聴いて欲しいと挨拶、そそくさとステージを去る。続いて喝采の中に登場した4人のフィンランド女性(もう娘じゃあなかった)が紡ぐ音楽が、祖国の大作曲家シベリウスが遺した傑作「親愛なる声」だった。
 第3楽章冒頭、ヴァイオリンの呟きにチェロが応え、密やかな対話が交わされる。正直、会場に座る人々の全員がシベリウスやフィンランドの若き才能を聴きたくて無料チケットを欲したとは思えぬ。付き合いも多かろう。でも、目を伏せそっと本音を漏らすような弦の歌い交わしは、驚くほど素直に客席に伝わった。木枯らしの北関東に流れる、親密な声。
 社長さんが皆に触れて貰いたかったのは、こんな音楽のあり方なのかしら。そうだったなら、とっても洒落た大利根のダンディ・サンタに、心からのメリークリスマス。
                                   (月刊『悠』2006年5月号初出再録)


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美術館に行こう [売文稼業]

昨日、ネイザンロード下の地下改札前にマシンが稼働する前から並び、朝6時過ぎの始発で香港中央の空港特急駅に向かい、7時ちょっと前に空港到着。でっかい荷物抱えて北米まで往く人々を押しのけてなんなくチェックインし(成田はなんなんじゃ!)、残りの現金をほぼ全部使い尽くし30ドルちょっとの小海老入り腸米(空港価格!)を朝飯にペロリと喰らい、搭乗。NW2便TOKYO経由LA行きは午前9時前にランカオ島を無事離陸。香港滞在32時間であった。アジア便は往路は長いけど復路はアッという間、満員のエコノミークラスのジャンボ、ホンの数席あるどんなに混んでいてもパソコンが開いて仕事が出来る席を確保出来たのでエコノミーで充分であります(3時間半でビジネスクラスなんか使うと、佃厄偏庵では絶対に出ない軽い赤ワインのそこそこまともな奴などしっかり飲まねば勿体ないと貧乏人根性丸出しになってしまい、仕事にならない可能性高し)。

んで、1時過ぎに雨模様の成田に到着。入国審査官が少なくやたら並ぶものの、2時の快速逗子行きに無事乗車、3時過ぎに錦糸町に着き、アルミンク社長が「ローエングリン」の練習でなにやらピリピリしたNJP事務局の片隅でラインベルガー作曲オルガン協奏曲の総譜を拝見させてもらい、原稿作業。意外に手間取り、結局、7時から新宿でのウズベク舞踏団には間に合わず、ボロボロになって大江戸線で佃まで戻ってきましたとさ。昨日から税務作業締め切りの15日までに、原稿の締め切りも3本。編集者様方は自営業者じゃないから、平気でこんな締め切り設定が出来るんだろーなー。ふうううううう。

あ、13日及び14日は税務作業に徹しますので、一切電話にも出ません。連絡しても無駄ですよ。
税金なんて税理士に任せれば良いのに、とお思いかもしれませんねぇ。でもね、うちらみたいな年収が大企業20代後半OLとどっこいどっこいの貧乏売文家業でも、自分で1年の収支をきっちり全部まとめて入力することで、やっと商売としての収支バランスが見える。これをやらないと、赤字で破産する可能性もあるのです。それに、税務作業をやることで、国家権力というものが「羊の皮を被った天下公認の暴力団」であることが嫌でも判る。毎年のみかじめ料をちゃんと収めないと、たちまちお縄なんだから。それも、全く合法的にやれる。
世の中には「サヨやプロ市民なぜそんなに権力を敵視するのか」、などとのーてんきなことを仰る右派の論客や昨今の勝ち組マスコミ報道にすっかり洗脳された人の良い方々もいらっしゃるよーですけど、あなたねぇ、ちゃんと数日を有給休暇を取って税務作業をご自分でやってご覧なさいな。国家権力が常に気を付けねばならぬ暴力組織也、って嫌でも判りますから。ふつーの日本国民とすれば、世界有数の武器抱えたアベシンゾー一家やら警視庁束ねるシンタロー組の方が、北朝鮮なんぞよりよっぽど怖いんだよ。

もとい。で、やっと本題。このところの忙しさは、「ミュージック・イン・ミュージアム」の取材がダラダラ入ってるからです。今日も午後2時から、上野の科学博物館で、我らがゴールドベルクの日本の婿、オーボエの古部賢一氏がレクチャーコンサートやります。先週から東京都美術館で都響の連中がずっとやってるし、まだ月末まであるぞ。こちらをどうぞ。http://www.tokyo-opera-nomori.com/program/eventweek.html
上野ついででは、「タンホイザー」(なんとカーセン御大の演出、タイトルロールが画家だそうです!!)の練習をやってる横の上野の森美術館ではもうすぐ若手登竜門VOCA展が始まり、21日にはそこでもミュージック・イン・ミュージアムあります。こちらをどうぞ。http://www.ueno-mori.org/tenji/voca/2007/event.html
これらを全部見物して、「上野の森三昧」という原稿にする予定だったけど、とてもじゃないが多すぎて、VOCA展は来年まわし。関係者の皆様、スイマセン。

おっと、ちょっと宣伝しておけば、フジテレビ・アートネットという月刊ウェブマガジンで小生が連載している「ミュージック・イン・ミュージアム」というコーナーがあるですよ。もう4年以上になるかなぁ、結構長い連載になってますね。前パブ記事じゃなく、今時珍しい後パブというか、レポート記事。一昔前ならば、そろそろ単行本にしましょーか、という声が上がるくらい溜まってるけど、今は絶対にそんなことは起きないし、そんなことしようと思う酔狂な単行本系編集者さんもおらん。いやはや。
ええと、行き方が難しく、まずhttp://www.fujitv.co.jp/events/art-net/index3.htmlに行く。で、画面の中央辺りを上の方からずーっとポインタで触っていってください。すると、Music In Museumという文字が浮かびます。そこをポチョ、っと押すと行けます。今は1月のシカゴ美術館の記事が挙がってます。左上の「バックナンバー」という所を押すと、過去の記事が全部読めます。無料で、登録はいりませんので、是非いらっしゃってくださいな。

さても、こんなことをしてられん。今日は2時から古部っち、で、午後6時からは川崎にまわってウィハンQのタップリした定番ディナーであります。明日は昼間に佃住吉神社例大祭に向けた2丁目&3丁目町会合同役員例祭会議があるのだが、すみだトリフォニーに行かねばならぬのでこれはパス。月曜日は「タンホイザー」のGP。そこまでにあと原稿2本。で、いよいよ税金に突入であーる。明日以降、当電子壁新聞の更新は一切無いかもしれませんっ。

最後におまけ。美術館での演奏会は、世界中でやってます。殆ど紹介されないので、皆さんがご存じないだけです。美術館のホームページなどで「イベント」というコーナーがあったら、押してご覧なさい。意外な音楽家が貴方の街のミュージアムで無料演奏会なんぞをしてることがありますよ。香港だってやってるぞ。ヴィクトリア湾を望む九龍側、文化中心の隣の香港芸術館。ほれ。

モーツァルトinHongKongでありました。お近くの方は文化中心の飲茶の後に名画に包まれ名曲をどうぞ。ご案内はこちらから。http://www.lcsd.gov.hk/CE/Museum/Arts/english/intro/eintro.html


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サヨナラはブラームスのあとに [弦楽四重奏]

またサヨナラです。

先程、もう公式にオープンになったので喋っても良い、との本人からお許しを頂きました。で、おおっぴらに言います。

アルテミス弦楽四重奏団を10数年に亘り内声で支えてきたヴィオラ奏者、ヴォルカー・ヤコブセン氏が、近く同団を退団します。理由は、子供が大きくなってきて、人生に一度しかないこの時期を父親として出来るだけ一緒に過ごしたい。だから、今のアルテミスQのような世界中を飛び回る生活は残念ながら続けられない、というものです。

この話、ヨーロッパではアルテミスQと同じマネージャーの某北米クァルテットの連中からつい先頃聞きおよび(ソースがバレバレじゃあ!)、その瞬間に、今回のアルテミスQ香港芸術祭参加公演を聴きに来る決意をしたのでありました。税金でとてつもないことになってる筈の時期、どうしようかずっと迷ってたんですけど。

昨晩の演奏会の様子や感想は、商売の作文をすることになってますので、書けません。でも、それとヤコブセン君のアルテミスQからの卒業は、まるで別。だから、こうやってお伝えする次第であります。

ああスッとした。せっかくだから、終演後にスタッフと笑いこけている写真。使い物にならないブレブレのショットでどーぞ。

ブラームスの変ロ長調クァルテット終楽章の変奏曲、ヴィオラが喜びと寂しさが錯綜する微妙な歌を唄っていく。香港市庁舎音楽堂の聴衆たちが、それをどう感じたかは知らないけれど、少なくともこの海で繋がる1800マイル向こうから押っ取り刀で駆けつけたやくぺん先生には、なんだかとっても沢山のことを語ってるように感じられましたとさ。

ミュンヘン・コンクール優勝のときに初めて聴いて仰天して以来なんのかんの10年、このメンバーで聴くのも昨晩が最後でしょう。あと数時間して亜熱帯の夜が明ければ、やくぺん先生は北は極東の島国へ、クァルテットは長いツアーが待っている遙か南半球はオーストラリアへ。

そんな生活も、あとどれだけ続くんだろうねぇ、お互い。

アルテミスQの第1期が終わろうとしています。「完成度」をとことんまで追求し、ある意味、その限界まで見えて来ちゃったところで、また新しい時代を始める。期せずして、彼らの師匠とされる人たちが去っていくのと一緒。

おおきなのっぽのヤコブセン君、お疲れ様でした。息子がクァルテットをやりたいと言い出したら、どーする?


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